5.お金稼ぎを始めました。
「ユリアンリさん、お金がすぐに必要というのならば魔物討伐などの依頼を受けるといいかもしれません。危険はありますが、ユリアンリさんは騎士として実力があるのでその方がお金を稼ぐことが出来るかもしれません」
ユリアンリが騎士団の事務員に騎士の仕事以外に何かお金を稼ぐ仕事をしたいことを告げれば、同情した様子でそう言われた。
……ちなみに私の所属している団の団長にも告げてある。流石にそのあたりには言っておかないと他の仕事など始められない。
騎士として勤務後、そして休暇日にしかお金稼ぎは出来ないので確かに魔物討伐の方がやりやすいかもしれない。なりふりは構ってはられないけれど、王国騎士の評判を下げるような真似はしたくない。
ただ私はそこまで魔物討伐に慣れているわけではない。騎士としての仕事で魔物討伐を行ったことはあるけれど……、騎士になって日が浅いので経験が少ないのだ。
だけれども、自分の未来を切り開くためには自分で行動するしかない。
「はい。やってみようと思います」
「それがよろしいかと。また他にもユリアンリさんに任せられるものがあったら任せるようにしますので、ぜひ検討してみてください」
「ありがとうございます!」
こういう風に私の状況を思いやってくれる人がいることに、私は恵まれているなと思った。
両親からの手紙が来た日、どうしたらいいか分からなくて自棄になってお酒を飲んでしまっていたけれど……、そんな風に自棄になってしまう必要なかったなと反省した。どうなるか分からないことが沢山あって、私の未来は明るいとはいえない。
もしかしたら結婚を強行されるかもしれない。でも私は周りに恵まれている環境があるのだ。なら、やれることはちゃんとやった方がいい。
私はそう考えて早速行動することにした。
今日は騎士の仕事もあったので、疲労はあった。でもだからといってすぐに行動しないのは駄目だ。どんどん悪い未来につながっていくかもしれないから。
そういうわけで、装備をそろえる。流石に騎士団の服を着たまま業務外の仕事をやるわけにもいかない。ちょっとした出費にはなるけれど、仕方がないことだもの。
私は収納の魔法具である《アイテムボックス》を私的には持っていない。騎士としての仕事で使ったことはあるけれど、そこそこ高価なものだから新米騎士の私は持ち合わせていない。
だから魔物討伐をするにしても小ぶりなものにしないと。解体して持ち運ぶのも一苦労してしまうから。
王都の出入りするための門で手続きをして外に出る。
王都の周りはそこまで魔物が多いわけではないけれど、少なからずいる。騎士や冒険者たちで定期的に討伐を行っているので、王都の周りはそこまで魔物は多くないけれどね。
マリアージュ様のおさめているフロネア伯爵領は、王国内でも魔物が多くいる地域だって聞いたことがある。だからフロネア伯爵領出身の騎士や冒険者は活躍を見せている。
私の実家の領地はそこまで魔物が多くない地域だから、どれだけ魔物が多いのか想像もつかないけれど。
「ふぅ」
小さな魔物を倒して、解体を済ませる。
騎士になってから魔物の解体も前より出来るようになった。騎士として真面目に取り組んでいてよかったと思った。今まで経験してきたことがこうして先へと繋がっていくんだなと嬉しくなった。
それにしてもこれだけ小さな魔物だと売るとどくらいだろうか? 一応解体も私の中では上手く出来た方だと思うけれど……、でももっと上手にならないと高く売れない。
高く売るためにはもっと効率よく解体を出来るようにならないと。
とはいってもどこにでもいるようなこの魔物を売ったところでそこまで借金返済の糧にはならないかもだけど! だけど、何事もコツコツやってこそよね。
魔物討伐と解体を少しずつ進めていたら、あっという間に空は暗くなっていった。騎士寮には遅くなることは伝えてはあるけれど、あまり遅くなりすぎると明日の仕事に支障をきたしてしまうもの。
「よし、一旦帰ろう」
独り言を告げて、私はそのまま王都内へと戻った。
魔物の素材は夜だと売れる場所がないので、一旦、騎士寮で保管してもらうことになった。事情は説明してあるので、保管もしてもらえるようになったのだ。
明日になったら何処に売りに行くのが一番良いかなどもちゃんと調べよう。
あんまり何も考えずに売り払うと、損をしてしまうかもしれない。
それにしてもどれだけの足しになるかな? どのくらいこうやって魔物討伐をし続ければ借金を返せるだろうか。
子爵家の領地に帰るために休みの申請もしなければならないし……。ええっと、明日は何から手を付けようかな。
そうやって考えていると、流石に仕事の後に魔物討伐も行ったことにつかれてしまって、すぐに眠ってしまった。