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残る違和感

診療所の待合室は、今日も人でいっぱいだった。熱を訴える子ども、夜ごと悪夢にうなされる大人、原因不明の頭痛を抱える老人。診察しても特効薬はない。ただ休めと告げるしかない。

けれど――誰一人として“死なない”のだ。死にそうなほど衰弱していても、翌日には不自然なまでに持ち直してくる。それは医学では説明できない「停滞」であり、誠司の胸に冷たい違和感を残した。

夕暮れ。診療所の二階の窓辺に、レイが腰掛けていた。静かに外を眺めるその横顔は、まるで町のすべてを見透かしているようだった。

「退屈じゃないか?」と声をかけても、レイは首を小さく振るだけ。彼女にとって退屈という感情すら希薄なのだろう。

けれどその目は、日が沈む海の向こうを真剣に見つめていた。――まるで、そこに何かを思い出しそうになっているかのように。

誠司はふと、心の奥で考える。彼女は本当に“ただの迷子”なのか。いや、そうではない。出会ってからの日々で、何度もそう思わされてきた。あの透明な瞳の奥には、人間のものではない何かが潜んでいる。

その夜、誠司は久しぶりに往診の帰りに浜辺へ出た。波打ち際に立つと、海風が急に止んだ。耳鳴りのような静けさに包まれ、空を仰ぐ。

――空が、裂けていた。

星の瞬きの間に、細い亀裂が走る。光も闇も吸い込むような不自然な線は、すぐに閉じて消えた。だが、誠司の目は確かにそれを捉えていた。

「……始まっているのか」

自分でも気づかぬうちに、口から漏れていた。天変地異や流行病。誰もが口にしないだけで、この世界がすでに限界に近いことを誠司は知っている。そして――レイが現れてから、その流れは加速している。

診療所に戻ると、レイはまだ起きていた。窓際に立ち、夜空を眺め続けている。その背中は小さく、しかしどこか、抗いがたい力を秘めているように見えた。

「……レイ」

呼びかけても、彼女は振り返らない。ただ静かに、遠い空を見つめている。

誠司は拳を握った。守りたい――そう思う一方で、彼女が“何か”を呼び寄せていることを、認めざるを得なかった。

夜風が入り込み、カーテンが揺れる。その一瞬、鈴のような音がかすかに響いた。

誠司は目を閉じる。まだ言葉にはできないが、彼女の中で“目覚めかけているもの”がある。そしてそれは、この町だけでなく世界そのものを揺るがすものになる――そんな予感が胸を満たしていた。





さて、恒例ですが感想を求めましょう。

だんだん文にまとまりがなくなってゆく…

なぜでしょう…

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