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忘れないで

伏線入れてみたいなって思ったけど無理そうで、やっぱり小説家さんとか凄いなって思います…。



夜の診療所は静かだった。雨が止んだばかりで、窓の外の街灯が濡れた舗道を柔らかく照らしている。

私は廊下の隅に腰を下ろして、レイの寝顔を見つめていた。彼女は時々、苦しそうに眉を寄せる。何かを思い出しているのかもしれない。それは、私には絶対に触れられない記憶。

……でも、それでも。私はレイの手を握った。冷たいけれど、どこか安心できる温度。

「レイ……」呼びかける声は小さく震えていた。

ここに来たばかりのころ、レイは人形みたいだった。笑わない、泣かない、感情のない子。でも最近、ほんの一瞬でも、表情が揺れるようになった。この前なんて、小さな花を見て――ほんの少し、笑ったんだ。

“やっと、普通の女の子になれたのに。”

その瞬間を私は一生忘れない。けれど今のレイは、また遠い空を見上げている。まるで私の知らない場所へ呼ばれているみたいに。

「私は……一緒にいるから」

返事はなかった。けれど、レイの指が、ほんの少しだけ私の手を握り返した気がした。それだけで胸が熱くなった。

……でも、怖い。もし全部を思い出したら、レイは私の知らない空へ帰ってしまうんじゃないか。私の大切な“友達”じゃなくなってしまうんじゃないか。

「ねぇ、もし忘れても……名前だけは覚えてて。 私が呼ぶ“レイ”は、あなたの名前なんだから」

自分でも、泣きそうな声になってしまった。けれど、レイの唇がかすかに動くのを見た。言葉にはならなかったけれど、笑っていた。その笑みは、たしかに“人間らしい”笑顔だった。

――やっと普通の女の子になれたのに。その思いが胸を締め付ける。

それでも、私は決めた。たとえ彼女が何者でも。たとえ記憶を全部取り戻して、遠い場所へ行ってしまうとしても。最後の瞬間まで、私は隣にいる。

そうじゃなきゃ、きっと――私は一生後悔するから。




レイがどうするかはレイ次第。

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