咲き溢れて
世界は、静かに変わり始めていた。あの日、空を裂いた光が収まり、レイが選んだ“循環の器”としての覚醒によって、止まっていた魂の流れが再び動き出した。
街には笑い声が戻り、途絶えていた命が芽吹くように、人々の目に光が宿り始めている。戦火に奪われたはずの土地にも草花が芽を出し、病に蝕まれた人の中からも奇跡のように息を吹き返す者が現れた。
――魂が、世界に戻ってきている。
誠司の診療所も例外ではなかった。日ごとに新しい命の誕生を知らせる声が届き、診療所の扉を叩く人々は、ただ傷や病を癒やすためだけでなく、産声を上げた赤子を抱いて訪れるようになった。
その度に誠司は思う。この世界に、再び「未来を繋ぐ力」が巡り始めたのだと。
ある日のことだった。若い母親に抱かれて運ばれてきた一人の赤ん坊が、診療所の白い扉をくぐった。柔らかな産着に包まれたその子は、まだ覚束ない視線で誠司を見上げた。
――その目に、誠司は息を呑んだ。
どこかで、確かに見た瞳。静かに、けれどまっすぐに人を射抜くような透明な光。それは、かつて「レイ」と呼ばれた少女の目と、あまりに似ていた。
母親は「この子、よく笑うんです」と誇らしげに言った。誠司はただ頷きながら、腕の中で小さく息づく命を見つめる。温もりは確かに“人の子”のもので、もう天の器ではない。けれど――その瞳の奥に宿る何かが、誠司の心を強く揺さぶった。
「……おかえり」思わず零れたその言葉は、誰にも聞かれることなく、診療所の静寂に溶けていった。
扉の外では、また新しい風が吹いていた。それは、春の訪れを告げる柔らかな風だった。そして誠司は確かに感じていた。巡る魂がもたらしたこの未来に、彼女の選択が生きているのだと。
遅くなっちゃって御免なさい~!!
クライマックス…が終わったぐらいかな、
頑張ってなるべく綺麗な世界を描写しています!




