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工業高校生は学外ラブコメに必死!  作者: 辛咲むしょう
1章
4/13

4話

 それから部活はお開きとなり、各々荷物を纏めていた。

 今日の部活も悲惨だった。昭人と直人のナニが、未だに頭にこびりついて離れてくれない。

 だがしかし、俺は部活動からとある妙案を閃いていた。玲花ちゃんとの距離を縮めるには、ボードゲームで一緒に盛り上がれば良いのではないかと。名付けて、ボードゲームで仲良し大作戦!

「部長!ちょっと今日オレオレオを持ち帰ってもいいですか?」

 問われた部長は、一瞬首を傾げたものの、特に気にした様子もなく答えた。

「あぁ、構わないよ。次の部活の時にでも戻しといてくれ」

「ありがとうございます!それでは、お疲れ様です!」

「お疲れさん。存分に練習しておくといい」

 その言葉を聞いた昭人と直人が、ハッとした顔を浮かべ俺に詰め寄った。

「新吾!お前自分だけ上手くなろうって事だったのか!」

「え?いや別にそういう訳じゃ……」

「自分だけずるいよ、久我山!」

 ジリジリとにじり寄る2人が鬱陶しい事この上ない。

「あ〜、もうはいはい!用事が済んだらどっちかに渡すから!さっさと帰ろう!」

 2人を連れて、俺は部室を後にした。

 

 その日の晩。

 チャンスは思ってたより早く訪れた。我が家に再び玲花ちゃんが訪れたのだ。何やら昨日姉とファッションの話で盛り上がっていたが、その際に古着を何着かあげる話になっていたのだとか。

 そんな降って湧いた幸運を噛み締めながら、現在我が家は晩ご飯タイムだ。

 テーブルには3人分の焼きチーズドリアが並んでいる。

 ちなみに作ったのは俺である。まぁグラタンの元をマカロニ、切ったウィンナーと一緒に煮て、それをごはんに掛けて、スライスチーズを乗っけたらオーブンで焼くだけだ。

「どうよ、玲花ちゃん?」

 さりげなく料理出来るアピールをし、女子との話題?の料理で会話のきっかけを作ろうと試みる。まぁ料理といっても俺に出来るのはレンジでチーンとか、焼いてドーンとか、そういう簡単なやつだけど。

「ぐぬぬ……新吾くん、料理とか出来るんだ……。へぇ〜」

 玲花ちゃんにジトっと睨まれた。

 なんで!?

 そんなこんなで食事を終えた。見ると二人も食べ終わっており、食後の落ち着いた雰囲気が訪れる。

 玲花ちゃんは自身なさげな表情をしながら、俺におずおずと尋ねてきた。

「新吾くん、ご馳走様……。その、料理っていつから……」

 なるほど、料理苦手だったパターンか。それじゃあ料理トークは話題にならない訳だ。そうなったら……ここは女の子のプライドというものを傷つけぬよう、配慮した答えをするのが、イケる男ではなかろうか。

「お粗末さま。料理と呼べるような立派なものは作れないよ?」

 そう言って俺は軽く手を横に振る。

「いや普通にドリアとか作ってたじゃん。ムカつく〜!…………玲がご飯作ってあげたいのに」

 後半はボソッと呟くように言う玲花ちゃん。しかし、耳聡い俺は聞き逃したりしなかった。

 やっぱこの娘、俺の事好きじゃない?

 そんな考えがよぎる。が、今は会話中だ。謙遜して駄目なら、素直に言うのが良いのだろうか。

「ごめん。俺、料理得意なんだ」

 得意げな顔で言い直した。姉が吹き出した。玲花ちゃんが俺の足を蹴った。

 なんでだよ!?こっわ!女子との会話こっわ!

 この話題を続けるのは危険と判断した俺は、別の話題を探す。そこでよくやく仲良し作戦を思い出した。

「その〜、玲花ちゃん?話変わるんだけど、今暇ならボードゲームとかしない?」

「は?……ボードゲーム?」

 最初は怒気のこもった返答だったが、次第にそれを霧散していく。俺は安堵のため息を吐き、話を続けた。

「そうそう!俺部活でこういうので遊んだり……作ったりしてるんだよね!」

 ちょっと話盛りました。

 玲花ちゃんは目をパチパチと瞬かせ、テーブルに乗せられたオレオレオの化粧箱に視線を落とした。

「へぇ〜。新吾くんってそういう部活してたんだ。ちょっと意外」

「私、新吾の作ったゲームとか見た事ないぞー?」

「み、見せた事ないだけだって!」

 姉はニマニマしてるが、なんとか誤魔化す。

「これは今日部活で遊んだゲームでさ、簡単に出来るからぜひ良かったらって思って」

「うん、いいけど。未春ちゃんは?」

「私もやろっかな」

「オーケー。それじゃあ簡単にルールを説明するね」

 俺はルールを2人に教えて、テキパキと準備していく。

「それじゃあサイコロ降るから、出た目の枚数めくったら、すぐに読み上げてね」

 手番は玲花ちゃん、姉、俺の順だ。ゲームスタートだ!

 サイコロの目は2。俺はカードを2枚めくった。場に並ぶのは菓子と獅子。

「お、オレオレオ!」

「そうそう、そんな感じ!」

 部員間なら最初のお、の部分はミス扱いだが、不問とする。初心者には寛大な姿勢が重要だ。

「なるほど……。このゲーム楽しいかも」

「これからもっと面白くなるよ。それじゃあ次は玲花ちゃんがめくってね」

 玲花ちゃんは頷き、2枚カードを並べた。絵柄は尾が2枚。

「えーと、オレオレオオ!」

「アウトー」

「えぇ?今合ってたでしょ?」

「いやいや、オが一個足りてないよ」

「足りてたって。ねぇ、玲花ちゃん?」

「新吾くん。別にちょっとくらい良くない?ケチくさいよ?」

 えぇ〜、これ俺が批判される流れなの……。

「わかった……。じゃあいいから次行こ……」

 姉が2枚めくる。絵柄は獅子と俺。

「オレオレオオレオオレ!」

「あ、新吾くんミス!」

「ミス〜」

「俺の判定はちゃんとシビアなんだね?!」

 そんなこんなで30分後。2人もすっかり慣れ、ゲームは盛り上がりを見せていた。

「あ〜!未春ちゃんミスだ!」

「いやむずー!」

「あはは。じゃあいくよ?せーの!」

「せーの!」

 玲花ちゃんと息を合わせてカードを指さし合う。たったそれだけだが、心が通じ合えてるような感覚があって、なんだかこそばゆい。カードは共に同じ菓子のカードを選んでいた。

「ちょっと〜!それ選ばないでよ〜!」

「玲花ちゃんこそ!」

「新吾くんは尾でも取ってて!」

「それ絶対勝てなくなるやつじゃん」

「え〜?しらな〜い!」

 2人で笑い合う。楽しい雰囲気に呑まれ、俺の気分は最高潮を迎えていた。

 続く俺の手番。俺は経験者の意地でなんとか言い切り、玲花ちゃんへ番が回る。

「よし、いくぞ?……いくぞ?」

「ねぇ〜!焦らさないで!早くやって!」

「わかったって!」

 俺はカードを並べた。

 場には菓子、俺、尾、獅子、菓子、菓子、獅子の順でカードが並んでいた。

「オレオオレオオレオ――ってむりだよこれ!」

 玲花ちゃんはケラケラ笑いながら言った。

「はいミスぅ〜!じゃあいくぞ?せーの!」

 姉と2人でカードを指差す。俺と姉は、それぞれ違う菓子のカードを選んでいた。

「お、新吾いいとこ選ぶねぇ?」

「そっちこそ!それじゃあ取ったカード見せて?」

 姉はきょとんとした顔を浮かべたが、こちらに手持ちのカードを突き出した。

「えーと、それじゃあ4オレオだから、玲花ちゃん4枚脱いでね!」

「「は?」」

 リビングはしんと静まり返った。瞬間、俺は自らの失態に気づき、冷や汗が浮かぶ。2人からは射殺さんばかりの冷たい視線を注がれている。

「え……と。違う、ちょっとつい……部活の癖で……」

「お前、それはないわ〜」

「新吾くん部活で脱がせあったりしてるんだ。キモ」

「ちが……部活は男だけだから!セーフだから!」

「セーフじゃないよ。キモいよ。ちょっと今日はもう話しかけないで」

 玲花ちゃんはツンと俺から顔を逸らした。

 ――こうして仲良し作戦は、大失敗での幕引きとなった。

 それから少し経った頃。

「ねぇ、新吾?おーい」

 姉の呼び掛けで我に返る。見ると手を、俺の顔の前でヒラヒラさせている。

「あ、ごめん。なに?」

「新吾、玲花ちゃん狙ってんの?」

「へっ!?あ、それはえっと!なんというか……」

 それ本人前にして言う!?

 バッと玲花ちゃんの方を見る。玲花ちゃんはイヤホンをつけてスマホをタプタプイジっている。

「やっぱそうだったか。いつから?」

 そこではたと気づく。今ので完全にバレてしまったと。うちの姉はお節介焼きな節がある。そしてバレたら絶対に引っ掻き回される事が想像できたから、隠していたかったのだ。俺は迷ったが、諦めて答えることにした。

「いつからというか……何かワンチャンありそうだし……って感じだよ」

「ふーん。私、協力しようか?」

「ハイ、オネガイシマス」

 俺は素直に従った。下手に反発しない方が身の為であるからだ。姉は更にニタニタ顔を強め、わざとらしく首を傾げた。

「え〜?どうしようかな〜?じゃあ……お姉ちゃんって、呼んだら手伝ってあげるよ〜」

「なっ!?」

 姉の要求は非常にこっぱずかしいものだった。俺は幼少期から姉を名前で呼んでいる為、今更お姉ちゃんだなんて虫唾が走るのだ。

「ほらほら〜。言わなきゃ玲花ちゃんに言っちゃうぞ〜?」

「ぐぬぬ……」

 姉は楽しそうに急かす。俺は観念し、顔を伏せて告げた。

「お願いします……お姉ちゃん」

 姉に今日一の笑顔が咲いた。

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