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第42話 竜種(2)

「おまえではなく、聖女を妻に迎える。診療所は彼女に任せるので、お前は用なしだ。出ていけ!」



 突然、そんなことを言われたのだという。

 エリシスは、もといた診療所に戻りたい一心で、スキル向上を目指した。


 フェルトマン伯爵が管理する診療所は、かなりブラックな環境だったらしい。

 なのに……。



「彼にまた認められようと……診療所で役に立てるように、頑張っていたのですが」



 エリシスは周りが見えなくなっていた。ブラックな職場環境がそうさせたのだろうか?

 元々の神官のスキルでさえ相当なレベルだったので、どの診療所や神殿でもエリシスは重宝されただろうに。


 それに気付きもせずに、一人孤独に戦い、スキルを暴走させてしまった。

 洗脳とまで言わないが、伯爵は相当にエリシスを追い詰めていたのでは?


 心に大きな傷を負っているのなら心配だ。

 だが……思いのほかエリシスの顔は晴れやかだった。


 うっとりした表情で、何か言っている……。



「神であるフィーグ様に出会い、私の考えは変わってしまいました。もうアイツ……ではなくて、伯爵に従うことに価値があるとは思えません」


「そうか。まあ会いたくないなら、俺だけでフェルトマンと話をしてもいい。あと俺は神じゃないから」


「いいえ。はっきり、私の想いを伝える良い機会なのかもしれません。私は神、フィーグ様に仕えると」


「いや、だからね……やめて」



 ☆☆☆☆☆☆



 俺たちは、フェルトマン伯爵と話をするため、王都に向かうことにした。


 正直、アクファたち勇者パーティーの面々と会う可能性があるが……そうも言ってられない。

 新たなパーティメンバ−、エリシスのために問題を片付けてしまおう。

 とっとと終わらせて、このダンジョンの攻略を続けたいところだ。


 

「じゃあ、俺の【次元飛翔】を使って王都に向かおう」


「「はい!」」



 あれ?

 俺は何か、重要なことを忘れているのでは……?



 ☆☆☆☆☆☆



 ダンジョンの外に出ると、すっかり日が暮れている。

 月明かりが俺たちを照らす。


 多少遅くなっても今日中に王都まで移動したい。

 俺は早速リリアとエリシスを両腕に抱いて叫ぶ。



「あ、あの、フィーグ様? これはいったい?」


「エリシスさん、大丈夫ですよ〜」


「い、いえ、急にどうしたのかと思いまして……でも神に抱かれるなんて……」



 エリシスは口元をふにゃりとさせているが、気にする暇はない。



「スキル【次元飛翔】、起動!」



 しーん……。

 ん? どうした?

 何も起きない。



《スキル【次元飛翔】は……聖女のスキルをメンテして上書きされたため、ありません。はぁ……》



 なんか溜息が聞こえたような……そうだ。他人のスキルを一時的に俺に保存できるが、それは一個だけだった。

 忘れてた……。


 不安げな顔をしてリリアが言う。



「フィーグさん、あの、どうかされました?」


「聖女エリシスのスキルを整備(メンテ)したとき、キラナの【次元飛翔】が上書きされて消えたの忘れてた」


「あっ」



 俺は肩を落とし、抱きかかえていた二人を離す。

 すると、何かを閃いたエリシスが提案する。



「あの、私のスキル【(トキ)】で、みんなで王都まで走るってどうでしょう?」



 随分体育会系のノリだな……。



「興奮した状態で王都まで走る? 馬車で一週間の距離だぞ……。確かに睡眠も取らず高いテンションで走り続けられるかもしれないけど」


「はい。みんなで頑張れば怖くありません!」


「でもそれってさ、噂に聞く『死の行軍(デスマーチ)』そのままじゃないか?」


「ええっと、私ここに来る途中まで馬車でしたけど、降りたあとは、走ってここまで来たので……」


 うっ。

 汚い言葉で障害物に文句を言いながら、ひたすら爆走するエリシスを想像してしまった。


 そうなんだよな。エリシスって、一人でこのダンジョンまでやってきたんだよな。

 根性があるよなぁ。


 エリシスは、わくわく、みたいな表情をしている。

 さすが、伯爵の経営する(ブラック)診療所にいた聖女だ。顔が違う。


 などと話していると……。

 バサッ……バサッ。


 何かが羽ばたくような音が聞こえた。



「何? あれ?」



 みんなが気付き上を向く。



「ド、ドラゴン……?」


「くっ……みんなダンジョンに戻れ!」



 (ドラゴン)。世界でも最上位級の存在で強大な力を持つ。

 しかも、人間に対して危害を加える敵でもある。

 俺が勇者パーティ所属時に遭遇したのは、邪悪な竜ばかりだった。


 本来、人里離れた厳しい自然の中にしかいないが、稀に人が住む場所に現れ害をもたらす。

 人を襲ったり、金銀財宝を求め街に大きな損害を与えたり。


 黒竜(ブラックドラゴン)は酸性の液体、赤竜(レッドドラゴン)は炎、青竜(ブルードラゴン)は稲妻、白竜(ホワイトドラゴン)は吹雪。

 それぞれの特色を持つドラゴンブレスが非常に厄介だ。

 牙や爪の攻撃もしゃれにならない。


 今、このメンバーで戦って勝てる相手か?

 そもそもどうしてここに竜がいるんだ……?


 もしかして、あの竜の紋章と関係があるのか?


 俺は全速力でダンジョンに逃げ込む途中、竜の種類を知ろうと振り返った。

 ブレスの種類が分かれば、対策が打てるかもしれない。


 向かってくるドラゴンの色は……。



銀竜(シルバードラゴン)……だと?」



【作者からのお願い】


この小説を読んで


「ドラゴン登場!」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


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今後の創作のモチベーションになりますので、なにとぞ、


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