RP10 Pit In
投稿に間があくので、長文になりました。
大型連休は終わった。重い足を引きずるようにして、玄関を出る。
昨日、俺は、ゆい姉とまなから逃げ出した。しかも、ゆい姉の申し出を受ける形で。まなはきっと怒ってるだろう。今日も一人で登校か・・・・・。
でも・・・・・あのΓ(ガンマ)は最高だった。なるほど・・・ボアアップ(排気量が拡大されてること。当然パワーが出る)されてるだけはある。パンチ力が全然ちがった・・・・。楽しすぎて、思わず夕張まで行ってしまった。おかげでゆい姉の家に着いたのが7時近かったが・・・・・。
しっかし、なんか・・・・ゆい姉、変だったな・・・・妙に機嫌がいいっていうか・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遊園地から、逃げるようにいなくなった、たくみ。いや逃げたんだ。・・・・まったく・・・・。
腹立ちを通り越して、あきれてしまった。
汽車(北海道民は、電車であっても汽車と言う)は岩見沢を後にし、快調に札幌へと車輪を動かしている。通路を挟んだボックス席に2人と4人の二手に分かれた。当然ながら・・・私とゆい姉が2人の方だ・・・・。
行きと違い、皆、口数が少ない。それは、彼女、浅野ゆいという存在のせいだろう。私の向かいで、けだるそうに車窓を眺めている彼女。ゆいさん。
どうして、私たちと一緒に帰ってるのだろう・・・・・。
「どうしてって、顔ね?」
「え・・・」
ゆい姉は、流れる車窓を見つめたまま、そう、口に出した。
見透かされた・・・。そんなに顔にでてたかしら・・・・。
「別に深い意味なんてないの。だからそんな警戒しないで。単純に、あなた方と仲良くしたいだけよ。」
独り言のように、窓に向かって話すゆい姉。
「・・・・じゃあ、タっくんを帰らせたのは?」
「たくちゃんがいたら・・・冷静でいられる?」
そう言い終わると、こちらに顔を向けた。
「そうですね・・・・」
思わずうつ向く。
「私はね・・・・・・・たくの友だちと、仲良くしておきたいの・・・・」
そういって、ゆいさんは通路を挟んだボックス席の4人をちらっと見た。
「そう・・・ですか・・・・」
通路の向こうの4人は、静かにスマホをいじっている。が、こちらに興味津々なのはわかる。耳を澄ませて私たちをうかがっている。
「たくちゃんはさ、あたしのために、免許取って、勉強とバイト、がんばってくれたんだ。一緒にバイク乗るために・・・・・・。」
「・・・・・・・・・」
「そしたらさ・・・期待しちゃうじゃん。やっぱさぁ・・・・。」
「・・・・・・・・・」
「だから・・・・彼女って聞いたとき、心底驚いた。ま、それって、今朝なんだけど・・・・・・なんか・・・ひどくない?一緒に2泊3日のツーリングしてたんだよ。言う機会はいつでもあったじゃん!」
それは・・・・・・・・・・。
『ひどい!』
それは、通路向こうで並んで座る、女子2人からの非難の声。
「あ、いや、でもね・・・ゆいさんは、その、ただの従妹だし・・・いちいち、彼女できたよ、って報告しなくても、いいんじゃ・・・・」
「じゃあ、さ、黙って女子と2泊3日の旅行に行った彼氏、いいと思ってるの?まなは?」
口を尖らせて麻美は言った。
「い、いや、それは・・・腹立つけど・・・・でも、親戚だし・・・従姉だし・・・」
「それ、違うわよ。まなちゃん。」
美香も参戦してくる。
「従姉でも、親戚でも、女ってことに変わらないでしょ?巧は、どちらにも黙って会ってたのよ。二股ゲス野郎って思われても、しょうがないのよ。」
「ちょ、タっくんは・・・・、私の彼氏は、ゲス野郎じゃないわよ。」
「そーよ!わかってる!ただ・・・・・無意識にやってるから、たちが悪いのよ!!わかる?まな!!」
うっ・・・。ド正論だ。麻美、鋭い・・・・。
「えっと、麻美ちゃんだっけ?その通りなの。裏切られた私の気持ちわかる?」
「わかります!不誠実ですよね。そんな期待を持たせておいて!」
「そーそー、あいつ、無意識に二股かけてたのよ。」
『ゲス野郎ですね!』
息ぴったりな麻美と美香。
なんで、あんたら、ゆい姉と意気投合してるのよ・・・。私の友だちじゃないの・・・・
「あー・・・巧のいないところで、こういうのは・・・よくな」
『誠は黙ってて!』
麻美と美香に一喝されると、誠は見る間に萎れてしまった。
誠くん・・・・たくのフォローをしようとしてくれたのね・・・それが友だちよね。でも、ゆい姉に鼻の下伸ばしていた人が言っても一蹴されるだけよ・・・・・。
「まなちゃんだって、裏切られたって、思ったでしょ?」
美香がいつになく真剣な眼差しで、私に同意を求めてきた。
その強い不満は、たくではなく、誠に見せたいんだろうなぁ・・・・
「まあ、そうだけど・・・・・・・」
美香の気持ちを考えると、そういわざるを得ない。ま、確かにムカつくし・・・。
「ね、ひどいでしょ?だから・・・彼女できた、はい、そうですか、ってなる?」
ゆいさんは寂しそうな・・・でも、目には力がうかがえる、何とも言えない表情をうかべていた。
「わかります!」
と美香が頷く。
「そんな、簡単に気持ちは整理できないですよね!」
と麻美。
あんたたち、どっちの友達よ・・・・。
あ・・・・・・。
そういうこと・・・・。
私たちを、私と巧の友だちを探りに来たんだ・・・・。あわよくば味方に、それができなくても、中立化するために・・・・来たんだ・・・・。
浅野ゆい。油断ならないわ。
乳だけの女じゃないわ・・・・・。
「わかります・・・・申し訳ないです・・・けど、もう、私と付き合ってるんで・・・」
静かに、でも、毅然とそう告げた。
「そうね・・・・わかってるわ・・・・私に勇気がなかっただけって・・・だから」
「だから?」
「いえ、いいわ・・・たくちゃんの従姉として、友達として、仲良くしてね。」
にこっと笑顔を浮かべる「ゆい姉」をみて、私はゾクッとした。
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「おはよう、タっくん」
いつものコンビニ前で、まなは待っていてくれた。
「おはよう、まな・・・・その、昨日はごめん、途中で分かれて・・・・・」
「いいわよ。かえってよかったわ。」
「え?」
「うん、ゆいさんといろいろ話せたし・・・まあ、タっくんは気にしないで」
「?」
俺がいない間に何があったのだろう・・・。
何か、決意のようなものを感じる。それがなんだかわからないが。
いつものように二人で教室に入る。
すると、麻美、美香が俺の方を一瞥し、ひそひそと話し始める。
なんだ、なんだ?
席に座り、リュックを机に置いたときだ。
「おい、たく・・・」
「お、誠、おはよう」
誠と肇が俺の席へとよってきた。
「なに、のんきな声出してんだ・・・」
「そうだよ。たく。」
「なにが?」
「おまえ、あのゆいさんと、どーゆー関係だ?」
「うん。それ、はっきりさせなよ。じゃないと・・・・」
と、肇の目線を追うと、美香と麻美、そして合流したまなの方にあった。
「どういうこと?」
「あのなぁ・・・・・・・」
誠と肇は、昨日の帰路の出来事を教えてくれた。
「そーかぁ・・・・俺ってゲス野郎なんだ・・・・・」
「いや、そーゆーことじゃあねぇ・・・・・」
「うん、きみがはっきりしてればいい。」
「いや、はっきりしてるだろ。俺の彼女はまなだ。ゆい姉はただの従姉。」
俺は毅然と答えた。
「じゃあ、もう、一緒に出かけることはないな?二人っきりで」
「無論。今までだってない。」
『は?』
2人はとても不思議そうに俺を眺めた。
「いや、おまえ、二人で連休中出かけたんだろう?」
「え、いや、あれ、ただのツーリングだから」
『はぁ?』
誠と肇は俺をう宇宙人でも見るような顔で、俺を覗き込んできた。
「いや、ツーリングはお出かけとかデートとかじゃないだろう?バイク仲間の行事だろう?部活みたいなもんだよ」
『・・・・・・・・・』
なぜか絶句する二人。
ライダー同士が集まってツーリングするのは自然なことだし、ただ運転してるだけだ。まあ、尻は見てたけど。
でも、バイク仲間は男女関係なく仲間だ。それだけだ。
「・・・・・あのさ、それ、まなに言えるのか?」
「え、ああ、もちろん。だって、部活してるようなもんだろう?」
「・・・・・・え、っと・・・誠、彼の言ってる意味が分かるかい?」
「いんや・・・ぜんぜん・・・・」
俺の話は二人には理解できないようだ。まあ、ライダーの気持ちや感覚は乗らない奴にはわからない。ライダーあるあるだ。
「なあ、たく」
「なんだ?」
「わかってもらえると・・・・・いいな・・・・・」
そう言うと、誠と肇はそそくさと席へもどっていった。
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昼休み。
麻美、美香、私の3人で教室で食べることにした。
タっくんたち3人は学食に行っている。
「ね、まなちゃん・・・」
美香が神妙な顔で聞いてきた。
「なに?」
「朝の話聞いても、許せるの?」
朝、美香は誠に連れ出され、巧が話したことを伝えられたらしい。その後、美香は、私に話かけたそうだったが・・・・・。
「正直・・・微妙・・・・っていうか・・・心配だけど・・」
うつむき加減に私は答えた。
「う~ん・・・なんかさ、たくの言ってる事さ、わかるようなわからないような・・・・」
麻美は困惑した顔を見せている。
「そうよね・・・部活動みたいなもん、って、言われてもさ・・・」
お弁当の白米を見つめ、納得していない気持ちを押し殺す美香。
なんだか申し訳ない。
「でも・・・タっくんはさ、私が彼女って言ってるんだから、それを信じるわ。ね?」
カラ元気を出すわたし。
『・・・・・・・』
困惑したままの二人は、黙ってか顔を見合わせていた。
「昨日はさ、その、ゆいさんの気持ちも・・・わかるって態度だったけど・・・・」
「うん、ごめん。私たちはまなの、味方だから。ね?」
「ありがとう・・・」
笑顔がぎこちないのが、自分でもわかった。
明日投稿できたらいいな。




