黒い裂け目
誠司視点を書くのはやっぱり難しめですね…、
今日はたまたま、患者が少なかった。
これぐらいなら任せられる。そう考えて
なんとなく楓達と外を歩いてみた。
喫茶店で会話を楽しんで帰宅する。
しばらくは、そんな生活ができるはずだった。
喫茶店を出た頃から、嫌な感じはしていた。
空気が重く、黒い。
まるで…
ちょうど広場に差し掛かった時だった。
(…間違いじゃない、ルカエルが来る)
重く張り詰めていた空気を切り裂くように、
空は裂け、そこから淡い光と似ても似つかぬ真っ黒の天使が姿を現した。
眩い光は広場を包み込み、世界そのものが震えているようだった。その中心に立つのは、少女――いや、もう“少女”と呼ぶには遠すぎる存在になりつつあるレイ。
誠司は唇を噛みしめ、彼女の姿を見つめた。背後に漂うのは、翼を持つ者――ルカエル。
「もう時間は十分だろう。
アズリエル、選んでもらわねばならない。
器か、人かの選択を。天はもうしびれを切らす。」その声は冷ややかに響いた。
「…それは、早いんじゃないか。
まずレイが器とやらなったらどうなるんだ」
誠司は思わず、堪えきれずに声を上げた。
「器が目覚めれば、自我も記憶もすべて消える。残るのは、“魂の循環”を再起動させる機能だけだ」
誠司の胸に、重たい鉛のような感覚が広がった。自我も、記憶も……消える?それでは、楓と過ごした時間も、笑った瞬間も、すべて……。
今まで沈黙を貫いていたレイは、初めて口を開く。
「誠司さん。楓、。
………………私は、器になる…」
すぅっと風に溶けそうな、小さな声。
思考が揺らぎ、胸の奥に古傷が疼く。――妹の顔が浮かんだ。幼い頃、病で失われた命。守れなかった後悔。「レイ…、楓と共にこの世界を歩む未来も、あるんだぞ?」震える声が漏れる。
医者として。兄として。
人として。そして、従兄弟として、
楓の大切な存在になりつつあったレイを
今度こそ守ってやりたい、どうして自分は、結局何も救えないのか。
そのとき――光の中で、レイが振り返った。もうその瞳には、迷いはなかった。人の姿を超えた輝きの奥に、確かに“彼女自身”の意志が宿っていた。
「誠司さん」穏やかな声が、光のざわめきを切り裂くように届いた。「ちゃんと守ってくれたよ」
誠司は目を見開いた。これから消えゆくというのに、どうしてそんな顔ができるんだ。どうして――赦すように笑えるんだ。
光はさらに膨れ上がる。その瞬間、レイの内部から響き始めたのは、澄み渡る鐘のような音。――「器のコア」が覚醒し、封じられていた力が解き放たれていく。
妹の代わり、ではない。
レイを、レイとして。
私は守ろうとしていたのだ。
けれど、それ以上に、
レイが、レイの意思で。
決めたのだ。
ならば託そう、貴女に。
この世の未来を。
これから生まれる命を。
どうでしたか…!
またすぐ完結ですので、飽きずに呼んでくださると幸いです!
ぜひコメント、感想、待ってます…!




