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工業高校生は学外ラブコメに必死!  作者: 辛咲むしょう
1章
1/13

1話

はじめまして。辛咲むしょうです。

ふとラブコメを届ける作家になりたいと思い立ちまして、原稿を書き始めました。

書き上げたら新人賞に出してみようと思っております。

しかし新人賞は作家の登竜門と聞きます。なので応募前に意見をお聞かせ頂きたく、投稿いたします。

 結論から言おう。工業高校生に出会いなど殆どないのである!

 4時限目の授業を終えた教室は喧騒に包まれている。

 俺は購買で買ったパンを頬張りながら、周囲をジトっと一瞥する。

 まず、男しかいないのである!

 なんでクラスに1人も女子がいないんだよ!工業高校は男女比7:3位だって聞いてたのに!実際の男女比は9.9:0.1、ウチのクラスに至っては10:0じゃんか!

 不満の声はあわや口から出掛かり、俺はパンを更に頬張った。

 出会いが無い理由その1。男女比率の偏りが酷い。結果工業高校は恋愛から隔絶されており、恋愛を阻害する牢獄と化しているのだ。

 ブスッとした表情でパンを口に運んでいると、そんな俺の様子を見てか、クラスメイトの一人が近づいてきた。

「辛気臭い顔してどーしたよ新吾。禁欲中?」

 話しかけてきたのは片瀬昭人。天然パーマがフワッとキマった塩顔なイケメン。高身長で運動神経も申し分ない。なにかとスペックは高い、俺の友人だ。

「でも新吾よ、禁欲ってむしろ体に悪いんだぜ?3日もすれば男の玉はパンパンになるらしくてな、あんま続けると玉が破裂して一生子供作れなくなるんだってよ」

 しかしこの男、バカなのである!

 昭人の話を受け流しつつ、更にパンを齧る。バカ丸出しの禁欲否定説はしばらく続き、俺は話を聞いてるようなそぶりだけ見せながらパンを齧り続ける。

 突然、後ろから肩をガシッと組まれた。振り返って見ると、それは屈強な体つきをしたクラスメイト。

「どうした新吾。ストレスか?じゃああれだな、ウェイト部入る?」

 中里秀樹。あだ名はひでちゃん。ウェイトトレーニング部に所属する脳筋ゴリラで、何かにつけてはウェイト部への勧誘を行なう癖がある。パンチの効いた俺の友人だ。

 首を横に振る俺。しかし新入部員候補は逃さんとばかりに、ひでちゃんは肩を組んだ腕の力を強める。そして空いたもう一方の手で何かを取り出すと、その中身をざっざっと振りかけた。俺の水筒に。

 ……この人、断りも入れずに何やってんだ。

 見ると茶色の粉が水筒の中に浮いていて、少しずつ中のお茶を濁らせている。プロテインパウダーだ。

 俺はひでちゃんに対し肩越しに冷ややかな視線を送った。

 無論、こいつもバカなのである!

 視線に気づいたひでちゃんはハッとした表情を浮かべ、ようやく俺から離れる。そして手を合わせて言った。

「悪い新吾。バニラ味の方が良かったか?」

 味の問題じゃねーよ!てかよくみてから入れようね!これお茶だからね!どっちでも不味いからね!?

 内心でツッコミながら最後のひとかけらを口に突っ込んだ。

「なぁ、結局新吾はどうしてブスッとしてんだよ。ブスだからか?」

「ふぁれあぶふひゃい!(誰がブスじゃい!)」

 …………。

「なぁ、新吾。途中から気になってはいたんだが、なんで口の中のパンを処理せず口に入れ続けてるんだ?」

 俺、久我山新吾。この春から畑無工業高等学校に通う、バカなのである!

 完全に忘れていた。いやほんとに!たまにあるよね。……あるかな?

 途端に恥ずかしさが込み上げてきて、俺はリスのようにパンパンになった口の中のパンを呑み下す。

「ごふっ!」

 やばい、喉に詰まった。

 詰まったパンをどうにか落とそうと胸をバンバン叩く。後ろ隣では、ひでちゃんが同じく自身の胸をバンバン叩いている。

 ドラミングで共鳴してんじゃないよ!

 喉に詰まったパンが通過する兆しはない。次第に顔から血の気が引いていく。

「新吾!これ飲め!」

 昭人が水筒を手渡してくる。意識が遠のき掛けてきた俺は、それを受け取り一気に喉へ押し流した。

「ごばふぁ!!」

 プレミアムチョコレート味のパウダー緑茶が口いっぱいに広がり、反射的に吹き出した。ついでにパンも吹き出た。

「うわ、きったね!」

「ふむ……。喉筋がまだまだだな」

 俺は荒々しく呼吸を繰り返し、なんとか窮地を脱した。

「はぁ、はぁ。君らねぇ、人の窮地にちょっとは心配してくれてもいいんじゃないの?!」

「きったね〜もんはきったね〜よ。さっさと掃除しなしゃい」

「やはり筋力不足……。ウェイト部、入っとくか?」

「入らないよ!喉の筋肉鍛えたいから入部したいです!なんてまるで俺がバカみたいじゃんか!」

「「それはそう」」

 出会いがない理由その2。工業高校生は、バカばかりだからである!

 以上の事から再度結論を言おう。工業高校生に出会いなど殆どないのである!

 俺は掃除道具を持ってきて、汚した机や床を掃除していく。そして粗方拭き終わると、視線を窓の外、太陽が煌めく青い空に向けた。

 ……それでも俺は恋をしたい、彼女欲しい!こんな男ばかりバカばかりの腐れ青春から脱却し、青い青春を謳歌したい!

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