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工業高校生は学外ラブコメに必死!  作者: 辛咲むしょう
1章
10/13

10話

 玲花ちゃんを引き連れてやってきたのは、駅から程近い雑居ビルだった。

「ついた!ここだよ」

 玲花ちゃんがガバッと自分の胸元を手で庇い、俺から一歩身を引いた。

「何ここ!?玲になにする気!?」

「いや変な店じゃないからね!?……とにかくついてきて!」

 警戒する玲花ちゃんを連れてビルに入った。

「いらっしゃいませー!」

 目的地の入り口を潜ると、明るい店員さんの挨拶が出迎えた。店内には壁のラック一面に広がるボードゲームのパッケージの数々。そう、ボードゲームカフェである。

「なるほど……。新吾くんっぽいね」

「カフェのあとにカフェってのもあれだけど、ここなら楽しく時間潰せるでしょ?」

 店員さんに案内され、小さめのテーブルに着く。ボードゲームカフェといえば、他のお客さんと混じって遊ぶフリーと、身内だけで遊ぶプライベートとがある。当然、今日はプライベートを選択。

「ボードゲームってこんなにいっぱいあるんだね。でも玲、ルールとか殆ど知らないよ?」

「大丈夫。もしわからなければ店員さんがルールを教えてくれるし、今日は俺の知ってる簡単なゲームにしようと思う」

 そう言って席を立つと、2人用ゲームの棚から一つのゲームを取り出した。

「おばけの……チェス?」

「これはゴースツって言ってね、善いおばけと悪いおばけを動かして駒を取り合う、心理戦豊富なチェスみたいなゲームだよ」

「へぇ〜。なんか難しそう……」

 不安がる玲花ちゃんにわかりやすく説明する為、俺は箱から中身を取り出す。中には6×6のマスに区切られたゲーム盤と、白いおばけの駒が8つずつ入っている。

「8体のゴーストが手駒なんだけど、背中側を見てみて」

「なんか白いマークと黒いマークがあるね」

「白は善いゴースト、黒は悪いゴーストなの。勝つには、相手の善いゴーストを全部取る、逆に自分の悪いゴーストを相手に取らせる、あとは善いゴーストを相手陣地にある出口から盤上に出す、このいずれかを達成する事だよ」

「へー。でもそれ相手にバレないの?」

「背中側にマークがあるから、相手から見たら、どっちのゴーストか見分けつかないでしょ?」

 そう言って、自分の駒を適当に配置してみる。

「あ、ほんとだ。全部同じゴーストに見える!」

「でしょ?そしたら玲花ちゃんも自分のゴーストを好きに置いてみて。ちなみにゴーストは、全部前後左右に1マス動かせるからね」

 簡易的な説明を終え、2人とも準備が整った。ゲームスタートだ!

「えっと、これかな。うわ、黒のゴーストじゃん!」

「取ってくれてありがとう。じゃあ俺はこれを取ろうかな……うわ!こっちも黒だった!」

「取ってくれてありがと〜」

 ゲームが始まって5分程経ち、玲花ちゃんは俺のゴーストの黒を2、白を1取っている。俺は玲花ちゃんのゴーストの黒を1、白を3取っている。俺が優勢だ。

 玲花ちゃんがゴーストを前進させてくる。出口に近づかれては面倒なので、俺は自陣のゴーストを盾として前に立ち塞がせた。

「うーん、取っちゃうね!……ってまた黒!?」

「プレゼントフォーユー。これであと1体だね」

「なんで黒ばっか取らせるの!」

「えぇ……取ってるの玲花ちゃんじゃん」

「そーだけども!」

 それから数ターンが経過し、勝負は完全に俺有利な盤面になった。

「玲花ちゃん……俺の黒取っても負け、自分の白取られても負けのダブルリーチだね」

「むむむ……」

 玲花ちゃんは逡巡の後、自軍のゴーストの一体を後ろに下げた。確定だ、あいつが白のゴーストに違いない。予め脇から前に出していたゴーストを横に動かし、玲花ちゃんの下げたゴーストを追いかける。

「その逃がしたゴーストを取ったら俺の勝ちかな」

「ふーん、でもこれ黒のゴーストかもよ?」

 下手っぴなブラフを張りながら、尚も後ろにゴーストを逃す玲花ちゃん。それを追い詰めていく俺のゴースト達。ターンが進み、じわりじわりと端に追い詰められていく。

「もう!新吾くん意地悪!」

「取った!」

 俺はとうとう逃げ続けるゴーストの駒を取る事に成功し、その裏を見る。

「なっ!?黒だと!?」

「へへ〜ん、だ!」

 慌てて盤面を確認する。そこには、ゴーストを追うために玲花ちゃん側に詰め寄った俺のゴーストと、中央でポツンと放置された玲花ちゃんのゴースト。

「まさか!?」

「じゃあ出口に向かっちゃうね」

「ま、待て〜!」

 ゴーストを慌てて後退させ、玲花ちゃんのゴーストに向かわせる。しかし、最早追いつけるはずもなし。玲花ちゃんのゴーストは出口に到着し、盤外へと出てしまった。

「やった〜!勝った〜!」

「くっそ〜……このゲームの醍醐味、ブラフと心理戦を既に物にしているとは……」

「いや、新吾くんがバカみたいに引っかかっただけだからね?」

 完敗だ。

 そんなこんなで時間は過ぎ去っていき、ひとしきり盛り上がった所で丁度、映画館へ向かう時間となった。

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