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RP12 Nicknameは一流の証?

押しがけスタート時代の、ロン・ハスラムの「ロケット・ロン」ってあだ名が好きでした。

ゆい姉の家に着くと、玄関前の路上に、おじさんのバイクが停められていた

白いタンクに水色のストライプが目を引く。

そう、あの伝説のバイクだ。

ゆい姉はそのバイクの後ろに静かにΓ(ガンマ)を停めた。

Γ(ガンマ)から跳び下りると、目の前に停めてあるそのバイク、RZに駆け寄った。

「これが、伝説の750キラーか・・・」

思わず声にだした。

RZ350。NS400RやRG400Γより先に現れた2ストのピュアスポーツ。軽い車体にパンチのある2スト350㏄のパワーユニット。峠では750をくっちまうバイク。元祖750キラー。

「乗ってみたいだろ?」

気がつくと叔父さんが背後に来ていた。

「ええ。ぜひ!」

俺の答えを聞くと、おじさんはにんまりした。

「吸排気系きれいにもらったから、かなりフケがいいぞ。しかも、チャンバー(2ストバイクの排気系部品。でも、チャンバー変えるってことは、マフラーも交換するので、まあ、マフラーだと思ってください。)変えたしな。」

『おおおー!』

俺とゆい姉は、真新しいRZのチャンバー(マフラー)をみて感嘆の声をあげた。

「乗るだろ?」

「いいですか?」

「もちろん」

俺はすぐにバイクにまたがった。キックペダルを引き出し、キーをオンにする。チョークをひいて、ペダルを踏む。

クワァアアアアアン、モゴゴゴゴゴゴ。

2ストパラツイン(並列2気筒)の排気音が心地いい。

「気をつけて乗れよ!オシャカにされたくないからなぁ~!」

「はい、その辺流してきます!!」

クラッチを握り、一速へ。

カツンと軽く手ごたえがする。

アクセルを軽く開けながら、半クラへ。

クウォォォーン

RZは少しこもった声を出しながら路面をけり出した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おはよう、タッくん」

いつも場所で、待ち合わせる私たち。この時間は、バカイダ―に変身していない。いつもの巧だ。

「ああ、おはよう、まな。昨日は悪かったなぁ・・・・今日、なんか奢るよ。」

本当にすまなそうにするタっくん。

「ほんとう?じゃあ、そーねー・・・・・ミスドで許してあげる!」

「うん、わかった」

安堵と感謝の気持ち見て取れる笑顔を巧は見せた。





「へぇ~。麻美が・・・」

「うん。麻美さ、肇にね・・・」

「そっか・・・じゃあ、それとなく俺も声かけてみるよ」

いつものようにいろいろ話をしているうちに、教室の前まで来ていた。

ガラ。

巧がドアを開けると、いつも通り・・・・・・ってわけではなかった。

男子も女子も一斉に私たちを見ると、我先にと駆け寄ってきた。

「ね、ね、あのバイク女子誰?」「なあ、巧、お前の浮気相手?」「なに?二股?」

「ねえ、まなに悪いと思わないの?」「まな、ショックじゃないの?」「なあ、あの人紹介して!」「たくみ、あの人、お前のなんなの?」

皆一斉に私たちに質問を投げかけてきた。

「あ、ちょっと、待って・・・その、あの人はね~・・・」

私の声は彼らの声にかき消されていく。

クラスメートの面々は「興味本位」「好奇」「羨望」「嫉妬」そういった表情を浮かべていた。

「あのなあ!」

巧の一喝に皆口を閉じた。

「君たち、好き放題言ってくれてますが・・・・・・・昨日の人はタダの親戚、従姉のお姉さん!!」

『・・・・・・・・・』

クラスメートは互いに顔を見合っている。なにか言いたげに。

「じゃあ・・・あのバイク女子とは・・・何も・・・ない・・・・ってこと?」

女子の一人が皆を代弁する。

「そうだよ・・・へんに勘ぐるのはやめてくれよ・・・・」

なんだ、なんだ親戚だってよ・・・じゃあ、紹介してほしいなぁ・・・・まあ、よかったんじゃない・・・そうね・・・二股ゲス野郎かと思ったわ・・・。

彼らは口々に何か残念そうな言葉をはきながら散っていった。

「お疲れ」

「ま、これも身から出た錆ってことで」

誠と肇、麻美と美香を連れて傍らにやってきた。

「そうね。」

「なんたって、巧くんは」

『バカイダ―だから』


あ、それ言っちゃうんだ・・・・・。


「何言ってんだ?おま・・・」

「まったくだ」

『え?』

気がつくと、私たちの後ろに妙齢の女教師が立っていた。担任の後藤ゆかり先生だ。

「HRの時間だと思ってきてみれば・・・どういうことかな?」

「あ、えっと・・・・その・・・」

タッくん口ごもる。従姉が迎えに来た、ってだけならいいけど・・・・あのやかましいバイクだもんね。シルバーで殊更目立つし。言い訳はめんどくさいよね・・・。二股疑惑もあるし・・・・。

「まあ、いい。早く席につけ。ショートHRだ。」

『はい・・・・』

私たちはすごすごと自分の席へともどった。

SHRはつつがなく終った。が、ゆかり先生が教室を出ようとドアに手をかけたときだった。先生は振り返っていった。

「ああ、そうだ。浅野巧、放課後、職員室に来てくれ。いいな。」

捨て台詞のように言い、先生は去っていった。

ちらっと、たくの方をみると・・・・。


タッくんの顔はひきつっていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ああ、そうだ。浅野巧、放課後、職員室に来てくれ。いいな。」

先生は思い出したように言ったが・・・・・絶対違う。

ああ、間違いない。昨日の件だ。そりゃそうか。

校門の目の前で、けたたましいいバイクの後ろに乗って帰れば。

しかも、派手な身なりの女ライダーの後ろに。

いろいろ聞きたいに決まってる。

鬱々として職員室に向かう。

「失礼します」

ドアをノックし、職員室に入る。

ガヤガヤとした中だが、先生方がチラチラと伺っているのがわかる。

「お、来たかぁ~。」

俺を見つけた先生は自分のデスクからつかつかとこちらにやってきた。

「ここじゃなんだから、河岸を変えよう。」

そう言うと、俺についてくるよう、促した。

とぼとぼと先生の後をついていく。

「ここなら話しやすかろう。」

着いた先は・・・・美術準備室。

ゆかり先生は美術教師なので不思議はないが・・・生徒指導室ではなかったのが意外だった。

準備室にはデッサン用の彫像やイーゼル、油彩の道具などが雑然と置かれていた。部屋の奥、窓に平行に置かれた対のソファーと、テーブルが置かれおりそれなりの応接席があった。

「まあ、座れ。今飲み物を出そう」

先生は、へはやの隅にあるワンドアの小さな冷蔵庫を開けに行った。

言われるがままに、ソファーに座ると、窓を背にしてソファーに座った。

「ほれ!」

缶コーヒーを放ってよこされ、あわてて両手でキャッチした。

「さ、遠慮なくのみなさい。」

そう言いながら、テーブルを挟んで俺の正面に座る先生。同じ缶コーヒーのプルタブを開けた。俺もそれにならった。

「さて、浅野」

一口飲むと先生は切り出した。

「わかってると思うが、昨日の件だ。派手な音とスタイルのバイク、そして、煽情的な身なりのライダー。そして、君が・・・・・・そのバイクに乗って帰った・・・・・。説明を求めたい。」

「え~・・・・・その・・・。彼女は僕の従姉で、たまたま迎えに来ただけです。バイクも彼女のバイクです。」

「うん。なるほど。でも、わざわざ校門前じゃなくてもいいのでは?昭和の暴走族じゃあるまいし。スマホで待ちあわせ場所を知らせるとか、目につかずに迎えに来てもらえる手立てはあったろう?」

なるほど。確かにそうだ。学校から少し離れた場所で待ち合わすことなんて、今の時代簡単だ。

「たしかに、そうですね。ゆい姉、いや従姉のことなんですが、どうしてそうしなったか、確かめておきます。そして、こういうことが無いよう言っておきます。」

ふっ

先生は自嘲気味に笑みを浮かべる。

「まあ、100点の答えだな。優等生の君らしい・・・・・それだけに、今回の件は職員室でも耳目を集めていてね。君が、変わってしまった、とね。」

「いえ、そんなことは・・・・・」

正直、あります。でも言わない方が、得策だ。缶コーヒーをグイっと飲む。

「うん。まあ、いい。私が気になるのは、君の従姉の行動だ。わざわざ、校門前で待つことにした彼女の気持ちだ」

「え・・・・」

先生からの予想外の言葉に面食らう。

「これは・・・明らかに当てつけだ。君にじゃない・・・・・。わかるだろう?」

「・・・・・・」

「君は、まだ若い。いや幼い図体は育ったが、女子の、いや女の気持ちはわかるまい。」

「・・・・・・・・・」

「いいか?同い年だからって、相手も同じくらい・・・・と思ってると、痛い目を見るぞ。」

「え・・・・」

「女は怖いぞ、男の倍、いや何倍も大人だ。彼女のYesが文字通りのYesと思ったら大大間違いだ。Noも同じだぞ。よくよく言動に気をつけるんだ。いいね。」

「はい・・・・」


「君が、彼女と彼女の狭間で苦労しないことを願っている。」

「ありがとう・・・ございます・・・」

「君たちが、心の底から卒業を喜ぶ姿を私は楽しみにしている。いいね?」

「まだ、2年生ですが・・・」

「はぁ?あっという間だよ。高校なんて。」

「そう・・・ですか・・・」

「ま、それは後から振り返った者の感傷かもしれないがな。」

「わかりました。彼女を・・・大切にします。」

そう言って、残りのコーヒーをあおった。

「そうしてくれ。ああ・・・避妊だけは忘れずにな。」

「ゴフッ」

思わずコーヒーをふき出しそうになる。

「ゴホゴホ・・・・やめてください・・・そういうの・・・・」

「悪かった。年増のたわごとだったな。じゃ、行っていいぞ」

「・・・・はい・・・・」

ソファーから立ち上がり一礼し、美術準備室の出口へ向かった。ドアに手を伸ばし換えた時だ。

「ああ、そうだ。バカイダ―、って、君のことか?浅野」

伸ばした手をピタッと止め、振り返った。

ソファの背もたれ越しにこちらに振り向き笑みをたたえている先生が目にはいる。

「ええと・・・よくわからないんですが・・・・たぶん」

「ほーぉ・・・・なんか、似合ってるぞ、そのあだ名」

「そうですか?よくわからないですが・・・・」

「そうか・・・・・誰が考えたんだろうなぁ?」

「いや、ちょっと・・・」

「ふっ。そうか・・・・精進したまえ、あ、さ、の」

先生は鼻でわらい、目を細めた。

「はい・・・・失礼しました」

静かにドアをひき、美術室準備室を後にした。

廊下に出ると、準備室のドアの横壁に、もたれかかって、まながいた。

「待っててくれたのか・・・・」

「うん・・・・」

何か神妙な顔をしているまな。

「帰るか・・・」

「そうね・・・・・」

俺たちは並んで廊下を歩み始めた。

「あ、タッくん」

「なに?」

「あのね・・・あ、いいや、なんでもない」

「え、なに?」

「なんでもない!・・・もう、バカ・・・」

「え?」

「もう、バカ―!」

「え、なに怒ってんの?」

「怒ってない!」

「いや怒ってるだろ?」

「怒ってない!もう、精進しろー!!」

「あ、おまえ、盗み聞きしてたな!」

「してないよーだ!」

そう言うと、置いていくように早歩きで廊下を進みだした。

俺は慌てて後をおいかけた。


今はマシンが4ストのMOTOGPになってんだったね。ホンダの楕円ピストン復活しないかな・・・・。

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