表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
工業高校生は学外ラブコメに必死!  作者: 辛咲むしょう
1章
3/13

3話

 翌日の放課後。

 俺は自席で頭を抱えていた。

「どうすれば未春から玲花ちゃんを引き剥がして仲を縮められるか……」

 昨日はあれから玲花ちゃんと接する機会にも恵まれず、玲花ちゃんは姉に取られっぱなしだった。折角幸運の女神が舞い降りたと言うのに、これでは生殺しもいいところだ。

 しばし考え耽ってみたが、結局妙案は浮かばず俺は教室を後にした。

 廊下を進み向かっているのは、昇降口ではなく階下にある社会科準備室、もといBK部の部室だった。

 今日は部活の日なのである。

 俺は玲花ちゃんの件は一度置いておく事とし、部室へと歩を進める。目的地に到着すると、特に遠慮もなく扉を開きズカズカと中へ入った。

「遅いよ久我山!」

「ごめん、ちょっと野暮用で」

 声を掛けてきたのは青葉直人。小柄で少しふっくらとしたシルエットのオタク男子。俺と趣味が合う貴重な友人だ。

 荷物を適当に放り、空いてる席に腰掛ける。

 部室には、壁際の棚のあちこちにボードゲームの化粧箱が積み上げられており、中央には机がくっつけて置かれている。

 ボードゲームデザイン部。通称BK部。ボードゲームの研究や制作を行うのが主な活動内容である。かつては。今では先代が置いていったボードゲームで遊ぶだけの遊戯室へと成り下がっており、俺を含めた部員達の溜まり場だ。ちなみに略称のBK部とは、先代がボードゲームのB、クラブのKの2文字を抜き取り、名付けたものだ。周囲からは何故かバカ部とも呼ばれている……。

 俺は他の席に座る面々を見渡す。

「今日はフルメンバーですね」

 部員は俺を含めて4人。クラスメイトでもある片瀬昭人、青葉直人。そして唯一2年生の、鶴川拓也部長だ。

 「お疲れ、新吾。それじゃ4人揃ったし、早速何か始めよっか。何かしたいのとかある?」

 部長は爽やかな笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。

 鶴川拓也。拓也の名に恥じぬイケメンである。この学校では珍しい彼女持ちだ。

 しかしこの部長、五厘刈りなのである!

 今日も今日とて部長の頭はピカピカと輝いており、ルックスとのギャップでシュールである。どうやら春休み中に髪を染めていたらしく、新年度にイキってそのまま登校した所、生活指導に捕まりバリカンを入れられたのだとか。

 部長の頭に意識を取られ、やりたいボードゲームを思いつかずにいると、横から手が挙がる。

「そんじゃ部長、俺あれやりたいっす!オレオのやつ!」

「あぁ、オレオレオだね。いいよ」

 手近な棚から一つの小さな箱が抜き取られ、机の上に置かれる。部長は箱を開けると、小さなカード束から何枚かを抜き出し、場に並べた。

 そこにはオレオ(菓子)、オレ(俺)、レオ(獅子)、オ(尾)と書かれており、それを示すイラストが描かれている。

 このゲームは「オ」と「レ」の2音で構成されるカードを読み上げる愉快なパーティゲームだ。カードが並べば並ぶ程、読み上げ辛くてカオスになっていくので盛り上がる。

「ルールは簡単だから、やりながら覚えていくといい」

 そう言うと部長は、早速サイコロを振るった。ゲームスタートだ!

 手番は部長、直人、俺、昭人の順だ。

 部長がサイコロを振ったので、スタートは直人からだ。

「サイコロは2か。いいね。それじゃあいくよ?」

 ぺらりぺらり。場にあるのは尾と俺だ。

「オオレ!」

「クリアだね。それじゃあどんどんいこう」

 次は俺の番だ。直人が2枚めくる。追加の2枚は菓子と獅子の絵柄。

「オオレオレオレオ!」

 余裕たっぷりの宣言である。

「クリア……だね」

「まぁ俺だからね〜。オレオレ〜」

 チョけた態度で煽り散らす俺。楽しくなってきたね!

 次は昭人。俺は2枚めくり場に叩きつける。絵柄は尾と菓子。

「――っ!オオレオレオレオレオレ……あれ?」

「はい!雑魚乙ー!」

「正しくはオオレオレオレオオオレオ、だったね」

「どんまいだよ、片瀬!」

 ぐぬぬと表情に浮かべ悔しそうな昭人。

「じゃあせーのでカードを取ろうか」

「「「せーの」」」

 一斉に場のカードに指差す。

 ミスが出たらそれ以外の人がカードを選び、ブッキングがなければ貰えるのだ。本来は個人で集めたカードからオレオを何組つくれるか競うのだが、BK部のルールは特殊だ。

 3人の顔に邪悪な色が混じる。

「被りはなしだね。それじゃあオレオを作ろう」

 3人は取ったカードを突き出す。俺と直人が取ったのは菓子、部長は獅子のカード。

「じゃあ2オレオだから、2枚脱いでね」

 脱衣ルールである。自分を除いた全ての手持ちカードからオレオを作り、その数だけ脱がされるシステムだ。

「そんな……!嫌!やめて!」

 昭人は演技がかった女声で懇願した。

「ふっふっふっ。負けたからにはちゃんと出すもん出して貰わないと困るな。」

 ノリノリで返すのは部長。

「だってそんな……。恥ずかしいし……」

「焦ったいな。よし、お前達。そいつをひん剥いちゃいな」

「「いえっさー!」」

「ら……らめぇぇ〜!」

 昭人はキモい悲鳴を上げ、服を剥ぎ取られた。

 ――それから小一時間が経った。

 部室には全裸、全裸、パンツ一丁、半裸。地獄絵図だ。

 俺は冷静な心に立ち戻り、口にした。

「あの……。なんかもう、やめにしません?」

「「「……そうだな。」」」

 いそいそと脱いでた服に袖を通していく。そんな中、俺は心の中で叫んだ。

 やっぱこの学校頭おかしいよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ