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22 位置について。

 僕は休学、ローズは変わらず。

 そしてメリッサは、無視する事になった。


《もう男の子のイーライは居なくなるからね》


 僕は休学している間に遊学へ行き、その際に熊に襲われ傷を負い、死亡。

 そう、セシル・イーライこの後、死んじゃう。


「その後、どうやって王族と関わるの?」

『叡智の結晶として関わる家名は幾つか有るんだが』

《僕のオススメはアスターかクレア、可愛いでしょ》


「そんな選べるの?」

《選んでおいたんだ》


 アレか、そこまで妄想してたのか、凄いなパトリック。


「クレアかアスターかぁ」

《クレア・セシルか、アスター・セシルか》


「セシルが名前になるんだ」

《他が良い?》


「ううん、てか何で姓が先なの?」

《あー、家名を優先して覚えて貰う為だ、って聞いたけど》

『正式な場ではセシル家のイーライ、と呼ぶのに対し、文章ではイーライ・セシルとするのは不格好で口語表記の際に煩わしいからだと。私はそう聞いている』


「バラバラ」

《まぁ、両方なのかもね》


「あぁ、あ、他の子達って領地に?」

《ううん、実は既に有ったんだって、下位の学園》

『内々に、秘密裏に』


 ルビー・バードと仲良くしてた子も、メリッサを利用して僕にちょっかい出してた者も、処分となった。


 で、親もアホな場合は準男爵落ち、貴族位でも最下位に落とされアイルランドに送られる。

 そこで監視されながらも平民へ教育を施し、優秀な者を多く排出させられたら男爵位まで戻れて、いずれは本土復帰。


 親がアホじゃない子は、コッチでもっと厳しい教師の指導の元で平民に教育を施す補助をし、同じく優秀な子を多く出せて教師からも認められたら他家へ行ける。

 家に戻せば再びバカになる前例が幾度か有った為に、実家に戻れる事は無いらしい。


《親も愚かな場合だと、表向きは学園に向かう途中で事故だか熊に襲われて、一家丸ごと療養とか》

『戻ってから病に伏せ、一家で療養。若しくは本家に預け再教育、病に伏せるか、亡くなるか』


 殆どは復帰を果たせずアイルランドで暴れて殺されるか、意外にも餓死を選んだり。

 1番多いのは結婚、らしい。


「分かる、良き平民なら意思疎通も慣れれば楽だろうし」

『大昔、そう思い込んだ公女が出戻って来た話が有るらしい』

《イーライは平民になりたい?》


「どうだろ、なんだかんだ平民と関わって、なくはないか。メリッサがいっぱいは、ちょっと無理だなぁ」

《貴族でも優劣が有るんだし、全く貴族と関わった事が無い平民は厄介だよ、ココ以上に流言飛語に直ぐ踊らされるから》

『未だに末端まで教育を行き届かせるのが難しい、国の課題の1つだ』


「でもなぁ、下位の学園が有るならもう、僕としては何も浮かばないなぁ」

《僕は寧ろ最上位の小規模な学園を作っちゃえば良いのに、と思ってる》


「ほう?」

《イーライみたいな子や、飛び抜けて飲み込みが早い子、そうした子達を集める。避難した方が良い被害者を教えるし、良い婚約者を選べたら卒業で良いかなって》

『確かに、下が有るなら上も。ココを中間地点とし、振り分けるのは良いかも知れないが』


「じゃあ、何で今まで無かったのか、だよね」

『元は女王選抜の為、そして叡智の結晶の為。最近では平民と貴族の知識の差を無くす事が、学園の課題、とされている』


「けど幾ら平均化しても、結局は上とか下に突出するワケじゃん?」

《多分、今までなら、ココまでの差が出たら卒業まで家に戻る。とかの措置だったんだと思う》

『それでは学ぶ機会が損なわれてしまう、それこそ知り合う者の偏りも起きてしまう。学園は勿論、王族も懸念している点、要するにどうするか迷っていたのだと思う』


「それと、成熟度だと思うんだけど、そこは、誰が達してるって評価するの?」


『それこそ、最高位の役割』

「あー、成程ね」

《聞いてみる?》


「うん、念の為、一応」

《なら名前も決めて伝書紙で送ろう》


「あ、クレア・セシルで」

《うん》


 単に聞いただけ、なんだけど。

 既に計画はされてて、この手紙で実行される事になった。




《本当に休学してしまうんですね》

「はい、教員長には大変お世話になりました、ありがとうございました」


 イーライの荷物は、元から馬車1台に載せられる程度に収められていたから、このまま休学へ。

 他の生徒が授業中の間に、警備隊に護衛されながら正門へ。


 僕は同行者、ウォルターは御者。


《本当に荷物が少ない、真面目に規律を守ってたんだね》

「だって必要な物は揃ってたし、贈り物は今まで無かったから」


《アイツ》

「まぁまぁ。警備隊の方も、お世話になりました、問題を収められず、すみませんでした」

《いえ、これまでも耐えてらっしゃいましたし。今回は学期が悪かったと、改めて復学なさって頂ければと思っています》


「次は体を鍛えて顔を焼いてから来ますね、今までありがとうございました」


 イーライの冗談なんだけど、本気にしてる様子。


《冗談だよね》

「あ、うん、冗談です、ごめんなさい」

《いえ、冗談のままで、どうかお元気で》


「はい」


 僕らはこのままセシル家へ。

 コッチが落ち着いたら、キャサリンを家に呼ぶ事に。


 幾ら反省した、分かったと言っていても、妹のローズが何をするか判らない。

 正直、全く信用してない。




「不甲斐なくてすみません」

《ウチの妹がすみませんでした》

『いや、親とは実に非力だな、守れず、すまなかった』


「離れた場所ですし、虚弱でしたので、すみませんでした」

『いや』

「ご主人様、馬車での長旅でお坊ちゃまもお疲れでしょうから、今日はもうお休みになって頂いた方が宜しいかと」


『あぁ、すまない、休んでくれ』

「はい、失礼します」


 イーライの母親は1度も目を合わさず、言葉も発さないまま。


『いつも、あの様な感じなんだろうか』

「あぁ、ウチの母上はいつもアレ、思い通りにならないとあんな感じ」

《聞いてはいたけど、本当、大人げない》


「甘やかされて育ったみたいだし、仕方無いんじゃない」

《優しいね》


「寧ろ、思い通りになる事しか教えて貰って無い、そう見識が狭い可哀想な人だから。仕方無いよ」


 王都や辺境以外、未だに教育の行き届いていない貴族が存在してしまっている。

 嫁ぎ先で揉めさせない為、素養の無い子は早々に放置され、優秀な子に教育を集中させてしまう故に起きる弊害。


 そして教師不足から起こる、仕方の無い問題でもあるんだが。


『イーライ、人材不足を未だに解消出来ていないのは、何故だと思う』


「んー、結局は領主でも誰でも、家族へ注力しちゃうからだよね、他を見るにしても限界が有る」

『だけ、なんだろうか』


「まぁ、圧倒的に数が足りないよね。向こうだと国営の試験で資格を得られれば、誰でもなれるし」

《それ前科が有ってもなれるって事?》


「あー、どうだろ、軽いのならなれるんじゃないかな?」

《そこら辺の、理想とかは?》


「それこそ学園の教師は理想的だったよ、あの捕まった先生も勉強はしっかりしてたし。理想は、前科が無いって言うか、それこそ冤罪だったならなれても良いけど、性犯罪と窃盗は絶対にダメな方が安心かな」

《教師には意外と文句無いんだ》


「無いねぇ、向こうはもっとクソだったし」

《どんな風に?》


「暑い日の運動で水を飲むな、休むな、気合が足りない」

《それ死んじゃわない?》


「死人出てる」

《あぁ》


「男は全員丸刈り。後は服装規定に文句を言うのは居たけど、アレって結局はどれだけ決まりを守れるか、守る事に慣れるかで。あ、下着まで指定が有ったけど、ド派手なエロ下着だと透けて大変な事になるから、守ろうとしての事じゃないかな、とは思う」


『ド派手なエロ下着』

「服が白だと下が黒だったら目立っちゃうし」

《そんなに薄いの?》


「夏場が暑いからね、夏用の制服は主に白。なのに肌着禁止とかも有ったり、近隣でも規則がバラバラだったから、逆に反抗心が出たのかも?」


《イーライは守ってたの?》

「そらね、悪目立ちしても良い事は無いし、個性は外で出せば良いじゃんと思ってたから。けど裏地に刺繍は頭良いなと思った、規定の抜け穴を見付けて、大騒ぎにするか見逃すか任せるって。先生に、カッコ良かった」


《それで、どうなったの?》

「規定が厳しくなるだろうって反論されてたけど、更に言い返してた。果ては全員を全身くまなく検査して、その検査の為に勉学の時間を短縮させるのは、本末転倒にならないのかって。で大人が規則の話し合いをしてる間に、抜け穴を次々に色んな生徒に流布して、パッと見で違反をしてないならそこで終わりって事になった。持ち物検査には協力的だったし、他の生徒にも納得させてたから、頭良いなと思った」


《その人は、どんな大人になったの?》


「引き籠り、進学した先で、気に食わないからってボコボコにされて、酷い写真を取られて。しかも不名誉だからって事件化させなかったのに、結局は他の罪で捕まった犯人の余罪として表に出ちゃって、親が頭悪い人だったから彼を責めて。同級生が間に入って、親戚に引き取られて、後はもう、分からない。繋がりが無かったから」


『愚か者に簡単に潰されてしまう仕組みが、間違っていると思うんだが』

「ね、けど魔法も魔道具も無いし、神様は姿を現さないし。しかも科学の発展もまだまだで、夜襲とか強襲に遭った感じ。でも罪が軽いなとは思った、10年もしないで自由になってたから」


《3人、だっけ、殺さないと死刑にならないの》

「とある事件で2人でも悪質なら死刑に、けどやっぱり基準は人数。1人生み出すのに最低でも2人の人間が必要なんだから、2人が基準でも良いと思うけどね」


《しかも育てるってなったら、更に人数は多い方が良いしね》

「ココと向こう、決定的に違うのはグループ育児だよね、アレのお陰で母上の影響はそこまで無かったから、そう恨む気にもなれないんだよね」

『元はキャラバンの育児方法が流布しての事らしい、男親が行商に出ている間に母親同士や親族間で助け合う。そして迎え入れる際には子供を集めて親族へ、男親を労う為に協力する』


「あぁ、子供が好きでも性欲と疲労はね、どうにもし難いしね」


 子供の事になると、イーライは時に暗い顔をする。

 どう尋ねるべきか。


 そう悩んでいると、ノックが。


《誰だろ》

「多分、母上だと思う、謝りに来たか言い訳か愚痴を言いに来たか。はいはい、今開けます」


 イーライが言った通り、最初は謝罪から。

 そして言い訳、愚痴へと変化した。


 後ろに控える侍女と執事長が、実に申し訳無さそうにしている。


『失礼ですが、メイソン、貴方の出身はどちらで』

「先代から使えさせて頂いております平民ですが、何か不備が」


『いえ、ご心労が絶えなかったかと、彼は食が細いですから』


 この言葉でやっと冷静さを取り戻してくれたのか、母親はイーライに謝罪すると、引き返して行った。


「ありがとうウォルター」

「お気遣い頂き、ありがとうございます」

『いえ、続きが有るんです、今回の事で楽になったのか、食欲が増したので。差し出がましいようですが、少し量が加減出来る様に、お願い出来ますでしょうか』


「ぁあ、そこまで今までの事が、申し訳御座いません」

「だけってワケじゃないから大丈夫だよメイソン、父上達にはやっと図太くなったんだ、開き直れる強さが身に付いた、とでも言っておいて」


「はい、では」


 父親用と母親用の言い訳まで考え、提言する。

 こうした配慮がこの年で出来る時点で、彼は充分に目立つ存在。


 そして使用人の心の支えにもなっている、にも関わらず、イーライの自覚は薄い。


『君は、もう少し優秀さを自覚するべきだと思う』

《だね》

「遠慮しなくなっただけ、母上にはコレから悲しんで反省して貰うんだし、寧ろ敢えてだよ」


 親にも真実は知らされない。

 この後の遊学でイーライは亡くなったと伝えられる事になる、そして母親は少しは反省するのか、愚かさから身を滅ぼすのか。


『純真無垢でない事を、寧ろ誇りに思う』

《何処でも無知で純真無垢な子は狩られる側になるからね》

「伊達に向こうで年を食って無いからねぇ」


 イーライが更に年を重ねたら、どうなってしまうんだろうか。

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