それは魔法というより人間爆弾❓
平原を埋め尽くす100匹以上のメタリィラビット。その無機質な赤い瞳が、空中へ逃げた鈴を一斉に追いかけます。空中に浮いている今は、遮蔽物が何もなく、鈴は全方位からの視線を一身に浴びる「特設ステージ」に立たされている状態でした。
「鈴殿! 今です! そのまま空から魔法で一掃するのです!」
「む、無理ですぅ! 出し方がわかりません! 昨日は勝手に出ただけで、やり方なんて……!」
必死に手をバタつかせる鈴。彼女にとって魔法は「技術」ではなく「事故」に近いものでした。
「ニャ! このままだと鈴が精神的に干渉されて墜落しちゃうニャ! ヒルダ、どうすればいいニャ!?」
「鈴殿! 落ち着いて自分の能力の詳細を、頭の中で念じて表示させるのです! 魔法の発動条件が必ず書いてあるはずです!」
ヒルダの叫びに、鈴は半泣きでステータス画面を呼び出しました。そこには、新スキルの無慈悲な説明文が刻まれていました。
---
【スキル詳細:赤面爆炎】
発動条件:自身の「羞恥心」が一定値を超えた際、蓄積された魔力を熱エネルギーとして放出する。
威力補正:思い出した「黒歴史」の深さに比例して火力が上昇する。
---
「……しゅ、羞恥心……? 黒歴史……?」
「どうしましたか、鈴殿!」
「……『恥ずかしくなると発動する』って書いてあります……。そんなの、今すぐなんて無理ですぅ!」
「……いえ、鈴殿。貴女には酷ですが、やるしかありません。あの時のことを思い出すのです! ギルドで皆の前で絶叫した時のことや、服が焦げて恥ずかしい姿を見られた時のことを!」
ヒルダの鬼軍曹のような指示が飛びます。
「思い出せニャ! 鈴の恥ずかしさは、世界を救うエネルギーになるニャ!」
(……思い出す……? ギルドで、みんなの前で『見ないでぇ!』って叫んだこと……? 受付嬢さんに、真っ赤な顔の写真を撮られたこと……? 焦げたスカートで街を歩いたこと……っ!)
芋づる式に蘇る、昨日の「死にたくなるような記憶」。
脳内で再生される自分の奇行。
(あ、ああぁぁぁ……! 嫌だ、思い出させないでぇぇ!! 恥ずかしい、恥ずかしすぎて……もう、爆発しちゃいたいですよぉぉぉぉ!!)
> 【絶世の人見知り】限界突破!!
> 「自ら黒歴史を掘り返す」という自傷的羞恥心を検知。
> レベルが 2 上がりました!
> 【赤面爆炎】が空中爆撃形態へ移行します!
---
現在のステータス(滞空中)
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前 | 桜井 鈴 | 【臨界点突破】 |
| レベル| 76 / | (+2 Up) |
| MP| 5500 | |
|スキル| 【絶世の人見知り (Lv.1)】 | 【赤面爆炎】(暴走中) 今までに獲得した能力|
---
「……あ、あ、あああああああ!!(発狂)」
ドォォォォォォォンッ!!!!!
空中に浮かぶ鈴を中心に、真っ赤な衝撃波が平原全体に広がりました。
それは魔法というより、もはや「人間爆弾」。
地上で待ち構えていた100匹以上のメタリィラビットたちは、物理耐性など何の意味もなさぬ「羞恥の熱量」に包まれ、銀色の毛皮ごとドロドロに溶け出していきます。
「……あちちっ! 鈴の恥ずかしさ、昨日よりパワーアップしてるニャ!」
「……凄まじい。もはや一国の軍隊に匹敵する『恥じらい』の力……」
平原を真っ赤に焼き尽くし、ウサギたちを全滅させた鈴は、そのまま魂が抜けたような顔で、ひらひらと地上へ降りてくるのでした。
---
【今回の成長】
レベル:74 → 76
魔法制御:「黒歴史を思い出す」ことで意図的に発動できるようになった(ただし精神的ダメージは甚大)。




