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工業高校生は学外ラブコメに必死!  作者: 辛咲むしょう
1章
13/13

13話

2章開幕です!

 翌日の朝。

 誰も起きてこない内に朝の支度を済ませて家を出た俺は、駅のホームに立っていた。当然、昨晩の出来事で眠れなかったからだ。

 ……どうしたもんかねぇ。あんな事があった後じゃ玲花ちゃんとまともに話できないし、かといっていつまでもこのまま、なんてのも居心地悪い。

 悶々としてる内に電車が到着し、混雑している車内へと乗り込んだ。

 ……ん?なんか前もこんなんあったような……。

 プシューという音と共に扉が閉まると同時、俺の背中に柔らかい感触が伝わった。

 お……おぉおおおお!

 閉まる扉ギリギリのとこにいた人が身を捩じ込んだ事により、中にいた乗客の密着度が上がったのだろう。後ろにいる恐らくは女性であろうその胸が、俺の背中にぴったりとくっついているのだ。

 ふぉおおおおお!

 走る電車がカーブする度に車内が揺れ、背中にあたる幸せな感触が強まる。

「……や……んご」

 なので俺は踏ん張る力を弱め、敢えて揺れに身を任すことで合法的に女性の胸の感触を堪能する。

「くがや……し……ご」

 お、そろそろ次のカーブに差し掛かるぞ。

「久我山新吾!」

「は、はぃごめんなさいぃ!」

 突然後ろから名を呼ばれた俺は、バレたかと思いビシッと気をつけの姿勢になり、謝罪の言葉を口にした。

「や……やっと気づいた……」

 恐る恐る後ろを見ると、俺の背にくっついてた女性……ではなく女子、成瀬汐音と目が合った。

「な、成瀬……さん?」

「あ、はい……その、おはよう……ございます」

「お、おはよう……」

 挨拶を返した俺は、ふと先程感じたデジャブに合点がいった。と同時に、一気に緊張が体を駆け巡った。

 や……やってもうたぁ〜!!そうだよ!この早い時間だと成瀬さんと同じ電車になってしまうじゃないか!しかもまたしてもセクハラまがいの事までやっちゃってるしぃ〜!!

「あ、えっとその〜、先週ぶり……だよね」

「あ……!はい、そうですね、先週ぶり……です」

 そして沈黙。

 ……んんん気まずいよぉ……!え、てか今成瀬さんから話しかけてきたよね!?やっぱさっきのバレてたのかな!?やばいどうしよう!?

 俺は軽くパニックに陥りながら、謝罪と言い訳を頭の中でシミュレーションする。……そこでふとある事に思い至る。

 でも意外とこれ……バレてはないんじゃないか?……そうだよ!そもそも電車内がギュウギュウ詰めだから仕方なく当たってたのであって、決してやましいことをした訳じゃない!ここは敢えて知らんフリして墓穴を掘らない様に接するのが最善の行動じゃないか!?

 俺は意を決し、涼しげな顔を作って口を開いた。

「えっと……俺になんか用でもあったかな?」

 すると成瀬さんは、俺の顔に面食らった様な表情を見せ、一拍置いてから答えた。

「あの……その……せ、先週会った時その、な、なんでも言う事を聞いてくれる……って」

 その言葉で、俺は再び凍りついた。

 そうでしたよね!!先週再会してすぐセクハラかました事、怒ってない訳ないですよね!?

 俺はわなわなと震える唇を動かし、声を絞り出した。

「そ……その節はほんとすみませんでした……。な、なんでも言う事聞くというのはその、忘れてません。どんな事でも甘んじて受けさせて貰います……いえ、受けさせてください……!!」

 そう言うと、成瀬さんは軽くテンパった様子で手をパタパタさせた。

「あ……いえ!ほんとにそれはもう怒ってないですから!さ、さっきの事も……!な、なので畏まらないでください……!」

 さ、さっきの事って……!しっかりバレてんじゃねぇ〜か!

 俺は体を半転させ、成瀬さんの方に体を向け、頭を下げた。

「ほんと、重ね重ねすみませんでした。改めて、何でも言う事聞きますのでどうかお許しくださいませ」

 すると成瀬さんは、その綺麗な顔をボンッと音がする様に顔を赤くさせた。

「な、ななななな!なんでも……!あ……いや、その!」

 成瀬さんは目を回し、完全にオーバーヒート状態だ。

「わ!お、落ち着いて!ね!」

 俺は必死に成瀬さんを宥めた。それから数分、なんとか落ち着きを取り戻した成瀬さんは、依然赤いままの顔を下に向けたまま口を開いた。

「その……く、久我山新吾の連絡先……し、知っておきたいな……って」

「れ……連絡先?」

 思ってもなかった言葉に、俺は首を傾げて返した。

「い、いえ!その……や、やっぱなんでもないです……」

「あぁ!違う違う!その、別に嫌とかじゃないから!」

「……ほ、ほんと?」

 軽く潤ませた瞳をこちらに向けてくる成瀬さん。……チクショー。やっぱ可愛いな。

「ほ、ほんとほんと!そんなんでいいのかなって思っただけだからさ!」

 俺が尋ねると、彼女はコクンと小さく頷いた。俺は手早くロインのQRコードを表示させ、成瀬さんへ向けた。

「こ、これ俺のQRコードだから」

「は……はい……!」

 成瀬さんは自身のスマホを取り出し、俺の画面のQRコードを読み取った。そして少しすると、俺のスマホが震えた。見ると、成瀬さんからスタンプが送られてきていた。

「そ……それ、しおの連絡先……ですので。それじゃしおここだから……ま、またね……!」

 そう言うと、成瀬さんは停車駅でそそくさと降りて行ってしまった。俺はまたしても呆然とそれを見送った。そして電車が再び走り出した頃、ロインで成瀬さんとのトークルームを開いた。そこには可愛らしい動物のスタンプで、『気にすんな!どんまい!』と書かれていたのだった。

 ……天使かよ。

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