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第36話 撲殺聖女

「大丈夫だ。俺に任せて欲しい」



 俺はエリシスの肩を抱き、自信を持って伝える。


 彼女のスキルを診断すると、俺の予想どおりだった。

 取り急ぎ職種スキルの確認する。



《名前:エリシス

  職種スキル:

   神官:傷回復(キュア)   LV89 《警告:性能低下》

   神官:防衛聖域(ドーム)  LV81 《警告:無効》

   神官:不死者退転(ターンアンデッド) LV34 《警告:暴走》

   神官:殴打    LV51 《警告:変異して狂戦士状態!》

   神官:祝福(ブレス)    LV71 《警告:暴走》》



 このスキルの多さはなんだ?

 レベルも高い。神官は一般職だが、エリシスのスキルは上級職の「聖女」に匹敵するのでは?


 狂戦士(バーサーカー)状態ってのがちょっとひっかかるけど……。

 さっき、思いっきりヒャッハー、というか様子がおかしかったのはこれが原因だろうか?



「無理ですよね?

 私が囮になるので、お二人は逃げて下さい。

 私が調子に乗っていたのが原因ですから」



 囮になり俺たちのために命を捨てる気なのか。

 もちろん、そんなことはさせない。



「大丈夫だ。君はものすごい力を持っている」


「えっ……いいえ、私は……役立たずだから……。

 だから婚約者に捨てられて……」



 次第に、瞳が曇っていくエリシス。

 俺は、その様子を無視して叫ぶ。



「スキル整備(メンテ)発動。修復、そして魔改造実行!」



《順次実行します——成功しました。スキルの修復と魔改造が完了しました》


《神官:傷回復(キュア)は、【次元飛翔】の空間を操る能力と、本人の資質により、同一空間に全体に影響を及ぼす《神官:全体大回復(マス・ヒール)》に魔改造されました》



「あんっ…………あっ?」



 歯を食いしばって声をこらえているエリシスが切ない声を漏らしている。

 次第に自分のスキルの変化に気がつき、戸惑いの表情を見せる。



「これは……全体(マス)……大回復(ヒール)……?

 高位の大神官や聖女にしか使えないという伝説の回復術……。

 こ、これがあれば……」


「ふう、うまくいったようだな。大丈夫か?」


「……あ、は、はい。

 でも、この力は……。本当なのでしょうか?

 信じられません」


「間違いなくエリシス、君の力だ」



 エリシスは驚きのためか、目を見開き口をあんぐりと開けて俺を見つめていた。



「あ、あなたは神なのですか?

 いいえ……私の仕える神もこんなことはしてくれませんでした」



 エリシスの声が、訴えるように周囲に響く。



「何も助けてくれなかった……手を差し伸べてくれなかった……。

 それなのに……あなたは?」


「大げさだな。これは俺のスキル、《スキルメンテ》によるものだ。

 たいしたことない。君や、みんなの力が元になっている」


「この力が大したことの無い……ですか……?」


「うん。沢山スキルを扱える君のほうがよっぽどすご——」


「あなたは(まこと)の神だったのですね」


「んん?」



 なんか変なことを言っているぞ。

 その瞬間、エリシスの身体が光ったように見えた。



《エリシスは信念の変化および感銘により、状態スキル【天啓】を獲得。その力を用いて、職種スキルが魔改造されます》


《職階級は上級職に移行。スキルは一律、神官から聖女スキルに改造されます》


《聖女:全体大回復(マス・ハイヒール)を獲得しました。

 聖女:聖域(ドーム)を獲得しました。

 聖女:不死者退転(ターンアンデッド)を獲得しました。

 聖女:殴打を獲得しました。

 聖女:浄化を獲得しました。

 聖女:祝福(ブレス)を獲得しました。》


 よくわからないけど、きっとすごいことなんだろう。

 とにかくエリシスは神官から聖女になったらしい。

 ぱっと見、何も変わらないようだけど……。



「え……私が……せ、聖女?」


「みたいだな。早速、回復スキルを!」


「は、はいっ! 【聖女:全体大回復(マス・ハイヒール)】!」



 凜とした声でエリシスはスキルの起動を叫ぶ。

 パーティに参加している俺たちの体が光に包まれる。



 ——その時、リリアは窮地に立たされていた。

 甘い蜜に引き寄せられる蟻のように、リリアに近づくオーガ。



「エルフ……エルフ……ぐへへええ」



 オーガがリリアの可愛らしい姿に目を細めている。

 美味しそうなおやつを見つけたような目つきだった。



「ぐっ……! いや、オーガなんて大っ嫌い!

 来ないで……!」



 あからさまに顔をしかめるリリア。

 心底オーガが嫌いなのだろう。


 そんなリリアの体が光を帯びる。

 身体の傷がみるみる塞がっていく。



「すごい……大回復の全体魔法!!」



 リリアが腕を見て驚いていた。

 さっきまで負傷し、だらんとしていた腕が完全に元どおりに戻っている。



「フィーグさん、これなら……いくらでも戦えます!」



 声が弾んでいる。

 リリアの剣はあっけなく、やすやすとオーガを切り裂いた。


 すぐにリリアは次のオーガに向けて戦闘を継続する。


 しかし……次のオーガ、こいつの様子がさっきからおかしい。

 リリアの攻撃を避けているのだ。


 リリアが苦戦しているのは、この個体が原因のようだ。

 確かにこいつだけ、他のオーガと顔つきが違う。


 リリアと、この特殊なオーガの1対1(タイマン)

 なかなか決着がつかない。

 

 ただ、エリシスが必要なタイミングで《聖女:全体大回復》スキルを起動して支援するため、リリアが後れを取ることは無かった。


 しかし……。

 俺は、隣にいたエリシスが一歩前に踏み出していることに気付く。

 おや、エリシスの様子が……??



「うず……うず」


「どうしたの?」


「わ、わたくしも参戦してよろしいでしょうか?」


「何言ってんのっ!?」



 俺は条件反射的にツッコんだ。

 回復役は前に出たら集中的に狙われる。だからこそ、後衛職とも言われる。


 しかし、すぐに思い直す。

 エリシスならアリかも?


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