表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

34 壊れた朝。

 ガブリエラさん、急に居なくなっちゃうんだもんなぁ。


「急過ぎ」

《だよねぇ、昨日の今日で居なくなっちゃうんだもん》

『アレの護衛も兼ねて出たんじゃないだろうか』


「あー」

《あ、ライアン先輩、すっかり晴れやかなお顔ですね》

『ご苦労様でした、心中お察し申し上げます』


『あぁ、うん、ありがとう。彼女について分かってくれただけでも、救われた気分だよ』

《良く殺さなかったですね?》

「おま、凄い聞き方するな」


『良い人ぶりたかったんだよ、凡人なのにも関わらず、穏便に済ませたかった。けれど逆に被害を拡散させてしまって、申し訳無いと思う』

「いや手を出す方がどうかしてるんすよ、な、ダブルハンドビックキャビン」

『全くだな』

《でも今まで耐えてらっしゃったのは非凡だと思いますよ?》


「それはそう」


『何もしないって、実は楽だからね。何かしているフリをして、同じ所をグルグル回っていれば、少しは何かしている気になる』


《凄い、ほぼ全員に刺さってる》

「お前は無傷そうだけどな」


《そうでも無いよ、先輩も補佐して当たり前なんだからね、と釘を刺されたし》

「はー、可愛い惚気じゃねかよ」

『あの、既に出立されたそうですが』

『うん、見送られるのが恥ずかしいからと、早朝に出て行ったよ』


《あ、じゃあご挨拶は出来たんですね》

『まぁ、うん』


「マジかよ、ヤっちゃったんすか」

『お前は、どうして突っ込むんだ』


「いやだってさぁ、クソ怖い親戚の叔母さんと先輩だぜ?」

《やっぱりガブリエラさんからですかね?》

『お前ら』

『そこは、僕がお願いしたんだ、僕ですらギリギリだと言われていたから、心配で、確認をね、少し』


《かーらーの?》

「もう止めてくれ」

『お前が言い出したんだろうが、すみません』

『あ、うん、もう昨日の時点で教員では無かったから、だから、ね』


「あぁ、成程」

《でも、一体何処で?》

『それは言えないよ、君達に悪しき見本を教えるワケにはいかないからね』

『有るんですね、そうした場所』


『さぁ、どうだろうね』


 先輩が晴れやかなのは良いんだけど。

 けどさぁ、マジか、マジかよ。


 いやでも、ヤったとは言って無いし。


 流石にね。

 流石に学園内では。




《あら、晴れやかな顔です事》


『あぁ、先ずは君に』

《良いんですの、寧ろ腐れ外道を早々に炙り出して下さって、私こそ感謝すべきですもの。でも、アナタが行動するまで、私はアナタも許せませんでしたわ》


『だろうね、内密に処理したと言えど、僕は何もしなかった』

《いいえ、寧ろアナタばかり格好付けてらっしゃった事が、私と関わろうとしなかった事が悔しかっただけですわ》


『すまない、君の気持ちに』

《あの時は、ですもの。傷を舐め合いたかっただけか、比例してアナタが良く見えたか、どちらにせよ不毛な関係になっていたか。いえ、私の事は眼中にも無かったでしょう》


『そうだね、すまない』


《はぁ、ですわよね。さ、では失礼致しますわ、ご機嫌よう》

『ご機嫌よう』


 コレでやっと、学園は静かになる。

 そう思った次の日。


「先輩」

『どうしたんだいケント君』


「アイツ、死んだって」


『それは、誰が』

「イーライが、熊に、襲われて」


『その情報は』

「教員長から、ローズ嬢と聞いてて、俺、飛び出しちゃって」


『先ずは座ろう』

「フィンランドで、魔渦で狂暴化した熊が、だから、身元確認が、民家に泊まってて」


『うん、息をして、僕も詳しく聞きたいからゆっくり、吐いてから吸って』


 イーライ君が見付かったのは、巣穴の中。

 同行者は無事だったものの、彼らすらも判別が難しい程の状態。


 しかも、他にも犠牲者が居たらしく。

 医師や警備隊からの情報では、5名の遺体が出たそうで。


「アイツ、遺言書いてて、まさかって、家から渡されて。俺、読みたくない」


『僕が、開けても良いかな』

「ごめん先輩」


『良いんだよ、開けるね』


 手紙は2通。

 1つは宿泊している場所の事、穏やかで静かで、とても過ごし易いからいつか遊びに来て欲しいと。


 そして2通目は、遺書。


 もし、万が一にも死んでしまったら、どうかローズ嬢との事は忘れて楽しかった事だけを覚えていて欲しい。

 戻って友達として遊べず、すまない、と。


「嫌だ、何で俺、もっと」

『ケント君、葬儀はいつ行われるかは』


「それは、聞いて、無いけど」

『一緒に聞きに行っても良いかな、ローズ嬢の事も心配だし』


「アイツ、アイツのせいで」

『もし罪が有るなら、学園の者全て、僕にも責任が有る。コレは、皆の責任だよ』


「でも、アイツが」

『誰にでも立場以外に感情も有る、気持ちも、それが上手く制御出来無いのが僕ら未成年。今は責めたらダメだよ、同じ状態になった事が有る者だけしか、この問題は責められない事だよ』


「けど」

『ガブリエラさんに教えて貰ったんだ、書いて整理しろって。イーライ君に言いたい事も何もかも、全部、落ち着いたら書こう。イーライ君も、パトリック先輩も、ローズ嬢を責める事を望んでいない筈だよ』


「分かんない、どうしてぶっ殺さなかったのかって、帰って来て、怒るかもだし」

『それも、確認しに行こう、良いね?』


「ぅん」


 僕が教員長室へ向かうと、既にローズ嬢は退出しており、僕が日程の確認をする事になった。


 まだ、実感が湧かない。

 彼の事を知ってはいたけれど、近くて、遠い存在で。


 何処かで彼は、まだ生きているんじゃないだろうかと。


『僕も、参列して良いかな』

「ぅん、お祖父様に言っておきます」


《騒動が重なりましたし、今日はもう寮に帰って休みなさい》

『君とルイ君、レオン君と揃って食中毒になった、良いですか教員長』


《そうだね、君は早くに症状が出た、後はコチラに任せない、良いね》


「はぃ」


 未だに実感が無い僕は、何処かで冷静で。


 元婚約者との問題が解決し、ガブリエラと婚約していなかったら。

 きっと、僕は彼と同じ様に、酷く動揺していたかも知れないなと。


 他人事の様に、僕は図書室に戻り、いつも通りに過ごした。


 ただ、少しいつもと違った事は。

 ガブリエラに会いたいと思った事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ