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第52話 号令

「フィーグ様! ここはどこでしょう?」


「えっ?」



 エリシスとのパーティは、まだ解消されていなかった。

 のんきなエリシスの声が、俺の頭に響く。



「わぁ、フィーグ様がとても小さく見えます!」


「……いや、お前がでかいんだ」



 エリシスは黒竜の内部にいるのか、視覚を共有しているのか分からないがそのどちらかなのだろう。

 俺は安堵する。少なくとも、エリシスはまだここにいるのだ。


 であれば、なんとかできるかもしれない。

 それに、黒竜には以前遭遇したことがあるが様子がおかしい。

 エリシスが内部にいるとしても、無防備な人間を見ても攻撃をして——。



「あっ……フィーグ様、上です!」



 エリシスの声に我に戻る。



「よく分かりませんが、この竜からすごく暗い感情が伝わってきます。怒り、悲しみ、そして強い喪失感が。私の心に」



 見ると、黒竜が俺を見下ろし息を大きく吸うのが見えた。

 竜の息の前兆行動だ。マズい……酸の毒をまき散らされる。


 俺はかなり崩れてしまった館の部屋を見渡し、人がいない方向に走る。

 まだ俺の中には【前衛舞踏】のスキルが残っている。これを使って身軽に避ければなんとかなるかもしれない。


 しかし、酸の毒の直撃を逃れても、地面に落ちた液体から発生する瘴気もやっかいだ。それを吸えば、俺も動けなくなるだろう。



「くっ、これはキツイかも……」



 そう思った瞬間だった。



「パパぁ!」



 キラナの声が聞こえた。

 次の瞬間、黒竜の口から真っ赤に燃えさかる炎が吐き出された。灼熱の地獄をまき散らす塊が。



「なっ……炎?」


「ダメええええええ!」



 キラナも炎の息を吐き出す。それは、俺の目前に迫った黒竜の炎にぶつかり、その方向を変えた。

 しかし、それでもすさまじい熱風が俺を襲う。



「クッ……」



 逸れた炎は館の瓦礫にぶつかり、あっという間に火の手が上がる。

 周囲は赤い火が舞う地獄と化した。



「フィーグさん!」

「お兄ちゃん!」

「フィーグ……! やっと会えた……!」



 リリアやアヤメが俺の元に駆け寄ってくる。

 しかしキラナまでいるとは。助かったものの、館で待っていなかったのか。

 それに、見慣れない子もいるな。どこかで見たような? いや、今はそれどころじゃない。



「フィーグさん、大丈夫ですか?」


「リリア……ああ、なんとか平気だ」



 その声を聞き、戦闘態勢に入るリリア。

 リリアは黒竜に向きあい、剣を構えた。



「安心しました。しかし……エンチャント:【復讐者(フラガラッハ)】を使っても倒せるかどうか」


「リリア、ダメだ。この黒竜の中にエリシスがいる可能性がある」


「なんですって?」



 俺の言葉に、リリアの顔が青くなる。



「キラナ、お願いがある」


「うん!」



 俺は、キラナに耳打ちをする。すると、あっという間に理解したようで、キラナは竜化(ドラゴンモード)したまま飛び立った。

 次に、キラナは黒竜にドラゴンブレスをぶつける。


 すると、黒竜はキラナに反撃するが、すいすいと風を切って飛ぶキラナに追いつけない。

 炎の息も、爪攻撃も全て躱していく。



「すごい……予想通りだがこれほどとは……。【次元飛翔】を使いこなしつつある」



 俺はキラナの成長ぶりに驚いた。

 だが、これだけでは時間稼ぎに過ぎない。



「俺はなんとか、あの黒竜に接触したい。そのための作戦がある。危険だが……協力して貰えるか?」


「はい!」

「うん!」



 皆が俺の言葉に頷き、耳を傾けてくれる。



「まずは、リリアは俺の傍で竜の攻撃があれば援護して欲しい——」


 まとめるとこうだ。

 リリアには俺の護衛、キラナは空を飛び回り、竜に攻撃を仕掛けて貰う。


 アヤメは精霊を呼んでもらい囮を作って貰う。黒竜にどれだけ有効かは疑問だが、やらないよりは良いだろう。

 それと、コスプレドルイドには、風の大精霊がついているから、彼女も俺の援護にまわって貰おう。



「誰がコスプレドルイドよ!」



 俺は黒竜に接近し、触れて【診断】を実行する。

 状態ステータスを診断できれば、エリシスの状況が分かるかもしれない。


 そこからは、出たとこ勝負だ。なんとかエリシスを黒竜と引き離せれば、あとは倒すなり撤退すれば良い。



「フィーグ様……私を見捨てて下さっても……」


「俺 (のパーティ)には、君が必要だ。だから決して見捨てたりはしない」


「ああ、フィーグ様。ありがとうございます……一生お慕いします……」



 エリシスが感極まったような声を出したところで、俺は、全員に号令する。



「危険だと思ったら即作戦を破棄。退却して欲しい。決して命は落としてはいけない。では、行動開始!!」


「「「はい!」」」



 俺の号令のもとに、全員が駆け出した。



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