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32 夏の隙間。

 どうして、こんな事に。


「ライアン図書委員長、不純異性交遊は流石に見逃せませんよ、私が口説いてた側ですし」

『いや、コレは』

《ガブリエラ教員が口説いていらしたのは知っています、でも私達は、もう思い合っているんです》


 以前、イーライ君をココへ閉じ込めた罰だろうか。

 図書委員を辞めさせた女生徒と、どうして僕は、裸で。


「成程、分かりました、では双方からお話を伺いましょう」


 どうして僕は、平然とするガブリエラに、こんなにもショックを受けているんだろうか。




《はぁ、イーライ君の次はライアン君ですか》

「まぁ、ローズ嬢と話している場面を見られ注目されてしまったのでしょう、それについては私の責任です。すみません、教員長」


《いえいえ、寧ろその程度でコレだけの騒動を起こしたなら、いずれは起きた事です。どうかお気になさらないで下さいガブリエラ騎士爵》


 大粛清でかなり掃除出来た筈なのですが。

 性的な成熟度だけが高まってしまった、弊害、だそうで。


 ですが、それにましても、全く。

 薬を盛って既成事実を作ろうなどと。


「それで、どう」

《あぁ、子女は停学、自宅謹慎の後に転園ですな》


「あぁ、もう出来上がりましたか、新しい学園」

《はい、同時開園が見事に叶いましたそうで。そこでご相談なのですが、騎士予備学園への転園で、問題無いと思われますか?》


 男尊女卑、女を見下す愚か者共を集め、鍛え直す為の学園こそ騎士予備学園。

 そこへ侍女見習いとして転園させる、と、こうした問題を起こした場合の一律の措置なのですが。


「まぁ、問題無いかと。本当に女に対してどうしようも無い奴らですし、不純異性交遊に関しては男の方に罰則を重く設けていますし、内部告発も推奨し既に生徒にコチラの者も居れておりますから」


《はぁ、そこまでして頂かなければいけないとは、本当に面目》

「いえいえ、元は1つの学園でどうこうしようなどとは無理な事。寧ろ時期は次へと進んだのです、コレからも邁進して参りましょう」


《はい、全ては女王陛下、国、民、そして転移転生者様の為に》




 コチラの計画に無い事って、基本的には全て緊急事態なの。

 だからガブリエラちゃんに来て貰ったのだけれど。


「凄いな、中世女子、って感じですね」

《本当にね、もう、早熟さは合意の上でなら大歓迎なのだけど》

『もう問題は十分だったのだけれどね、どうしてこう、連鎖してしまうモノなんだろうか?』


「門外漢なので憶測ですが、様々な思惑と抑圧が重い蓋になっていたのかと。それがこう、何重にも折り重なり、重さが有った蓋が剥がれ」

《軽くなり、次々に蓋が開いてしまっている》

『パンドラの箱とは、こう言う事を言うんだろうかね』


「どうなんでしょうね、ウチの方では玉手箱なので」

《小さな箱に大きな福が》

『それか煙と老化の魔法か』


《あ、そうそう、ライアン子息はどうなさるの?》

「そこですよねぇ、婚約してたら守れたし攻撃すら出来たんですけど、返事を貰えないままでしたから」

『君が逃げ回っていたと聞いているよ?』


「目の前で悩まれるの苦手なんですよね、じゃあもう良いやってなっちゃうんで、ハッキリしたら聞こうと思ってたんですけど。まぁ、何も無いんで、好きにさせようかなーと」

《もう、別に無理に結婚しなくても良いのよ?それこそ、指輪を外して引退しても良いのだし》


「嫌です、動き回りたい」

《もう、ふふふ、惚れたの?彼に》


「んー、どうでしょう。あ、コイツ嵌められたなって直ぐに分かったからか、ショックを受けませんでしたし。他に取られても別に、仕方無いか、と」


《なら、アナタに抱かれたいって言って来たら?》

「あぁ、暫く安静にさせますね、相当ショックだったんでしょうし」

『全く、難儀だね君達は』


「いやイーライ君は素直かと、あのまま幸せになって欲しい、つか子供が見てみたい」

《そうよねぇ、きっとお人形さんみたいな子が》

『君だって決して悪い顔では無い筈なんだけれどね』


「らしいですけど、まぁ、所詮この顔は借り物と同義ですから」


 私達は生まれ変わった事も無いから、勿論、転生者の気持ちを完璧には理解が出来ていないわ。

 けれども、その顔もまた、アナタの顔でも有る。


 そう言ったのだけれど。


《私達は、アナタにも幸せになって欲しいわ?》

「そらなりますよ、無理しない、我慢は美徳じゃ無い。ココで教えられた事は多いですから」

『もし彼の事が嫌になったら直ぐに言って欲しい、コチラで対処させて貰うよ』


「はい、では失礼致します」

《うん、気を付けて帰って頂戴ね》

『しっかり休息を取るんだよ』


「はーい」


 2週目の人生を生きる事は、私は楽しそうだとは思うのだけれど。

 実態、実際はきっと違うのよね。




 いや本当、マジで凄いわ中世女子。


《本当に、私達は愛し合っ》

「うん、じゃあ証拠は?」


 事件の翌日、改めて話しを聞く事になったんだけど。


《その、私達はお互いの事は秘密にしていたので》

「成程、アイツは文の1つもくれないクズなヤツなんだな」


《違います!》

「良いんだよ、庇わなくても。私達はね、もしかしたら彼が強引に。だから正直に言って良いんだよ」


《違います、本当に》

「いつ、どちらから声を掛ける様になったのかな?」


《それは、図書委員をしていたので》

「で、図書室で?それとも下校時?」


《図書室や、下校時に》


「に?話したの?」


《いえ、ですけど、手紙の、やり取りを》

「どんな紙?何で書いた?」


《それは》


「残すなって言われたのかな、あのクズに」

《違います!あの人は、クズなんかじゃ》


「そう。で、贈り物は一切無し、で良いかな」


《それは、私から、お断りを、していたので》


「彼の、好物とか何か知ってる?」


《嫌いな物は、お魚で》

「小骨で怪我をした事が有ったから、図書委員発行の新聞に書いて有ったね」


《好物は、リンゴ、です》

「残念、敢えて嘘を書いたんだって、地元の名産品だから食べ飽きてるらしい。けれども名産品を売り込む為にもと、敢えて書いたそうだよ、好物としてね」


《でも、リンゴパイを》

「魚程は嫌いじゃないそうだから、名産品を推す為だよ」


《でも、本当に》

「じゃあ彼に言われた、書かれた口説き文句や何かを、覚えている限り全て書いて貰えるかな。日時や場所なども覚えていれば、出来るだけ詳しく正確に。コレは近頃の騒動に連なる問題として、厳しく罰さなくてはいけないから。最悪は、廃嫡になるけれど君の家が引き取るって事で良いよね?」


《そんな》

「あ、勿論引き取らなくても良いよ、贈り物も渡さない文すら残させない様なクズは。新しく出来た学園に送っても良いかもね、騎士予備学園。非童貞は真っ先に教育されて、最悪は生き残れないかも知れないけど、別にそれでも構わないよね?学園内の公共施設での不純異性交遊は厳罰化されたのは君も知っているんだし、退学だけじゃ済まなくなる、だからあんなクズに実は消えて欲しいんでしょ?」


《違う!》

「じゃあ、どうしてあんな場所で裸で居たのかな、しかも鍵をかけずに、バレて欲しかったんじゃない?」


《でも》

「良いんだよ、君はアイツがクズだって知ってて粛清しようとした、ならそうした手口でも仕方が無いよ」


《違う、違うんです、本当に》


「好きなんだね、そのクズ男」

《違います!彼はクズなんかじゃない!》


「そうかな、君に本当の好物を教えないし一緒にも出掛けず誰にも付き合っている事を明かさせない、そして文も残させず贈り物もしない。それがクズじゃないと思っているなら、考えを改めた方が良い、君を本当に大切にしてくれる人の為に、是非にも考えを改めるべきだ」


《違うんです、本当に、彼は》

「良い人、かも知れないけれど。それは表向き、庇わなくて良いんだよ、最悪は他の学園に送って死んで貰えば良いんだから」


《ダメ!止めて下さい!》

「大丈夫大丈夫、君のせいになる事は無いから気にしないで。ただね、本当の好物を教えもしないし一緒にも出掛けず、誰にも付き合っている事を明かさせない、しかも文も残させず贈り物もしない。そんなクズを学園としては野放しには出来無いんだよ、廃嫡か転園かだ。図書室の奥で裸で居た時点で、既に道はある程度決まってしまっているんだよ」


《違うんです、私が、私が》

「良いんだよ、無理をしないで、彼を廃嫡させれば君の立場は守られる。向こうのご両親も既に事情は知っていてね、酷くガッカリしているし、君に害が及ぶ事は無いよ」


《本当に、違うんです、私が、私が薬を盛ったんです》

「だとしても、彼は本当の好物を教えもしない、一緒にも出掛けず誰にも付き合っている事を明かさせない、文も残させず贈り物もしない。そんなクズなんだろ?」


《違うんです、全部、嘘なんです》


「好きなのは分かった、けれどあんなクズを」

《全部私の嘘なんです!》


 うん、知ってる、けど自白って凄く大事なんだよね。

 特にココだと、ね。


「そう、良いんだよ、落ち着いて。先ずは薬を盛ろうと思った所から、ゆっくり、始めようか」

《はい》


 落とした後って、興味が無いんだよなぁ。


「あ、飲み物を用意させるよ、疲れただろう、ごめんね、待っていてね」

《はい、ありがとうございます》


 後はもう、任せて良いかな。


《素晴らしいお手並みでしたね》

「いえいえ、教員長にしてみれば、長く掛かってしまってヤキモキなさったでしょう」


《とんでもない、数日は掛かりましたでしょう、いやはや勉強させられるばかりです》

「いえいえ、ですが流石に疲れましたね、休ませて頂いても?」


《はい、お任せ下さい》


 何で見学のライアン君が、真っ青な顔をしているんだろうか。


「ライアン図書委員長、一緒に休みに行きましょうか」


『あ、はい』


 別に、彼をクズとは思っていないんだけれど。

 やっぱりこう聞くとショックなんだろうか。


 なら聞かなければ良かったのに、真面目だなぁ。

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