RP20 響け、2stサウンド
僕は早朝出るときは、ちっかくの橋の上まで押します。
大型バイクを押すのはかなりやだけど・・・・。
流石に早朝、排気音を響かせるんのは気が引けます。
初夏の空気が気持ち良い朝5時。
俺たち3人は一斉に起きた。
幸いなことに、ひとみも、まなもまだ寝ているようだった。
ひとまず、朝のミッション(ワンポールテントの秘匿)には成功した。
『よし!』
3人でガッツポーズを決める。
布団をたたみ、身支度を行う。すると・・・・
ガラ。
部屋のふすまが開いた。
「あ、もう起きてたの・・・・」
桑原ひとみがまなをひきつれてやって来た。
「おはよう桑原」
「おはよう、ひとみ」
「おはよう、今朝は自分らで起きれたよ」
「おはよ・・・ふーん・・・残念、いつもみたいに起こしたかったのに」
俺たちは顔を見合わせ、静かに頷き合った。
「なんか・・・あったの?タッくん?」
「いや・・・別に・・・」
俺たちの変な連帯感に、まなは首をかしげていた。
一階に下りると、おじいさんとおばあさんはもう起きて朝食を食べていた。
「あらま、おはよう・・・よく寝れたかい?」
「おかげさまで、ぐっすりでした」
「そっか、そりゃよかった。したら、なんもねえけど、朝飯食べれ。」
「はい、ありがとうございます」
茶の間におかれた大きな四角いテーブルにみんなで座る。テーブルの真ん中にはおひつ。
自分でよそうスタイルだ。
「はい、みそしる」
ひとみがお盆にお椀をのせてもってきてくれた。
「あ、ごめんありがとう」
「いいのよ、まなたくはお客さんだか。あ、あんたらは自分で持ってきて・・・・あ、もう取りに行ったのね」
いつものことなのだろう、松本と跡部は台所へと消えていた。
自家製米の朝食に舌鼓をうったあと、皆で外へと出た。
ぬけるような青空が広がる、6月の空のもと例の納屋まで歩いた。
道の両側に広がる田畑は鮮やかに黄緑色を見せている。
そう、夏なんだ。
納屋に着くと、松本と跡部は手慣れた手つきでまた閂と錠前を開ける。
俺とまなをおいて、彼らは納屋の中へ足早に入っていった。そして・・・・
しばらくすると、青いライダージャケットをまとった松本がガンマ250を押し出してきた。すぐ後ろには、赤いジャケットの跡部がNS250とともに出てきた。
2台とも納屋から少し離れたところまで押し、スタンドをかけた。
そう、今日の主役のためにスペースを開けたのだ。
ギュ、カラカラ。
納屋の奥から、地面を踏みしめながら、タイヤが転がる音がしてくる。
暗がりの中から現れたのは、昨日、完成したAR125。
シルバーのライディングジャケットを羽織った桑原に押されてAR125出てきた。まなが磨いたボディは朝日に照らされきらめきを放っていた。
「いや~、やっぱ軽いわ~、125」
とびきりの笑顔を見せる桑原。
「さて、行きますか?」
松本がそう言うと、桑原と跡部はヘルメットをかぶった。
彼らのヘルメットはジャケットとお揃いの色だ。
「ほんとうに、こなくていいのかい?」
松本がヘルメットをかぶる前に、そう聞いてきた。
「ありがと・・ARが走るの見たいけど・・・今日は先約があるから」
「うん。わかった・・・じゃ、行ってくるよ。もどったら一応連絡する。」
「ああ、気をつけて」
松本がメットをかぶると、跡部と桑原はキックペダルを踏み下ろした。
クラン・・・パラ、ラララ、ララ・・・・・パう―――ン!
2ストの独特の音が田園地帯に響き渡る。
「じゃあ、納屋閉めておくよ!」
排気音に負けないよう大声で叫ぶ。
松本は左手を軽く上げて返事をした。そして・・・・
Γ(ガンマ)のキックペダルを踏み下ろした。
カゥーン!
彼のガンマも一発始動だ。
けたたましい2スト3台の排気音も、田畑に囲まれたこの場所なら、何の気兼ねもいらない。
彼らはそれぞれ、俺たちに軽く会釈し、あぜ道の悪路を慎重に走り去って行った。
「楽しいのかな?」
彼らを見送ったまなは、ぽつりと言った。
「え、楽しいに決まってるさ。ぜったい!」
「え、だって、バイクって、一人でしょ?何台で走っても運転中は一人じゃない?それって、寂しくないのかな?」
「・・・・・・・うまく言えないけど・・・それがいいんだよ」
「ふぅーん・・・・・・」
まなは、それ以上何も言わなかった。
昼過ぎの札幌駅。いつものメンバーで待ち合わせだ。
桑原のおじいさんに家まで送ってもらい(札幌駅まで送ろうかとまで言われたが、丁寧にお断りした)一息ついたあと、家を出た。
待ち合わせ場所は、あの鍋の取手を横にしたような白いオブジェだ。
「おまたせ」
(誠)「遅いぞたく」
俺以外は、もう勢ぞろいだ。
(美香)「じゃ、行こう」
(麻美)「とりあえず、なんか食べるか!」
(まなか)「そうね、どこ行く?」
(肇)「マックいく?」
(誠)「せっかく札駅来たのに?」
と、いうわけで、地下街にある、ちょっとおしゃれなカフェに入った。チェーン店だけど。
「で、どうだった?合宿」
テーブル席にすわるやいなや、麻美は切り出してきた。興味深々なことが上ずる声の調子からうかがえた。
「どうって・・・どうだった?たく?」
「そう言われてもな・・・・・俺は・・・楽しかったけど・・・」
「そうね・・私も思ってたより、ずっと楽しかったわ」
(誠)「ふーん。で、泊まりでなにしてたんだ?」
「ああ、それはさ・・・・」
俺は、AR125を整備したことなどを話した。無論、パンチラやワンポールテントのことは一切話さなかったが。
(肇)「へぇー・・・・それは面白いかもね。文化祭でなんか作るみたいでさ」
(美香)「まあ、男子はそれ楽しいかもしれないけど・・・まなは、ほんとにgtなおしかったの?」
「うん。桑原さんって、けっこう面白い人だよ。みんなが思ってるより」
(麻美)「すっごい真面目そうだけど・・・」
「うん、真面目は真面目だけど・・・」
(誠)「まあ、楽しかったんなら、良かったよ。じゃあ、こっちも楽しもうぜ。」
(肇)「うん、せっかくだしね。食べちゃおうぜ」
テーブルにならんピザやパスタに俺たちは手を伸ばした。
住宅街で早朝ツーリングに出るときは、けっこう気をつけます。
だって、ご近所トラブル起こしたくないし・・・。




