異質な
章の始まり方が毎回同じだと気がついたんです!
暖かく…見守って下さいね。
夕暮れの志音町を、柔らかな潮風が吹き抜けていく。 けれどその風の中に、楓はふと違和感を覚えた。空気が重い。見慣れた町の色彩が、ほんのわずかに褪せていくように感じられる。
誠司とレイと共に歩いていた時だった。 空が、裂けた。
音もなく、まるで硝子に罅が走るように、茜色の空の一部が割れてゆく。そこから黒い影が姿を現した。
――大きな翼。 白ではなく、夜の闇をそのまま凝縮したかのような黒。 その存在は、どこか神聖で、しかし同時に禍々しくもあった。
楓は息を呑む。身体が震える。 誠司は無意識に一歩、レイの前に出ていた。
黒翼の天使――ルカエルが、ゆっくりと地上に降り立つ。 その目は、真っ直ぐにレイだけを射抜いていた。
低く、しかし響く声が落ちる。
「……見つけたぞ。背信の記録者――アズリアル」
楓は、その言葉を理解できなかった。 けれど、レイの身体がびくりと震えたのを確かに見た。 まるで、その名が心の奥底を突き刺すように。
「アズリアル……? 誰のこと……?」 楓は思わず口にする。 しかしレイは答えなかった。ただその淡い瞳を見開き、動けずにいた。
ルカエルの声がさらに深く響く。
「お前はただの少女ではない。 魂の循環をつなぎ直すために造られた“器”。 禁忌の記録に触れ、堕とされた存在――それがお前だ、アズリアル」
楓の心臓がどくん、と跳ねた。 「器」? 何を言っているのか、全く理解できない。 けれど、その言葉が、レイをこの世界から遠ざけようとしていることだけは直感で分かった。
「違う! レイはレイだよ!」 楓は震える声で叫び、レイの腕を強く掴んだ。「器とかアズリアルとか……そんなの知らない! 私が知ってるのは、レイだけ!」
掴んだ手の中で、レイはわずかに震えていた。 彼女自身も、その言葉に抗えず、揺らいでいる。
誠司の声が重く響く。「……やめろ。彼女は“レイ”だ。それ以上でも、それ以下でもない」
ルカエルの瞳に、一瞬だけ揺らぎが走った。 だがその口元には、冷ややかな微笑が浮かぶ。
「ならば証明してみせよ、人間。 その“器”が本当にただの少女であるということを――」
裂け目から漏れ出す黒い光が、町を覆い始める。 志音町だけを避けるように終焉が遠のいていたのは、レイの存在ゆえ。 そしていま、その均衡が大きく揺らぎ始めていた。
コメントをくれるとやる気が出ます!
改善点などでもぜひコメントをください!




