「器」と「人」
前書きって描くことないんです…
適当でごめんなさい!
夜の診療所は、しんと静まり返っていた。積まれたカルテの山を横目に、私は窓の外を見つめる。そこにはまた、あの“裂け目”が淡く光を漏らしていた。
空が割れ、向こう側から光が溢れ出す。その異様な光景に人々は怯え、あるいは気象の異常と片づけている。けれど、私は知っている。――この町を守る少女と、その正体に結びつく現象だということを。
机に肘をつき、額を押さえた。私は医者だ。人を癒やすことを使命にしてきた。だが、彼女の力を前にすると、その営みがどれほど脆いものかを思い知らされる。枯れた植物を蘇らせ、死にかけた命をたやすく救い上げる――人ならざる力。
ルカエルが告げた名。アズリエル。「器」。
その言葉が、重くのしかかる。
彼女は“選ばされた存在”だ。神に造られ、役割を背負わされた。記憶を奪われ、地上に堕とされて――それでも、懸命に人として日々を歩もうとしている。あまりに残酷な真実だ。
……だが、選択そのものを奪うことこそ、さらに残酷ではないか。
扉の向こうで、小さな笑い声がした。楓だろう。彼女は以前まで、どこか無理をしていた。母ひとり子ひとりという境遇を隠すように、いつも明るく振る舞っていた。けれど、レイと出会ってから変わった。見栄や偽りではなく、ありのままの自分で笑うようになった。
……レイが、彼女を変えたのだ。
私は思う。彼女は確かに人を救っている。それは奇跡の力ではなく、触れ合いによって。それこそが「人」としての彼女の証なのではないか。
だが同時に、空は裂け続けている。世界の終わりは近づき、器としての役割は否応なく彼女を追い詰める。
私は――願ってしまう。彼女がただの少女でいてくれることを。楓と肩を並べ、笑い合う未来を。
けれど、それを押しつけることはできない。結局のところ、決めるのは彼女自身だ。「器」として生きるのか、「人」として笑うのか。
私にできるのは、その選択を支え、見届けることだけ。医者として、人間として。
窓の外、夜空の裂け目がひときわ強く光を放った。それはまるで――彼女が選ばされる未来の近さを告げているように思えた。
今回はセリフがなかったので、前のに続けて投稿しました!
誠司は絶対モテたんだろうなぁ(偏見です)




