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サイ×サイ×サイ! ー彼は勇者だったー  作者: 赤差棚
第一章 子どもサバイバル

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五話 戦闘!

 

 今回俺が考えた作戦は至ってシンプルだ。

 相手は岩ドリルによる遠距離攻撃が可能。

 対する俺は魔法も使えなきゃ、腕が伸びる訳でもない。せいぜい、痰を飛ばせるくらいだ。

 てことは戦うなら手の届く近距離、そこに持ち込むしかない。

 そのためにはとにかく遠距離からのドリル攻撃を避ける必要がある。


「ピュュュュュ〜〜〜〜イ」


 まずは口笛を吹いて思いきり注意を引きつける。


「おぉーーい! かかって来いよ! コウモリ野郎!」


 人語を理解しない動物相手にこの言葉は意味はない。

 俺のストレス発散が兼ねられた煽りだ。


「ギィィィィィィ!」


 俺に気づいたメタルドリルバッドは即座に俺に向かって飛び、

 遠距離から先程と同じドリルを俺に打ち込んでくる。


「神さん! 言われたとおりにやってくれ」


「おーけーおーけー。まぁ、お前が動けるかは別問題だけどな」


 俺一人でこのドリルを避け続けるのは流石に至難の技だ。

 人からのパンチを避けたり、カウンター返すのはお手の物だが、バッティングセンターの玉とは訳の違う速さが自分に向かって来るのを狙って良けれるほどの反射神経はない。


「右に三歩分避けろーー」


 そこでこの凡骨(かみ)の出番だ。

 俺には見えなくても、こいつなら見て指示を出すくらい造作もないらしい。

 馬鹿と神は使いようってことだ。

 実際、指示が来てすぐその通りに動くと自分が元いた場所に攻撃が来た。


 ドゴゴゴゴゴゴ!!!


 いくつものドリルが床に大きな窪みを作っていく。

 だが、それは俺には当たらない。

 言われた通りに動いたら掠りもしないほど余裕を持って避けられた。

 しかし。


「ひぃぃぃーー! やっぱ怖ぇぇえーー!!」


 当然、怖い。

 当たったら死ぬ状況なんて、向こうの世界ではお目にかかったことすらない。

 死んだ時のはノーカン。

 死んだ事にきづいたの死んだあとだし。


「おいおいーー、寝言言うなよ。ヤンキーだろぉ?」


「ちっげぇよ! 俺は! 売られた喧嘩買っただけの! 善良な一般人だから!!」


「だーかーらー、それを人間はヤンキーって呼ぶんじゃねぇの?」


「うるせぇって! ……っておおぉぉおおおお!! あっぶねぇーーー」


 神さんとの会話で思わず、メタルドリルバットの攻撃を避けるのが遅れる。

 こいつがいると全然避けるのに集中できん。


「アッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


 人をおもちゃみたいに笑いやがって、あの野郎。

 こっちがピンチなの見て爆笑してやがる。


「笑ってんじゃねーよ! もう喋りかけてくんじゃねーぞ!」


 そこから、当たったら即終了のドッヂボールの時間は続いた。

 攻撃が来る場所が事前にわかっていても、命を奪う攻撃を実際に避けるのには

 精神をかなりすり減らす。

 加えて、水が溜まっている棚田のような場所にヤツらの攻撃が当たると

 水が飲めなくなるため、避ける場所も限定された。

 それでもとにかく避けて避けて避け続けた。

 ヤツらのある行動を待つために。


「ハァ…ハァ…ハァ…。どうだ、そろそろだろ」


「ギィィィィィィィィィィィイ!!」


 そして、遠距離攻撃ではラチが明かないと痺れを切らした

 一体のメタルドリルバットが俺に向かって突進してきた。

 スピードも速く大きさも十分、まともに喰らったらアバラの骨が砕けるだろう。

 だが、先程のドリルに比べたら俺だけでも避けられるほど圧倒的に遅い。


「よっしゃあ! 待ってたぜ、この時を!」


 条件は整った! 相手は猛スピードで突進、

 俺の体勢も完璧、そして後ろの隙間。

 先程隠れていた隙間と同じくらいの狭さだ。

 これならいける! 


「いくぜ! 俺の唯一の得意技!!」


 そして俺は上体を逸らしてメタルドリルバットの突進を躱して、

 両腕を胴体であろう部分に回しーー


「バックドロップだぁぁぁあ!!」


 背後の隙間に向けて思いきり投げつけた。


「ギィ!? ギィィィィィィ」


 俺の全力のバックドロップでもメタルドリルバットは元気そうだ。

 向こうの世界の人間だったら、泡吹いて倒れているところだろうに。

 流石は異世界のモンスターだ。


「だけど、頭でっかちのお前じゃあ、その隙間から抜けられねぇだろ?

 悪いけど、そのままジタバタしといてくれ」


 そして、ヤツらの集団に目を向ける。

 仲間が一匹やられて、先程よりも興奮している様に見えた。

 ドリルのないヤツらなんぞ、一ミリも怖くない俺からしたら、絶好の獲物だが。


「さぁて、あと十匹ちょいってところか。コウモリ共、今更怖気付いて逃げるんじゃねーぞ」


 そこからはずっと同じ作業を繰り返した。

 避けては隙間へ投げ、躱してはバックドロップ。

 途中神さんが、


「ヤンキーじゃなくてバーサーカーの方だったか」


 とか言っているのが聞こえた。酷い言いようだ。

 俺は善良な一般人だと言うのに。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ついに残りのメタルドリルバットを至る所に埋め尽くし、何とか水と食糧を手に入れた。


「よっしゃあーー!! 生存物資かくほぉー!!」


 命懸けで手に入れた水源に顔を近づけると、そこには反射して映った自分の顔が覗いていた。


「おぉぉ!? これ、もしかして俺の顔か? 違和感すげーけど、めちゃくちゃイケメンじゃねーか!」


 黒髪でイケメンアイドルにも遜色ない程の端正な顔だった。

 整いすぎているので、自分の顔として感じれない違和感が凄いが、間違いなく自分の顔だ。

 神さんが口を噤んでいたから心配だったが、杞憂のようだ。


「チッ、調子乗りそうだったから言わなかったンだよ」


「へっへ〜僻んでやんのー」


 とりあえず一つの懸念点は晴れた。

 この顔ならハーレム人生も夢じゃない。

 それに、ホストとかあるんだったら、戦わずに食っていけるだろう。

 ホストあるのかわからんけど。

 それより水だ水。


「ゴクッ、ゴクッ。プハァーー!! やっぱ水サイコー!!!」


 一口入れるだけで、ノドから全身に潤いが広がる。

 何時間もの散策と、今の戦闘で奪われた疲労が一瞬で戻ってきたようにさえ感じた。

 公園の蛇口を捻るだけで、水を飲めた日本の有り難さを身に染みる。


「へーーーー。水ってそんな美味いのか。お前が前いた世界と同じで味覚を刺激する成分はないはずだけど」


「神さん、水飲んだことねーの?」


「まーなー。天界にある水っぽいものなんて、せいぜい魂の大海くらいだからなぁ」


 衝撃の事実。

 この世を作りたもうた神様がこの世で最も普遍的な液体を飲んだことがないとは。


「しょうがねぇなぁーー、神さんにも飲ませてやるよ」


 せっかく下界に来たことだし、神さんにも下界の素晴らしさを味あわせてあげよう。

 神さんの口元まで水を持っていき水を注いでやる。


「はい、神さんあーん」


「あーーー」


 神さんの口に注がれた水は口元に留まることなく、身体をすり抜けた。


「プッッッ、、ギャハハハハハハハハ!!! あららーー透けちゃったかぁ〜〜

 残念だったナ!! ハハハハハハハハハハハハ!!」


 ガツッッ!!!!


 殴られた。他のものには触れられないのに、俺には触れるの、、、、許せぬ。

 そして、メインディッシュのメタルドリルバットだが。


「少年、コレをどうやって食うつもりだ?」


「……ちなみに神さんは火を起こせたりーー」


「出来るけど、時間減るぞ」


「ですよねーーー」


 今後も最初のバケモンみたいなやつと遭遇する機会はあるかもしれないし、毎度毎度火を起こす為だけに使うのも勿体ない。

 こいつは極力本当にやばい戦闘の時まで温存しておきたいというのが当然の心理だ。

 となると火を起こすのは魔力も何も無い俺には無理なわけで。


「まぁ、俺半分魔族らしいし、そう簡単には死なんだろ! いただきマース!!」


 うん。口から鼻に突き抜けていく獣臭。

 舌に乗せた瞬間に軽い電撃のような衝撃を走らせる刺激的な味のオンパレード。

 酸っぱさ、苦味、土の臭いと錆びた金属のような臭いが混ぜっている。

 一言で表すなら。


「まっずぅぅぅぅぅう!!」


 不味い。不味すぎる。

 錆びた鉄柵を丸かじりしてもここまで不味くはならいないだろう。


「アハハハハハハハハハハハ!! やっぱこいつ馬鹿だ!! ハハハハハハハハ!!!」


「馬鹿ちゃうわ! 生きてくために食ってるんだっての!」


 そう、生きるための活動なのだ、これは。

 だからこそ、いかにこいつがゲボ不味いからといって感謝を忘れてはいけない。

 ありがとうメタルドリルバット。

 俺はこの味を一生忘れない。

 そして次の日、俺は腹を壊した。

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