呪姫
いつかの遠い未来のこと。
美しい人間の女の形をした化け物が、人の世を支配する。
その女の形をした化け物が人々を奴隷や家畜のように扱う。
その女の形をした化け物を倒すべく、数十数百の勇者が戦いを挑んだが、すべて無惨な姿でナキモノにされた。
その化け物に弱点がないのだ。
その化け物を細かく切り刻んでも、火に炙って灰にしてもすぐに形を戻す。
生き返る。
噂によるとその化け物の弱点──心臓が、この世界のどこかに封印されたままになっているとか。
そう、その化け物の弱点は本体にはない。
別の場所にあるのだ。
だから、この化け物自体を倒そうとしても倒せない。
不可能なのだ。
始まりは昔々のこと。
とある人間の男が、化け物に恋をした。
そしてその男はその化け物と人知れず結ばれ、2人の愛の結晶を授かった。
だが、そのことが村にばれ、男は村人に火炙りの刑にされた。
そして、化け物は生きたまま体をバラバラにされ、赤子の方は心の臓を生きたままくり貫かれた。
村人たちは、バラバラにした化け物の体──頭、胴体、両手、両足を、それぞれ別々の場所に埋めて封印した。赤子も、土に埋めて封印した。
ただ、化け物の両手のところには、赤子の心の臓も埋めて封印した。
両手で、その赤子の心の臓を抱きしめるようにして。
どうしてそのようにして封印したのかは、分からない。
だか、そうしたせいで──……
心の臓をくり貫かれた赤子は死んではいなかった。
バラバラにされた後に化け物が最期の力を振り絞り、赤子に永久の愛の呪いを両手からかけたのだ。
その化け物の呪いのお陰で、赤子は人知れず土のなかですくすくと成長していった。
そして。
その赤子は、美しい人間の女の形をした化け物になると、土から出てきた。
母親が最期にくれた、大きな愛を抱きしめながら。
母親の遺した記憶から、人々を強く怨みながら。
美しい裸の化け物は、高笑いしながら例の村へと向かい。
そして、現在に至るのだった────