RP6 ホール・ショット!・・・・ って、わけにはいかない
北海道は平地でも積雪が・・・・。もう、ワンチャン、おバイクできるかと期待してたんだけど。
大型連休初日。札幌市の隣のI市。
親戚宅にお邪魔している。ゆい姉(従姉)の家だ。
ピンポーン
バーン
呼び鈴を鳴らすや否や玄関ドアが開く。
「待ってたよ~。さ、いこ!!」
笑顔がはじけるゆい姉。
「ああ、じゃ、外で待ってる」
玄関口を後にして、道路へ。
そこには、先日、店から受け取ったばかりの単車がたたずんでいる。
ホンダ NS400R。
ゆい姉のお父さん、すなわちの俺のおじさん、からのお下がりだ。NS400Rは車検(車検はとっくに切れていた)と整備のため町はずれのバイク屋に出されていたのだ。
80年代のレーサーレプリカ。赤白青のトリコロールカラーが今どきではなくて、気に入っている。
これに乗るために、頑張ってきた。
高1の夏に普通二輪の免許取得。その時に両親と約束した。乗るなら、これから約束を守れ、と。
品行方正に。そして学校の成績。
学校の成績は常に30番以内。
それらが継続出来たら、NS400に乗っていいと。(ただし、維持費は自分持ち。だからバイトもしていた。)
そして、とうとう、こいつ(NS400)が許可された。
さっそく店に受け取りに行き、ゆい姉とツーリング計画を立てた。
ゆい姉とおじさんは俺にバイクの楽しさを叩き込んだ張本人たちだ。
おじさんは頼みもしないの俺をすぐに連れ出して、バイクの後ろに乗せた。
3つ上のゆい姉も16になったとたん、普通2輪の免許をとった。そして、親子で俺を連れだし、バイクの楽しさを叩き込んできた
本当は3泊4日の日程だったが、例の件(6人で遊ぶ件)で、2泊3日に。
でも、十分だ。
「お待たせ~!」
上機嫌で玄関を飛び出してきたゆい姉。手にはいつものシルバーのフルフェイス(ヘルメット)グレーのライディングジャケットに黒いレザーパンツ。赤いライディングブーツが目を引く。グローブもレッド。タイトな格好のせいでゆい姉の体のラインにどうしても目が行く。女子大生の、二十歳の・・・いや、健康的な肢体にドキドキしてしまう。
「じゃ、バイク出してくるわ!」
そういうと、小走りにガレージへ。
「じゃあ、俺たちは、後から、車で向かうから。」
気が付くと叔父さん、浅野勇信が玄関先に出てきていた。
「はい。叔父さん、ありがとうござました。」
「いや、いや、もう俺は乗ってやれないからさ・・・。かわいがってやてくれよ」
「はい!」
ゆい姉の愛車は、これまたおじさんのお下がりの銀のWWのRG400Γ。NSの横を通り過ぎ、その前にゆっくりと引き出され、スタンドがかけられた。この希少車2台(ネットで確認したらすっげー値段で取引されてた。)でツーリング。
「じゃ、私が先導するから、ついてきてね!」
ゆい姉はヘルメットをかぶった。
頷いた俺はNSのミラーにかけてあった青いフルフェイスをかぶり、またがった。
キーをオンにし、キックペダルを引き出す。チョークを引き、思いきりキックペダルを踏みこむ。
ガッ・・・・・パ、パパパパ、パァーンンンン。
2スト(2サイクルエンジン。4サイクルエンジンとは違い、かなり甲高いし、不規則な爆発音がする。早い話が、やかましい音がする。)らしい、特徴的な排気音が響き渡る。
パパ、パララパパパ、ポ、パパパ・・・・・
「おお、快調だねぇ・・・じゃあ、私も!」
ゆい姉もキックペダルを引き出し、蹴り下げた。
カァーン、カン、パン、パパラララ
こちらも、はっきり言うとやかましい。耳障りな音をマフラーから放っている。
特徴的なΓの排気音をBGMにして、俺はクラッチを握り左足のつま先でシフトペダルを踏む。ギアが一速にに入り、軽い振動とともに、カチャっと音がする。
ゆい姉はバックミラーで俺の様子をうかがっていた。準備できたことを右手で知らせる。
パゥーン・・・パパパパアーン
RG400Γは右ウィンナーを出しながら車道へ飛び出していった。
俺も習って、同じように車道へ乗り出した。
(じゃ、まず小樽ね)
「ああ、わかった。」
インカムで会話する。今どきのツーリングはこれがデフォらしい。
さあ、とりあえず今日は、函館まで。
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(何してる?)
連休初日の朝(といっても9時過ぎだが)、メッセを送った。
いつまでたっても既読にはならなかった。
(おはよう、今、ニセコ。これから、函館に向かいます。)
返事が来たのは11時頃だ。
親戚の家に向かっ・・・・・?あれ?函館に向かう?で、ニセコ?
車で行くのよね・・・・・・わざわざニセコ回り?5号線(国道5号)周りで行くの?わざわざ遠回り?(通常、車で札幌から函館に行くには国道230号で中山峠を越えていくのが最短。また多少遠回りだが、は高速道路で苫小牧、室蘭経由で大沼までいくのが楽)
なんだろう・・・・。
たくは、何をしているんだろう・・・・。
リビングのソファーで体を横たえていた私は、むっくりと起き上がり、座りなおした。
メッセージの画面を眺めながら、言い知れぬ不安がのしかかってくる。
(ニセコで何してんの?)
たまらずメッセを送る。
(今、少し早いお昼を食べてる。コンビニ飯だけど。)
と、セコマ(セイコーマート)の駐車場らしきところで、おにぎりを持った手だけの画像が送られてきた。
・・・・・・・・。手だけ?・・・・家族で出かけているのよね・・・・。それで、コンビニ飯?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで?・・・・
タっくんのお家って・・・貧しいのかな・・・・・・。いや、そんなわけないわよね・・・・。
家族で行ったんじゃ・・・・・・ない?
(ゆい姉)
頭の隅にこびりついたその名前。
思い出さないようにしていたのに・・・・。いえ、思い浮かべないようにしていた。
ゆい姉・・・・。
きっと彼女が関わってる。
そんな気がする・・・・いえ・・・確信してる・・・・。
手しか見せないあの写真。
コンビニ飯。
状況証拠ばかりだけど・・・・。
家族旅行で、コンビニ飯のわけ・・・・・ないじゃない!!
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春とはいえ、ニセコのあたりはかなり寒い。
それでも、初のロングツーリングによる高揚感のせいか、寒さなど全く感じない。シルバーのΓのテールを追いかける。次々コーナーが迫るワインディングロードをひらりひらりとクリアーしていく。この時の爽快感は筆舌に尽くしがたい。
右手はアクセルとフロントブレーキを、左手をクラッチ、右足はリアブレーキ、左足はシフトぺダル。4本の手足をまるで別の生き物のように、そして、互いに連携させながら、NS400Rを制御して路上を滑らせていくのだ。そう、路面を2本のタイヤで舐めるように走らせるのだ。
興奮している俺は、連休初日で、もう「彼女」に疑念を抱かせているとは露ほども思っていなかった。ただ、ただ、ガンマのシートにのせられた右に左に揺れるゆい姉の尻をにらみつけていた。
少しでも「彼女」、まなのことを振り返るべきだったのだ。できてると思っていた。
ホールショット(レースでスタート直後の第一コーナーを先頭で入ること)を決めた、と・・・・思いこんでいた。
路上を疾駆していたその時、「まな」のことをあれこれ思いやる余裕はなかった。
RG400Γほしい。高いけど。RG500Γはもっと欲しい。すっげー高いけど。




