18 東風物語。
君達が静かになるまで、学園内が落ち着くまで、1週間掛かりました。
そこから急に戻ると、また注目の的になってしまうので、先ずは保健室登校的な事から始まる事に。
そこでは授業時間より早く勉強を始め、授業が終わる前に休憩室(避難所)へと向かう。
この特別な休憩室は学園長室の真横、不用意に生徒が来ない場所。
平民枠の侍従と、貴族出身の侍女がお世話をしてくれるんだけど。
凄い躾けが行き届いてて、ついキャサリンみたいなワケ有りなのかな、と少し疑ってしまう。
《如何ですか?》
「うん、ありがとう」
健康の為に学園から出される飲み物って、麦茶かハチミツレモン、今飲んでるのは良い塩梅に薄められた麦茶。
紅茶や珈琲は嗜好品で個人が所有する物、多分、カフェインを気にしての措置だと思う。
って言うか麦茶には本当に驚いたんだよね、気になって調べて歴史の勉強になったから良いけど。
健康とか病気に関して大幅に歴史が違うのに、不定期に魔女狩りが起きてるし、魔王だとか大罪とか。
《イーライは居るかな?》
「パトリック、ちゃんと仕事してる?」
《してるよ、僕は優秀だから早く抜けられるんだ》
「感想文を書かせて提出させて、他の先生に怒られない?」
《過労は美徳じゃないし、生徒は教えを請う側、些末な事を行うのは生徒の仕事。それが本来の姿なんだけど、どうにも教師が媚びてしまってるから、寧ろ僕が正してるんだよ》
「本当に?」
《うん、教師とは本来丁重にもてなされるべき。だって家庭教師を粗末には扱わないでしょ?》
「それは、格下からの出向で」
《地方では未だにそうかもだけど、王都は違う、ココでは王都流が本来なの》
「じゃあ、大丈夫なんだね?」
《うん》
人目が有ると保護者なんだよなぁ。
「様子見だけ?」
《ちょっと下がってくれるかな》
《では》
『失礼致します』
お、何か有ったのかな。
「何か」
《我慢し過ぎておかしくなりそうなんだけど?》
ですよね、性欲を炸裂させといて、急にお預けだし。
「何か、凄く気分が良い」
《イーライ、実は意地悪だよね》
「少しね」
ココで平気な顔をされると、じゃあ何もしなくても良いんだって思っちゃうよね。
それだけじゃないって分かってても。
全部で求めて欲しい、全部を愛して欲しい、だって全部愛してるんだから。
《んー、したい》
「さっきまで大人してたのに」
《だってまだ若いし》
パトリックのパトリックが、いやパトリオットと言うべきなのか。
「帰ってからね、まだ授業が有るし」
《次は遅くに行って、早く帰って来るんだよ》
「うん、分かってる。大丈夫、もう変な人に付いて行かない」
そう、コレ、間違い。
見知らぬ人や変な人に付いて行ってはいけません、は間違い、大概の犯罪は知り合いだったり顔見知りの犯行だって海外ドラマでも言ってたし。
ココでも。
『今日は体調不良者が多いから、少し移動して貰えるかしら』
「あ、はい」
女性が男性を襲う事は絶対に無い、とは言い切れない世界だと知ってたし、分かってたのに。
『爵位も立場も要らない、子供だけが欲しいの』
「何で僕?!」
『可愛いんだもの』
可愛いは正義、じゃなくて、ココだと不利。
だって、女性は対象外なんだもの。
「あの、刺激しても無理だと思いますけど」
『大丈夫、専用の道具を揃えてあるから。あ、新品だし消毒済みよ』
「それはまた、ご丁寧に」
『いえいえ、じゃあリラックスしてて、コレで直ぐに済ませるから』
「な、それ」
『そう、コレ知ってるのね』
「あ、いや」
『大丈夫、心配しな』
凄い、綺麗な顔が吹き飛んだ。
「ウォルター」
『縛り上げたら直ぐに開放しますから、待っていて下さい』
「うん」
コレでキュンとしちゃうのって、安直だよね。
キュンってしちゃったよ。
『お待たせしました』
「ごめんね」
『いえ、まさか職員が手を出すとは思わないでしょう、私もそう思いましたから』
エロ本とかではこのまましちゃう、とか有るけど。
無い、だって普通に考えれば他に人が来るんだし。
「でもごめんね、ありがとう」
『いや、無事で良かった、本当に』
「うん、無事だよ、大丈夫」
直ぐに開けたままのドアから警備隊が来て、加害者は連行、僕の方は事情聴取。
記憶の混濁や改変がされる前に、どうしても被害者の証言は即座に必要とされる。
そして本当に検査も。
仕方無い、再発防止の為だし、コレは自分自身の為にもなるし。
《イーライ》
「アレは検診、検査でした。だから嫌とかとは別枠、検診、検査されただけ。キスも何も無かったし、だから検診、検査」
《でも罪には問うからね》
「そこは勿論、恩赦を請うつもりも無いし、罪は償って貰う。僕だから平気だけど、他の子だったら凄い傷付いてもおかしくない、そこはしっかり処して欲しい」
《本当に平気なの?》
「そんなウブじゃないし、寧ろちょっと……」
今まで散々試し、苦労した事が他人によって。
《何か、大丈夫なのは嬉しいんだけど、少し悔しい》
『凄く悔しいが、嫌悪が無いなら』
「うん、無い無い、何なら女性化したウォルターだと思えば寧ろアリかもだし。全然、特にどうとも思って無いから、今日は久し振りにイチャイチャしたい」
悔しい、堪らなく悔しい。
あんなに苦労したのに、他人に負けた事も何もかもが、悔しい。
《じゃあ、今日は自分の部屋で準備して待ってて》
「うん」
《ウォルター》
『分かってる、すまない』
《悔しいのは分かるけど、本人が気にしていないのに僕らが気にするのは、気にしていない事を責める事になるよ》
『興奮した自分が、嫌で堪らないんだ』
《あー、久し振りだものね、エロい姿を見るの》
『しかも他人に、悔しいのにも関わらず、興奮が収まらない』
《嫌がられても、そこはもう、正直に言うしか無いと思うよ?》
『自分には、加虐性癖は無い、と、そう思っていたんだが』
《後咲きで開花するとも言われてるんだし、先ずは打ち明けよう?》
『あぁ、すまない』
《少しなら分かるし、責めないよ》
酷い状態に興奮するなんて、有り得るべき事では無いと言うのに。
「興奮しちゃったの?」
『すまない』
ウォルターは顔を上げられない位に申し訳無さそうだけど、イーライはニコニコしてるんだよね。
うん、ちょっとそんな気はしてた。
「嬉しいって言ったら嫌になる?」
『そんな事は、けれど、本当に』
《イーライはこうした事への造詣が深い、理解をしてるって事で良いかな?》
「まぁ、それも有るけど。性的搾取って言うより、本当に子種だけが欲しかったんだと、思うんだけど」
《そうだね、男嫌いだけど子供は欲しい、襲った理由は子種だけ》
「そこ、僕じゃなくて僕の子種。それ自体だけなら嬉しいし、実際にキスもされなかったし、子供が欲しくて逸脱する人の気持ちは少し分かるから。だから、ちょっと話し合いを飛ばして、強引に検査されたのと同じ。で、そこでちょっと、ウォルターはお医者さんに嫉妬しただけ。その事は凄く嬉しいし、アレは我ながらエロい姿だったと思う、2人がそんな姿にされたら僕もエロいと思う」
『私があの姿は、寧ろ間抜けじゃないだろうか』
「いや、エロいね」
《してみたら?》
「うん、試してみよう?」
で、案の定、イーライはご満悦。
『イーライ』
「はいエロい、恥ずかしそうな所が良い、エロい」
久し振りだからね、うん、分かる。
《楽しそうだねイーライ》
「ごめんね不謹慎で、けどコレはコレ、合意の上だし」
『イーライ、こうした事は本当に』
「もー、だから好きに確認してって言ったのに」
《それはエロいよイーライ、それこそ僕らが暴発しちゃうかもだし》
「可哀想過ぎは抜けないけど、コレは違います、合意の上の強引な、そうした行為です。分かった?」
《うん》
『はい』
「よし、じゃあこのまま色々と教えてあげたいんだけど、その前に少し聞いて欲しいんだ」
『解いてくれないだろうか』
「ダメ」
《何を聞いて欲しいの?》
「もう分かってると思うけど、前世で色々と知ってるんだ、ごめんね」
『それは構わない』
《けど何が引っ掛かってるの?》
「君達の想定より、もっと知ってる」
だよね。
僕らの方が先に開発されちゃったし。
『それでも構わない』
《ただ嫌な事は嫌だって教えて欲しい、僕らもイーライが少し嫌がるのは好きだから》
「それ、本当にダメなのと、様子見とか一時停止の合図、単語を決めようと思う」
《合言葉だね》
「そうそう、滅多に口に出さない単語で、注意と停止を意思表示する。3人で共通して使えるのが良いと思うんだけど」
『ビッグギャビン』
「ふふふ、良いね、停止ワードに良いかも」
《えー、他の男の事は嫌だから、セロリとニガヨモギは?》
「どっちが停止?」
『《ニガヨモギ》』
「じゃあニガヨモギが中断、セロリは加減してね、の合図ね」
『コレからも色々と教えて欲しい』
《ね、悦ばせたいし》
「じゃあ、もう手加減しないからね」
天使の様だなと思ったけど、その後、アレこそ悪魔の微笑みだったんだと理解した。
この後、僕らは如何に手加減されていたか、思い知る事になった。




