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チャプター2 シークエンス3 ゲンさんの特訓

橋の下につくなりゲンさんが出迎えてくれた、ゲンさんは魚を釣りに行ったり物資を調達するために拠点からは離れていることも多いが一人で拠点である橋の下にいるときは物陰に隠れて静かにしていることが多いらしい、通報されるリスクを減らすためだ

一見誰もいない橋の下で、積んである段ボールの類の中からゲンさんはランプの魔人のようにどこからともなく現れて、フランクに挨拶をしてきて僕はびっくりした

ゲンさんも廃工場での一件を根に持っている様子はなかった

僕はゲンさんに取材に来たという事情を説明し、菓子折りと醤油をわたした、ゲンさんは喜んでくれた

ゲンさんたちは醤油を使うとしたら、普段は納豆のパックの中に入っているようなプラスチックの小袋を運よく手に入れたときだけで、僕がコンビニで買ってきたようなボトルタイプの入れ物から醤油を使えることにとても感謝してくれた



今日は萩原と明日の面接の為の特訓をするらしい、その様子も撮影させてくれることになった


ゲンさんが面接官役となって萩原の面接をコーチするようだ


ゲンさん「PRみしてみろよ」

萩原、履歴書を手渡す

萩原「これでお願いします」

ゲンさん「じゃ、やってみろ」

萩原「おし、、この度はご面接の機」

ゲンさん「おいおい、何いきなり声出してんだ、ストップストップ」

萩原の挨拶をゲンさんは遮る、萩原はきょとんとしている

ゲンさん「お前さ、それどこで始めてんだよ」

萩原「だっていきなり自己PRとかおかしくないすか挨拶から」

ゲンさん「ちがうちがう、場所だよ、いきなり部屋の中じゃない入ってくるところから」

萩原「入ってくるところから部屋の外で面接するんですか、、、っえ?」

萩原は数秒頭をひねる、その様子をゲンさんはうなずきながら見ている

ゲンさん(こういう風に自分の頭で考えさせることが大事なんです)と僕にだけ耳打ちをしてくる

萩原も真剣な表情で考えている、そして何かを突然ひらめいたように声をあげる

萩原「あっそうか、一次面接だから!あっ一次面接ってそういうことですね?二次になると中に入れるんですよね!ドラゴンボールみたいに最初は門番的な人が居て」

ゲンさんは違う、違う、と何度も繰り返し指摘していたが、萩原は自分のひらめきに興奮していてゲンさんの声に耳を貸していない

萩原「やっぱ、俺バカな大学だったから、会社の入り方とか授業でやってくれなかったしわかんねえから、そんなシステムがあったのか」

ゲンさんの違うという声がだんだん大きくなる

萩原「っえじゃあナンすか?その門番的な奴を認めさせて二次面接なんすよね、まあ門番だからたいていはパワー系っすよね、ガードマンとか警備員的な、社員守んないといけないしっでそいつらを認めさせるんすよね」

ゲンさん、無表情で萩原に近づき殴る、萩原は倒れる


ゲンさん「おまえ黙れよ」


ゲンさんは倒れている萩原に侮蔑のまなざしを向けている

萩原は立ち上がり、きょとんとしている

ゲンさん「扉をノックするよな」


ゲンさんは得意の身振りの大きなジェスチャーで萩原にノックが必要なことを伝えようとする

何回か体を動かして伝えようとするが萩原は要領を得ていない、ゲンさんの息が上がりそうになってきた

ゲンさん「おまえ、おれ、このこと前言ったよな」と萩原を問い詰めると

萩原はちいさな声でうつむいて「っあ、あれか」とそっとつぶやいた

ゲンさんは萩原のつぶやきには気づかなかったようだ

ゲンさん「ノックの仕方を教えたかっただけだから、門番とかないから」

萩原「・・・」

ゲンさん「部屋はいるときにノックするから、やれよ」

萩原「はい」

萩原はノックをしようとする、とても動作が不安げでゆっくりだ

ゲンさん「お前ノックの回数3回やからな」

萩原「すいません」萩原、すぐに3回ノックする

萩原はノックの回数も覚えていなかったんだと思う


ゲンさんは萩原の3回のノックを聞くと反射的に面接官役として元気に愛想よい声で「はいどうぞ!」と入室を案内するが、萩原は突然のゲンさんの変化に戸惑っている

ゲンさん「おまえはやく失礼しますって言えよ」

急にゲンさんは素のゲンさんに戻って萩原を叱咤する

萩原「失礼します!」

萩原はビクビクとおびえながら声を発して入室する




その後の面接はあまり見ていて気分のいいものではなかった、萩原はちぐはぐで時折、失敗したり、ゲンさんがそれを訂正したりしながら面接の特訓を続けた



ゲンさんは一通り萩原への稽古をつけ終えるとインタビューに答えてくれた


ゲンさん「まず覚える、こういうのは体で覚えなきゃ、本番はもっと緊張しますからね、それを緊張と思わないぐらいのプレッシャーと負荷をいま経験しておく必要ありますから」

ゲンさん「受かりに行くというよりは落とされない面接」

ゲンさん「就職ってのはね、結局はね、決まる時はスパッと決まるんすよ」

ゲンさん「短い面接で全部が全部判断できるわけじゃないから、人採る側はある程度はパチンコみたいなもんですよね」

ゲンさん「採る側からしたらこんなんもんギャンブルですから」

ゲンさん「だからうちらはもう入ったもん勝ち、いちいち無駄なことしない、バレずに入ったら勝ち、それが俺の就活」


ゲンさんは僕の持ってきた菓子折りを食べながらそうインタビューに答えてくれた


ゲンさんがインタビューに答えている間その背後で萩原は空気椅子をしながら自己PRを暗唱させられている

ゲンさんはインタビューの途中でもちゃんと萩原の自己PRを聞いていて、萩原がつっかえると「あと3セットやり直し」などと怒鳴ったりしていた




インタビューを終えると二人は休憩していた、特に萩原は空気椅子をしていた為に体力の消耗が激しそうだった

萩原は自分の分のお菓子が半分より少し少ないことに気づいて不満を感じているようだったが、おいしそうにお菓子を食べていた

ゲンさんは昼寝していた


しばらくすると萩原はゲンさんに提出書類について相談を始めた


萩原「ゲンさん、こういうのも口ではいわないけど書いておこうかと思うんですけど、どうですか?」

萩原は履歴書の特技の欄に何を書くかで悩んでいるようだった、枠内にはC言語、C++、Java、C#、等のプログラミング言語と一つ一つの言語の習得度やどのような成果物を作ってきたかが書かれていて枠内はギチギチになっていてまともに見れたものではなかった

ゲンさんは昼寝を起こされて、眠そうな目をこすりながら、履歴書を一瞥するとめんどくさそうに

ゲンさん「どうだろうなー、、、こういう開発のことは俺わかんないからなー、、、どうせ面接の人もわかんないから、シンプルなほうが良いよ、いつも通りシステムエンジニアじゃダメなの?」と答えた

萩原「でもなんか特技、システムエンジニアって書くのはなんか」

ゲンさん「あのさ、面接をやる人っていうのはさ、人事の人だろ」

ゲンさん「人事の人はさ重要なポジションだから若い人はあんまりやってないんだよ」

ゲンさん「っで、おっさんは開発ツールの名前とかわかんないから、シンプルにシステムエンジニアってでっかく一言書いてるほうが盛り上がるんだよ」

萩原「そうなんですね」

萩原はどこか不服そうだったが、一応は納得しているようだ

ゲンさん「おまえ盛り上がったら面接一発だぞ、それにもしも相手もその開発ツールとかに詳しかったらややこしいことなるだろ」

萩原「確かにそうですね」

萩原は納得して、履歴書の特技の欄をシステムエンジニアとシンプルに書き直した



ゲンさんと萩原の面接対策はだいたいそんな感じで終わった



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