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静寂を切り裂く「強者」の気配

森の奥へ、奥へと逃げ込む鈴。しかし、運命は無慈悲にも彼女を「他人の視線」へと引きずり込みます。

不意に視界が開け、川のせせらぎが聞こえる河原に出たとき、鈴の全身に激しい悪寒が走りました。


(な、なに……この、心臓が潰されそうな感じ……っ)


そこにいたのは、二人。

一人は、岩に腰掛け、身の丈ほどもある大剣を無造作に傍らに置いた紅い髪の女性。

もう一人は、魚の燻製を齧りながら、周囲を警戒するように耳を動かしている猫耳の少女。


「……あら? 誰か来たわね」


鎧の女性が顔を上げ、鈴の方を見ました。

その瞬間、鈴は文字通り「蛇に睨まれた蛙」のように硬直しました。


相手のレベルは分かりません。けれど、彼女たちが放つ空気は、先ほどのゴブリンとは比較にならないほど鋭く、重いものでした。

紅い髪の女性からは、吹き荒れる嵐のような、あるいは巨大な断崖絶壁を前にした時のような圧倒的な圧力が。

猫耳の少女からは、一瞬でも隙を見せれば喉元を食い破られそうな、研ぎ澄まされた刃のような殺気が伝わってきます。


(ひ、人……! 二人もいる……! しかも、なんだか分からないけど、ものすごく『怖い』人たちだ……っ!)


見知らぬ他人の視線。それも、自分を遥かに凌駕する圧倒的な「強者」からの注目。

鈴の心臓はドラムのように激しく打ち鳴らされ、呼吸は浅くなり、視界の端がチカチカと火花を散らします。


> 【絶世の人見知り】発動!!

> 対象:未知の強者(2名)

> 極度の緊張状態を確認。身体能力を爆発的に引き上げます。

> レベルが 1 上がりました!


> 現在のステータス

> レベル: 4 / 999

> スキル:【絶世の人見知り (Lv.1)】


レベルの上昇はわずか「1」。しかし、女神の言った通り、鈴が感じる「緊張感」と「恐怖」が強ければ強いほど、その瞬間に引き出される力は跳ね上がります。


「ちょっと、大丈夫? 顔色が真っ青……」


戦士の女性が立ち上がり、一歩、鈴の方へ近づきました。

重厚な鎧が鳴らす「ガシャリ」という音が、鈴の耳には死神の足音のように響きます。


「あ、う……あ、あ……っ!」


喉が引き攣り、まともな声になりません。

話しかけられた。注目されている。何か答えなければならない。

そのプレッシャーが臨界点を超えた瞬間、鈴の周囲の空気が、ドォォォォン!という衝撃波と共に爆ぜました。


「ニャっ!? なにこの威圧感……! 逃げるニャ、ヒルダ!」

「くっ……この子、何者なの……!?」


二人が武器を構えようとした、その刹那。

鈴の体は、自分でも制御できないほどの超スピードで後ろへと弾け飛びました。


(嫌だ、怖い、見ないでぇぇぇええええ!!)


土煙を上げ、森の木々を縫うようにして爆走する鈴。

レベル4とは思えない、地形を無視したその「逃走」の速度は、歴戦の戦士であるヒルダたちの目をもってしても、一瞬で視界から消え去るほどのものでした。


静まり返った河原。

地面には鈴が踏み込んだ時にできた深いクレーターが残り、強者二人は呆然と立ち尽くしていました。


「……消えた……。ヒルダ、今の、本当にただの人間かニャ?」

「分からないわ。あんなに震えていたのに、あの力……。この森に、とんでもない『存在』が潜んでいるようね」


鈴は、自分の唯一のスキルが「とんでもない誤解」を生んでいることなど知る由もなく、ただただ涙目で、誰もいない場所を求めて走り続けるのでした。


---


【今回の成長】


レベル:3 → 4

変化:レベル上昇は1だが、相手の「強者オーラ」に対する極限の緊張により、一時的なステータス上昇値が限界を突破。二人組には「森の怪異」として認識される。


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