RP15 祭りじゃないけど・・・・・
AR125ってもう、市場に出てないのかね。
RZ125も好きだけど・・・・。なんかARの方が好きだな。
『はぁ?』
入部を決めた次の日の放課後。麻生のマックで事の次第を聞いた、イツメンの4人は驚きの声をそろえた。
(麻美)「まなは、それでいーの?」
(美香)「いや、ダメだとは言えないけどさ・・・・」
(誠)「物理工学研究会だっけ?ようは、バカイダ―の集まりってことだろ?」
(肇)「楽しくは・・・ないんじゃないかな?いや、たくはいいけどさ・・・・」
彼らの反応を見るタッくんは目が泳いでる。
なんか言いなさいよ!全くもう・・・・・。
「まあ、待ってくれよ・・・俺が無理強いしたわけじゃないから・・・なあ、まな?」
「そうね、無理強いされたわけじゃない、っていえばそうかなぁ・・・」
(美香)「じゃ、まなちゃんと会える時間、へっちゃうね・・・」
(麻美)「そーだねー・・・・こうやってダラダラしてられるのも、今日くらいか・・」
「いや、大丈夫だ。活動は不定期だし、自由参加だし・・・。けっこう時間あると思うよ・・・・。」
「そうね」
そう言って、アイス珈琲をストローからすすった。
(麻美)「ふぅーん・・・」
納得してないわ、と言う顔がありありと出ている。
そりゃそうよね・・・。でも・・・・彼ら(優等生たち)とつながりを持つのは、悪いことではないわ。(絶対!)そう確信している。ここは恩を売るのが吉よ。
「心配いらないさ、だって部員は、あの3人組だぜ。」
(誠)「まあ、そうだけどな・・・」
(美香)「あの優等生たちが・・・バカイダ―・・・・。ちょっとショック・・・」
(肇)「うん・・・・品行方正、成績は常にトップ」
(麻美)「人は見かけによらないわねー。バイクって、そんなにたのしいのかねぇ~」
麻美は両手を頬に添え、両腕の肘をテーブルに着いた。
「じゃあ、麻美も入るか?楽しいよ!キッと!!」
「いや。バカイダーになりたくない。」
タッくんの勧誘は即座に断られた。
(美香)「フフフ。確かに、ゆいさんが乗ってるところ見ると、カッコイイとはおもいますけど。」
(誠)「じゃあ、自分も乗るかって、聞かれると」
(肇)「正直、車の方がいい」
(麻美)「そうそう・・・冬乗れないし」
これが令和の高校生の素直な反応だろう。
北海道で冬に使えない乗りもにお金をかけるのは「コスパ」が悪い。冬、バイクに乗るのは郵便配達員と宗谷岬で年越しする酔狂なライダーくらいだ。
あ~あ、私もドライブデートならしたいなぁ~・・。ひらひらした服着て、きれいなパンプス履いて、流行りの曲を流しながらおしゃべして・・・。軽でもトラックでもいいわ。バイクよりは・・・・。
「・・・・・ま、まあ、乗ったことない人に、魅力はわからないかもなぁ・・・ははははぁ~」
一般高校生のバイクに対する認識に、タッくん、少しへこんだみたいね。でもこれが普通の感覚だと思うわよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マックを出て、路線が違う彼らと別れた。
「まな、どうする?どっか遊んでく?」
「帰りましょう。送ってよ。」
「うん。じゃあ、行こう」
そう言ってバス停に向かうまなと俺。
入部にあまり気が進まないんだろうぁ・・・。
「ねえ」
「なに?」
「次はいつ集まるの?」
スマホをポケットから取り出し、スケジュールを確認する。
「ああ。明日だよ。」
「なにすんの?」
画面をタップしてラインを立ち上げ、グループラインを確認する。
「えっと・・・ああ、なんか力仕事だって・・・だから必ず来てほしいだって」
「ふぅーん・・・」
「なにすんだろうな?」
「あ、バス来たわ」
バスはバス停にゆっくり停まり、乗車口を開いた。
次の日の放課後、俺とまなは物理準備室へと向かった。
ドアを開けると・・・・・神輿の土台のような木組みが目に飛び込んできた。
「あ、待ってたわ。」
桑原は笑顔で迎える。
「待ってたよ」
「ああ。来てくれてありがとう」
松本と跡部も上機嫌だ。
「えっと、これは・・・」
(桑原)「あ、これね・・・・載せるのよ」
(まなか)「のせる?」
(松本)「うん。じゃないと運び出せないだろう?」
「え、なにを・・・・・」
すると、跡部が、黙って指をさした。
「ああ、あれを・・・・・って、あれをか?」
跡部が指さしたのは、例の布。そう、AR125のエンジン。
「え、力仕事ってあの鉄のたまり運ぶことなの?」
目を見開いてまなが叫ぶ。
「ああ、安心して、久慈さん。女子はこっち」
そう言って指さしたのは汚い木箱×2。大きさはリンゴ箱の半分くらいだろうか。
「・・・・桑原さん・・・これは?・・・・・・」
「キャブとか、バラしたマフラーとかボルトとか・・・・こまごましたものよ。そんなに重くないわよ。私とあなたで一つずつね。」
「で、男はエンジン神輿か・・・・」
そう言うと、松本と跡部は頷いた。
「これどこまで持ってくの・・・・」
不安げにまなが尋ねた。
「私んち・・・・・」
『は?』
「て、言いたいところだけど、今日、じいちゃんが運んでくれるのよ。軽トラで」
「ああ、じゃあ、下まで下ろせばいいのか」
「そういうこと。じゃあ、さっそく準備しましょう」
「待ってくれ、こんなもん(エンジン神輿)を担いで歩いたら、まずくないのか?」
「大丈夫よ・・・・いちおう、布で包んで、ダンボールかぶせるから」
「いや、でも、おかしいだろう、なぞのおみこし担いで歩くの。顧問に見つかったら・・・・」
まなも大きく頷き、同意している。
「先生には、工学実験の機材を運び出すって言ってあるから大丈夫。あんた、案外心配性ね、そんなんで良くバイク乗りしてるわねぇ~。」
うぐ・・・・。でも慎重さは大事だろう。ライダーには。
(松本)「さ、早く載せよう。おじいさんが来てしまう。」
(跡部)「そう。待たせちゃ悪いからね」
2人に促されるまま、俺はエンジンへと歩みよった。
H字の木枠に、布で包んだエンジンをロープで固定。その上にどこから持ってきた大きめのダンボールをかぶせる。エンジンと言っても単気筒なので、3人がかりでやれば、さほど苦労はしなかった。
「じゃあ、松本とたくみが前で頼む。僕が後ろを持つ」
松本の仕切りで配置についた。
「じゃあ、いくよ、セーノーで、」
掛け声とともに持ち上げる。以外に軽い。
「たくみくん、軽いと思うだろ、でも、階段は気をつけてくれ。」
「え?」
「気をつけないと、落っことすよ」
跡部が助言をくれた。でも、これくらいなら・・・・。
「たくみ、しっかり!」
「足元注意して!」
「おう!」
跡部の助言の意味がわかった。下りの階段のことなのだ。
平地ではたいしたことなくても、下り坂では荷重が前二人にのしかかる。
「絶対おとさないでよ。せっかくくみ上げたんだから。絶対よ!」
後ろをついてくる桑原が檄をとばす。
「すいませーん!通りまーす!!」「ありがとうございます!!」「跡部、傾けるなよ!」
「まつもと、ちゃんと支えてくれ!」「あ、ぶつけないように!」「ねえ、桑葉さん、この箱くさいよ・・・」「仕方ないでしょ、オイルといろいろかかちゃったから・・・」
物理準備室が2階だったことが幸いだった。苦労したが一階にはすぐについた。
廊下ですれ違う人たち。遠巻きに眺めているやつら。彼らは、俺たちを見て、ひそひそと何か話している。
まあ、そうだろう、2年生の優等生たちがおかしな神輿もどきを担いでいるのだ。目立つに決まってる。
周囲の視線を感じつつも、何とか昇降口から持ち出し、校門前へとやってきた。
「ふう、ごくろーさま!もうすぐじいちゃんが来ると・・・・・あ、きたわ!」
桑原は車道の彼方に見える白い軽トラに向かって手を振った。
次第に近づいてくる白い軽トラ。
ピ、ッピー。
かわいらしいクラクションを鳴らし、その軽トラは俺たちの目の前に停まった。
軽トラは見るからに年季が入ってる。あちこちに傷がついており、錆も浮いていた。
バタン。運転席から下りてきたのは、以外に若々しいおじいさんだ。
真っ白な髪と顔に刻まれた皺が年齢を感じさせるが、体系はがっしりしていて、スポーツマンのようだ。
「おう、ひとみ、おまたせ。じゃあ、さっさと載せちまおうぜ。」
「うん、おじいちゃん!さ、載せちゃいましょう!!」
エンジン神輿と、オイルくさい木箱2つを軽トラの荷台にのせる。載せ終わると、桑原のじいちゃんは慣れた手つきでバンドとロープを操り、エンジン神輿を荷台に固定した。
「よし、オッケー・・・で、こいつは快調になったか?」
「ええ。思ったより時間かかったけど」
「ま、しゃーあんめー。部品も手に入りずらいしな。でもよーやった。帰ったら、フレームに載せといてやる。」
「ありがと、じーちゃん。」
「ああ。でも、その先はおめーたちがやれよ。」
「わかってるって」
「ああ、聡と宗一、お前らも、手入れしねーと、だめだで?」
『はい』
「したら、行くからな。じゃな」
そう言うと、おじいさんは軽トラに乗り込み,去っていった。
俺たちは軽トラが見えなくなるまで見送った。
「なんか・・・すごいな、桑原のじいちゃん」
「そう?そうかもね。聞いての通り、私たちのバイクは全部じいちゃんの家に置いてあるの。じいちゃん、当別で農家しててね。空の納屋に3台とも入れてるのよ。」
「へー・・・・すごい。」
「ま、すぐに行くことになるわ。すぐにね。」
「え、なんで?」
ふに落ちないまなか。
「まな、聞いてただろう?「その先はおめーたちがやれよ」って」
「・・・・・どーゆーこと?」
「完成させるのは、俺たちっとことだ」
「は?」
「じいちゃんはフレーム、骨組みにエンジンつけるだけ、それ以外のことゼーンブ、俺たちでやって、完成車にするんだよ・・・」
「・・・・・ようは、桑原さんのバイクが完成するのはまだまださてこと?」
俺たちバカイダ―4人は力強く頷いた。
まあ、80sバイクはもうコレクション品かもね。
よく考えたら、40年前だもんね。




