14 冷た想い。
アレから更に2週間が過ぎ、マジで笑えないプレゼントばかりに。
未使用避妊具はまだ優しい方。
使用済み避妊具、使用済み中身入り避妊具。
経血ラブレター。
相変わらずの精子炙り出しラブレター。
髪と陰毛で作られた張型なのか人形なのか不明な、使用済みのナニか。
「陰毛が飛び出してるクッキーが逆に可愛らしく見える」
《ダメだよ触っちゃ、他にも何か入ってるかも知れないんだから》
『イーライ、もう確認しない方が』
「いや、コレは譲れない」
それこそ先生方に迷惑を掛けてしまっているのだし、自分がどんな風に見られているのかは知っておきたい。
愉快犯も混ざってるとは思うけど、それこそストーカー殺人に至る要素を持ってる者も居るかも知れないんだから、コレは寧ろ知っておくべきだろう。
《分かった、けど絶対に反応しちゃダメだよ》
「うん」
無視、無反応。
コレがストーカーを撤退させる為の手段の1つ。
『それから、決して相手の気分を害す事も言ってはダメだよ』
キモい、ウザい。
コレらは禁句、ココでも向こうでも同じ。
「うん、分かってる」
コレもう、このイーライの外見って言うか。
何だろ、何だ?
「おう、イーライ」
「ケント、知ってる事を全て言え」
「あれ?キャラ変してね?」
「色々と隠してくれてるのは分かってる、でも僕は自分の事ならちゃんと知りたい」
何事にも無関心、って言うか敢えて無視を貫く系男子だと思ってたし。
パトリックお兄ちゃんには黙ってろって、言われたし。
「いやー、何の事だか」
「ケント、知ってる事を言わないなら……今直ぐにお前にイチャ絡みするぞ」
「こわっ、事実上の死じゃんか、ウチ騎士爵位だって分かってるよね?」
「おう、標的としては狙い易いだろうな」
「分かってんじゃんよ」
「選べ、お前の学園生活の死か、秘密を守って死ぬか」
コレ本気じゃん。
「待ってくれイーライ、な?俺ら友達だろ?」
「40秒だけ待ってやる」
「なっ」
考えろ、考えるんだ俺。
パトリックのお兄ちゃんに殺されるか、今、イーライにイチャ付かれて色んな意味で死ぬか。
いや、分かりきってる。
パトリックのお兄ちゃんの方が苦しませずに殺してくれる、筈。
けど。
「時間だ」
「すまない」
そして俺は、全力でパトリックお兄ちゃんの元へ走った。
子供の頃から俺の方が足が速いんだ、しかも俺は鍛えてる、座学が多いイーライに負けるワケが無い。
そう、圧倒的に俺の方が有利。
後はもうパトリックお兄ちゃんにバトンタッチするだけ。
つか、あの人がちゃんとイーライを御せないのが悪いんだし。
うん、俺は悪く無い、筈。
《そう、何か知ってるんだケント君》
「は、パトリック兄ちゃん」
《冗談だよ、仕方無いなぁ》
そうして、やっと追い詰めたケントとパトリックから、やっと事情を聞かせて貰える事に。
「マゾて」
「そう信じてるのは半々、少なくとも俺が情報収集出来る範囲では、ね」
耐え難きを耐えてると、マゾて。
「好きじゃないだろう、とかは」
「それも何割か、だとしても耐えられたのが凄い、ってのと」
と?
《王族がそれ程までに怖いか、脅してるからか》
「あー、不名誉、不敬じゃん」
「だからまぁ、お前が凄いって意見が殆どなんだよ。あの王族の行いに耐えた(色んな意味で)けど破棄された、凄い、そして可哀想なイーライ可愛い」
俺が下手に耐えたせいで、王族批判に繋がるなんて。
「ごめん」
《良いんだよイーライ、元はアレが原因なんだし》
「アレ呼ばわりて、あぁ、アレか、ドMだと勘違いしちゃったとか?」
その方が王族の名誉が傷付かないかな。
「その方が良いかな?」
《ケント君》
「はい?」
《今の、凄い可愛かったでしょう、イーライ》
「あー、まぁ、女の子だったら激落ちっすね」
「何の話を始めてるのかな?」
《こう、若干は自覚しているけど、まだまだ自覚が足りないんだよイーライは》
「あー、で、見つめ合うと素直にお喋り出来なくなっちゃった、と」
「もー、僕の事は良いから」
《しかも、こう優しい、優しさが滲み出て溢れて。はい、贈り物のリスト》
完全に無視されてる。
「おま、凄いなおい」
《そうなんだよ、君は君で防いでくれていたにしても、過激さが増す一方なんだ》
「で、他にも自分の耳に入って無い何かが有る筈だと、俺に詰め寄って来たワケだ」
「おう」
《優しいでしょう》
「うん、不味いっすね。何でも許してくれる、若しくはマゾ、破棄されたとは言えど王族と婚約してた有能君。不味いっすね、狙われる噂しかねぇ」
「止めを刺してるわ相変わらず若干無視だわ、置いてくな?」
「しかもこうして意外と親しみ易いし、不味いっすね」
《もう学園を去るしか無いと思ってはいるんだけど、ココでしか作れない思い出も有るだろうから、出来るだけココで過ごさせたいんだけどね》
「王族の沽券にも関わりますもんねぇ」
あれ、ケント、意外と考えてくれてる?
《いや、コレは本当にイーライの為だけだよ》
お、私の為に争ってくれてる系?
「イーライはどう思ってんの?」
「僕の為だけだと信じてるし、実際にもそうだと思ってる」
「脅されて、とか」
「寧ろ脅しから守ってくれてるし、今までも、彼女なりに守ってくれてた面も有るから」
「成程ね」
「巻き込んでたらごめんね」
「損しか無かったら文句を言うけど、まぁ、俺は別に迷惑は被って無いし」
《今日までは、ね。仲良く追いかけっこをしてたんだから、今日から君はイーライの巻き沿いを食らう筈だよ》
「何爽やかな顔をして言ってんの、ダメだよそんなの」
《自業自得、身を守る為とは言えど、もう少し何か出来たんじゃな?》
「それはケントの家は騎士爵だし」
「いや、絶対に何も出来なかったのかと聞かれたら、何かは出来てた筈。確かに友人とは言い難い行動は有った、ごめん」
「いやだってアレに逆らうのは」
「抗議しないでも、お前のフォローは出来た筈、なのにお前の言葉を無闇に受け入れて面倒を回避してた。すまん、マジで面倒だったんだ」
「でしょうよ」
「でも、俺なら誰かに助けて貰いたいと思うだろうから、ごめん」
こう優しいんだよね、ココの人って。
基本的にはマジでローズが例外だと思ってる、本当に、成熟度が全然違う。
「いや、寧ろフォローされてたら困った事になってたかもだし、今までの付かず離れずで良いよ」
《優しいねイーライは、こんな騎士爵程度、殺しても良いんだよ?》
「いぎだい」
「僕も面倒は嫌だし、今まで通りでお願い」
《イーライがこう言ってるから良いけど、上の言葉を鵜呑みにしまくってたら将来は絶対に重用されなくなるから、気を付けようね》
「ふぇい」
良い事を聞いちゃった。
困る程の贈り物を貰ってる、そして騎士爵のケントとは親しい間柄。
関係者が増えれば噂を欲する者も増える。
コレはもう、言わない手は無いでしょう。
《あらご機嫌ね、ルビー・バード》
『実は面白い事を知ってしまって……』
覚悟はしてた、してたけど。
『ケント、あの石仮面様と追いかけっこって、何が有ったんだ』
「いやー、何か急に話が有るとかで、誤解されたく無くて逃げたんだけどさ」
《ローズ嬢の兄上に捕まったんだって?大丈夫?》
昼の出来事が、下校時刻にはすっかり広まってんの。
出来るだけ人目を避けながら逃げ回った筈なのに。
「まぁ、何か、贈り物が酷い事になってるらしくて、何か知らないか聞かれたんだよ」
『酷いって、髪の毛入りラブレターとかか?』
《アレじゃない?最近だと血文字とか》
「まぁ、その合せ技とか、それより酷いのと。兎に角、悪化してるみたいで、気に掛けてやって欲しいって」
《王命?》
「いや、個人的に」
『近寄らないのが1番だと思うけどな』
《だよねぇ、王族には小さい火の粉でも、僕ら下位の貴族には致命的な火傷になるかもだし》
だから遠くで関わらずに居たけども、そう眺めてた相手が、もしかしたら大火傷するかも知れない。
それこそ、ココにも来れなくなる位に。
「一応、幼馴染だしさ、少しは何かしないと親父にプチ殺されるんだわ」
《あー、親同士仲が良いと面倒だね》
『どう守ってやるんだ?』
「まぁ、会う機会が有れば、不審人物が近寄って無いかな、程度」
《だよね、下手に護衛でもした日には、噂の的か刺されるか》
『命を大事に、だ』
「だよなぁ」
で、この中に裏切り者が居るとか思わないじゃんよ。
『よし、俺は少しアレしてから帰るわ』
「は?寮でヤれよ」
《飽きたんじゃない?》
『おう、じゃあなー』
年上の婚約者が居る友人、レオン。
相手は既に卒業してて、会うに会えず、だから欲求不満が溜まるのは分かるんだけど。
《ねぇ、出す瞬間に驚かしてやろ?》
「お前、悪趣味過ぎだろ、せめて始める前に脅かす程度にしないと、アイツの凶器でぶん殴られるかも知んないぞ?」
《あー、それは流石に嫌だし、不能になったら更に困るしね》
「そうそう、誂うネタ程度にしとこうぜ」
《わかった》
コイツの家、凄い過保護で人付き合いがクソ下手だったんだけど、本当にマシになってくれて。
お兄ちゃん嬉しいよルイ、兄じゃないけど。
「あれ、図書館の裏って」
《野外かぁ、ヤるなアイツ》
「いや、鳩ポッポ広場とか言われてる噂の茶会場、知らんのか?」
《あー、それココなんだ、気を付ける様に言っとこ》
お前の婚約者はしっかりしてるから、とっくに知ってるとは思うが。
「マジかよ、ピジョンブラッドじゃねぇか」
《何か、親しいっぽい?》
そのまま納屋へ。
いや、マズいだろ、女子と2人きりは。
「何で、ピジョンブラッドなんだよ」
《図書委員の時に知り合ったんじゃない?前に1度組んでるし》
「お前、本当に良く覚えてるな」
《凄いでしょ》
「おう、凄い凄い」
記憶と記憶を繋げんのがクソ下手だけど。
《ねぇ、どうする?》
「分かれて索敵後、小屋に近寄る」
《りょ》
で、本当に友人の不貞を目の当たりにするとか、思わないじゃんよ。
《何あれ、何なのマジで》
「でもまぁ、病気は気にしてんだろうな」
《何で止めなかったの?》
「あのな、あそこで止めに入って、襲われたとか言い出されたら大騒ぎになるだろ。だから、ピジョンブラッドのハンカチを証拠として手に入れたんだよ」
《焼くとか勿体無いよね、洗えば良いのに》
「向こうも警戒してんだろ、病気を」
《しなきゃ良いじゃん?》
「アイツ、今日ハンカチ忘れてたんだろ、で仕方無く」
《持ってたよ?婚約者から貰った刺繍入りのハンカチ》
「ぁあ、だからか、一応は後ろめたいんだろ」
《じゃあ、何でするのかな?》
分からないんだよね、利益を考えたら自己処理が最適なのに。
「それな、マジで分かんねぇわ」
《ケントでも分からないなら聞くしか無いけど、無視しても損は無いよね?》
婚約者も承知してるなら、僕らが首を突っ込む事でも無いし。
「いや、事情次第では俺とお前に有利に働く」
《石仮面様、イーライの事?》
「まぁ、だな」
《そっか、じゃあ協力する》
「やけに素直だな」
《だって婚約者にイーライは気にしてあげろって言われたから》
それは王族との婚約破棄後でも。
多分、利益になると思っての事だと思う。
「分かった、じゃあお前は飯に行ってろ、それと俺の飯の確保も。コレ届けに行ってくるわ」
《うん、任せて》
良い人間の見本、ケント。
彼も大事にしないとね。




