表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/55

第06話 故郷に帰ったらみんなから勧誘されました(2)

夜にも更新します。もしよろしければ、ブックマークをお願いします。

「フィーグさん。私がパーティを組んであげてもよくってよ!」


「オレのギルドに是非!」


「お兄ちゃんは誰にも渡さないの!」



 俺に差し出された三つの手。

 謎のツンデレを演じている冒険者の少女リリア、冒険者ギルドマスターのフレッドさん、そして妹のアヤメ。


 俺を勧誘してくれるのは嬉しいけど、どの手を取るべきか?


 アヤメの学費を考えるとフレッドさんの手を取るのもありだろう。

 ギルドの職員として働けば給料の支払いも期待できる。


 だけど、俺は冒険をしたい。

 クエスト達成で報酬も得られるし、ダンジョンの宝を手に入れれば一攫千金も狙えるだろう。


 何より冒険はワクワクする。

 俺のスキルは人の役に立つ。

 色んな冒険をして、俺のスキルを有効に使っていきたいし、そうしていけば、いつの日か……強いパーティを作れる。世界最強のパーティだって夢じゃないはずだ。


 冒険を考えるとリリアだろう。

 彼女のことをよく知らないけど、これから彼女のことを知っていくことはできる。


 アヤメを選べば、その寂しさを癒やせるだろうけど、それでいいのか?

 ——結論は出ず、食事をとりながらみんなと話をすることにした。



「……さっき言ったとおり俺は勇者パーティを追い出されたわけだが」



 改めて説明すると、どん、とテーブルに手を突き、勢いよく立ち上がるアヤメ。



「お兄ちゃんを追放なんて何考えてるの! ほんと、勇者にがっかりなの。憧れだったのに」


「まあまあアヤメちゃん、落ち着いて。オレも紹介した手前あまり強く言えないが、おかしな話だとは思う。聞くところによると、最近の勇者の行動は目に余ると言うし」



 フレッドさんがそう言うと、次にリリアが口を開く。



「そうですよ。いくら勇者だからってフィーグさんを追い出すなんて、おかしいと思う」



 まるで俺のことを深く知っているかのようなリリアの口ぶりに全員の視線が集中する。

 たまらず、フレッドさんが聞いた。



「リリアはフィーグのこと知ってるの?」


「あ、いえ、噂で——」


「確かにフィーグのくらい噂に流れるか。それでフィーグはどうしたいんだ?」


「……俺は冒険者を続けたいと思います」



 勇者パーティにいた時のことを思い出す。


 戦闘中、俺がパーティのみんなの指揮をすればもっと上手く効率的に敵を倒せるのにと、そう思う事が多くあった。

 でも、勇者アクファは俺にわずかな提案すらもさせてくれなかった。


 もしできるのなら俺の望むとおりのパーティを作って、今までできなかったことをしたい。

 戦闘も効率化して、もっと強いパーティを作りたい。


 とりあえず、目指すのはSランクパーティ……いや、中途半端はよくないから、夢は大きく——。



「できれば俺はみんなをサポートして、強いパーティを作っていきたい。

 それこそ、勇者パーティにすら負けないような世界最強のパーティを」



 ここまで言うと、フレッドさんが声を上げる。



「じゃあ、三ヶ月後、王都で冒険者パーティ同士で対抗する剣闘士大会がある。

 非公式な大会ではあるけど、歴戦の強者や勇者パーティも参加するという噂がある。

 それに出て腕試しをする、というのも目標の一つで良いかも」


「そんなものがあるのですね。聞いたことがありませんでしたが、それまでパーティのメンバーを揃えられれば出場できますね」


「ああ。確かにフィーグぐらい力があれば、ギルドに閉じ込めておくのももったいないな。

 ……そうだ、オレも冒険に出かければいいじゃないか。

 よしフィーグ、一緒に冒険に出かけよう!」


「フレッドさん、ギルドはどうするの? ギルドマスターでしょ」


「あ、えーっと——」



 フレッドさんは目を逸らし口笛を吹き始めた。

 次に口を開いたのはリリアだ。



「冒険者になるというのは、私も賛成です。もちろん、パーティを私と組んで下さってもよくってよ!」


「……あいかわらず、少し言葉使いがおかしいが、まあいいや。リリア、どうして初対面の俺をそこまで信用しているんだ?」


「そ……それは——。お願いしたいことがあって」



 なるほど。依頼があるから、お世辞を言っていたのかな? けど、そのツンデレ口調はいらないと思うが……。

 ちょっと変わったところはあるけど、悪い人でも無さそうだし俺にできることがあるならリリアの力になってもいいかも。


 次にアヤメが話し始める。



「学費のために、お兄ちゃんが我慢してきたのなら、お兄ちゃんはやっぱり、自由にして欲しいかも。

 あたしが魔法学院を卒業したら、お兄ちゃんと一緒に冒険の旅に出かけるの!」



 誰が俺とパーティを組み、冒険に出かけるのか?


 三人は口論をはじめた。

 とはいえ、今すぐとなると剣士っぽいリリア一択なわけだが……。



「フィーグさんの担当は私、リリアです!」


「担当?」


「あたしもお兄ちゃん担当なの。同担拒否するの!」


「同担拒否ってなんだ? アヤメちゃんは、魔法学院を卒業した後でも良いだろ。

 リリアはよく分からないし、フィーグ、俺とパーティを……」


「「どうしてそうなるの!?」」



 みんな、俺を過大評価をしすぎじゃないのか。

 勇者パーティを追放されたってこと忘れているんじゃないのか?



 ——結局、食事を食べ終えても三人の答えは出なかった。

 ただ、三人に共通していることもあった。


 それは「フィーグは冒険者になるべきだ」ということ。

 みんなの意見を受け、俺は宣言する。



「俺は冒険者を続けるよ。そして強いパーティを作りたい。夢は大きく、世界最強のパーティを!」



 そう言うと、皆がささやかな拍手をくれた。



「フィーグ、それなら、世界一の前に勇者パーティより強くなるという目標を設けるのはどうだ?」


「そうよ。お兄ちゃんを追放したなんて……絶対見返すべき!」



 フレッドさんとアヤメがヒートアップする。しかし、俺は……。



「うーん、剣闘士大会で出会う時でいいよ。もう気にしていない」


「なるほど、()()()か」


「そっか。お兄ちゃん、変わったね」


「そうか?」


「そうだよ。優しく強く——かっこぃ……」


「ん? 何て言った?」


「ううん、何でもないの!」



 アヤメは嬉しそうに目を細め俺を見つめていた。



 ——そうして、賑やかな食事が終わる。

 


「じゃあ、食後の運動にでも、やるか。フィーグはオレのもんだ」


「お兄ちゃんは誰にも渡さないの!」


「やるって戦闘ですか? ……分かりました。私こそがフィーグさんを貰い受けます!」



 ん?

 戦闘で俺のパートナーを決めるってことか?

 ミニ剣闘士大会って感じだな。


 ところで、俺の決定権はどこへ……?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ