四話 さぁ、バトル開始だ!
「リンゴ」
…パンパン
「ゴブリンナイト!」
パンパンっ
「東京」
…パンパン
「ウェイン連合国!」
パンパンっ
「……組手」
……パンパン
「天空不可侵領土テルミス!」
パンパンっ!
「そんなのホントにあんの!?」
「あるある。めちゃくちゃあるわ」
「めちゃくちゃもあるのかよ。……えっと、、す、スラックス」
…パンパン
「スケルトンウォリアー!」
「あのさ! しりとりでこっちの世界の言葉使ってくるの辞めてくんない!?
ホントにあるかどうかわかんないじゃんかぁ!」
「えー。でも俺、そっちの世界の言葉そこまで知らないしなぁ」
俺はあれからサバイバルの基礎、水の確保のために洞窟内を探索している。
こういう時こそ魔法を使うべきだと思うのだが、
そんな魔法を今の魔力量で使ったところで、
すぐに魔力切れを起こすのがオチらしい。
魔力なんていう汎用性の高いものでも一長一短。
いくらファンタジーの世界といえども、そんな都合のいい話はないということだ。
だからこうして地道に水源を探して歩いている訳だが。
「それにしてもめちゃくちゃ歩くのなー。ホントにこの先に水があんのか?」
「大丈夫だって。この天下無双が感じるんだから間違いない」
今知った。山勘かよ。
確かに神の山勘って響きだけはツキが有りそうだが、コイツが言うと一気に信憑性が無くなるのは何故だろう?
しかし、他に頼れるものも何も無い為、とりあえず言う通りに進む。
というかそれしかない。
「そういえば、ステータスの種族ってところが魔人間ってなってたけど、普通の人間とは違うのか?」
「あー。魔人間は基本的には人間と悪魔のハーフの事だな。特殊な方法で人間から後天的に魔人になったやつも魔人間だが、数は大分少ないし」
人と悪魔のハーフだと?
ここに来て厨二心をくすぐる設定持ってきやがって。
神さんも分かってんじゃねーか。
「能力的に人間と違うところとかは?」
「初期ステータスは人間よりも高いな。人間には覚えられない、悪魔のスキルなんかも覚えれるし」
つまりはステータス補正ってことか。
それもありがたいな。
この状況を打ち消すほどじゃないけど。
「その代わり、人間にめちゃくちゃ嫌われてるけどな! 国によっちゃあ懸賞金がかけられたりしてるし、バレた日には社会から追放されること間違いなし!」
この神今なんつった?
アハハと軽く笑いながら、とんでもない事を口にしやがった。
え、何? 俺、もしこの洞窟から出たとしても、人間に追いかけ回されるの?
人生始まったばっかなのに、この先真っ暗ってどゆこと?
鼻毛ぶち抜いたろか。
「まぁ、そこら辺はこの世界の歴史にも関係があったり、さっき言った魔人間にしか獲得できないスキルとかが関係してるんだが…」
「なんだよぉ。せっかく転生しても全然希望がないじゃん。なんならずっと洞窟にいた方がいいじゃん。この洞窟にいよーがいまいがお先真っ暗なんだし」
「まぁまぁ、大丈夫だって。見た所お前は普通の魔人間だし、バレるってことはそうねぇよ」
あまりの俺の落ち込みように流石にこのノンデリ神様も同情したのか、フォローがはいった。
「普通のってなんだ、普通のって。……それとさ、お前って言うの辞めてくんない?」
「じゃあなんだ? 運来くんって呼べば……」
「その名を次言ったら〇す」
俺がその呼び名を許すとでも?
あの世に強制送還してやる。
「へいへーい、わかったよ少年」
「まぁ…ひとまずその言い方でいいよ」
それにしても、いずれこの世界での名前も考えなきゃな。
少年呼びでも別にいいんだけど、異世界に来た! って感じがなぁ。
この世界の名前ってラノベみたく横文字だらけなんだろうか?
「おっと、前見ろよ、前」
「前?」
言われた通りに前を向くと開けた空間に出た。
そこは、つららのような形をした石がいくつも天井から生成され、前の世界なら観光名所として賑わいそうな、幻想的な鍾乳洞が出来ていた。
「おぉ、すっげぇー!これこそファンタジーだよ! FANTASY! めちゃくちゃ綺麗じゃん!」
「こんぐらいの景色なんて、修学旅行先の観光地にもあるだろー、プラシーボ効果? ってやつじゃねぇー?」
本っ当にデリカシーゼロだなこの顔面雑巾ヤロー。
折角人が感動してんのに。
「それよりも見ろよ、水だろアレ」
天井からつららのような石が垂れている場所には、綺麗な水溜まりが出来ている。
「よっしゃあ、もう喉カラッカラだぜーー!
いっただっきまァー…」
渇きに渇いた喉を潤そうと目の前の水にかぶりつこうとする。
「おーいおいおい、ちょっと待て」
肩をつつかれて思わず神さんの方を振り向く。
「あぁ? なんだよ?」
「上見ろ、上」
「はぁー?」
なんで上? と思ったが、
言われた通りに上を見た。
「うぉぉぉおぉぉおおおーー!???」
咄嗟に避けたが、俺の頭ほどの大きさをした、ドリルの先のようなものが頭の横を掠めていった。
ドリルは岩盤に大きな窪みを作っている。
「あっっぶねぇぇ!! まーーた似たような理由で死ぬとこだったわ!!」
そして、その先には頭が異様にデカいコウモリっぽいやつが十数匹いた。
一匹一匹が今の俺と同じくらいの大きさだ。
「ギィィィィィィイイイイイ」
「何コレなにこれなにこれェーーー!!!!」
コウモリがめちゃくちゃ叫びながら猛スピードで追いかけてくる。
「ほれ、こっちこっちー」
神さんが呼ぶ方を見ると、岩壁に隙間のようなものが見えた。
こんなピンチでも相変わらずのマイペースで逃げ場所を見つけたらしい。
隙間の大きさは俺がギリギリ入れるくらいだ。
「どぉりゃぁあああ」
何とかコウモリ達の岩のドリルを避けながら隙間に滑り込む。
隙間に入るとコウモリ達はこちらに向かってこようとするが、頭のデカさが災いして隙間にはこれないようだ。
「助かった〜〜」
「あれはメタルドリルバッドだな。一番最後に触れた鉱物と同じ材質のドリルを放つモンスターだ」
「ネーミングセンス安直すぎねぇ?」
あまりに取って付けたような名前に至極真っ当な感想が口から出た。
「安直になるくらい単体じゃ弱いってわけだ。だけど状況が悪い。奴らがぶら下がってる鍾乳石の硬さは鋼鉄並、お前に当たれば確実に死ぬ。群れでいるのも厄介だ」
確かにそうだ。俺が避けてドリルが当たった床は砲丸が衝突した跡みたいに抉れていた。
普通の人間にアレが当たったら身体のどこにヒットしても、即あの世行きだろう。
「まぁここは逃げ出す隙が出るまで大人しく待って、水はどこが別の場所を探すってのが定石だな」
「えーー! もう歩きたくねぇよー。神さんが追っ払ってくれりゃあいいじゃんか」
目と鼻の先に水源があるのだ。
疲労も溜まっているし、他の場所を探すのはあまり考えたくない。
「でもさー、俺手加減とか出来ないから本気出すとここら辺の水全部無くなっちゃうかもしれねーぜ?」
そういえば、前に神さんが光線を放った時は岩が若干蒸発してた。
狙いどころを絞ったとしても、天井が崩れて下敷きになったらおじゃんだ。
でもなー。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ。
正直空腹も限界だし、渇きもやばい。
出来ればここの水を飲みたい所だ。
くそぉーー。死にたくないけど、腹減って死にそうなのも嫌だ。
考えろーー考えろ俺。使えそうな物はなんだ。
岩のドリル、鍾乳石。……あぁぁぁぁダメだ、腹減って全然考えられねぇ。
「クソっクソっ!」
ドンッ! ドンッ! と壁に頭を叩きつける。
苛立ちと、空腹と、疲労感、色んなモノが混じった行動に考えなどない。
「おいおい、ついにおかしくなったか? …いや、それは元からか」
頭おかしいのはこの状況だ! とツッコミたくなるのを抑える。
くそぉ頭、、、、、、、、頭、か。
閃く、一つの作戦。これが上手くいけばもしかしたらイケるかもしれない。
「……なぁ、神様。あいつらって腕の力は強いのか?」
「岩のドリルを放つ能力に特化してるから、腕力対決ならお前でも勝てるくらいだと思うぞ」
よし、俺より弱いくらいなら勝算はある。
「……おいおい、まさか戦う気か? やめとけやめとけ、ホントに頭おかしくなったのか知らねーが、勝てる訳ねーよ、現実見ろ」
そうこれは現実だ。だからこそ、ここで戦わなきゃ生きていけない。
「勝つ、どころじゃない。あのご馳走全部平らげてやる」
「……マジか少年。もしかして、アイツら食う気か!?
冗談キツイぜ、この状況はずぇーーったいムリだし、めちゃくちゃ不味いぞあいつら!」
不味いのだろーが、臭いのだろーが上等だよ。
貧乏時代は泥水だって啜ったし、ネズミだって食ってたんだぜ、こちとら。
「神さんにも手伝ってもらうけどな、異世界最初の食べ物はアイツらに決めた!」
さぁ、バトルを始めようか!




