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第23話 破滅——side王都ギルマス・デーモ


 王都ギルマス・デーモは、連絡が取れなくなったアクファ同盟の面々に対し、苛ついていた。



「あいつら……俺の連絡を無視しやがって。いや……まさか……?」



 依頼に失敗し、記憶を消す魔道具と偽り渡した魔導爆弾を起動させたのではないか?

 定期連絡もなく、こちらから連絡しても返事がないことと辻褄が合う。


 最後に連絡を取った時には、イアーグの冒険者ギルドにいた。

 魔導爆弾を使ったのなら、冒険者ギルドの建物ごと吹き飛んでいるだろう。



「ま、まあ……それでも全てが消えるなら問題ない。

 念のため、フレッドに連絡してみるか」



 通信用の魔道具を取りだし、イアーグの冒険者ギルドに連絡を取る。

 デーモは、不通になるだろうと思っていたのだが……。



『ご連絡ありがとうございます。イアーグの冒険者ギルドマスター、フレッドと申します』


「ゲッ……どどど……どうして」



 元気そうに答えるフレッドの声に驚くデーモ。

 どうしてコイツが生きて通話に応答するんだ?



『えっと、王都ギルド——の、どちら様ですか?』


「フン、わ、私は王都冒険者ギルドマスター、デーモだ。久しぶりだな、フレッド」


『はあ、デーモさんですか』



 支部のギルドマスターの割に、軽い返事が返ってきた。

 デーモは苛つく。


 ——コイツは元々反抗的だった。

 随分前に王都冒険者ギルドから裏工作を繰り返し追放してやったのに。

 王都から離れている田舎だとは言え、未だにギルマスにしがみつきやがって。


 デーモはフレッドの声に怒りを隠さない。



「おい。お前、なんだその態度は?

 俺は()()王都ギルドマスターだぞ。

 物言いに気をつけろ!」



 しかし、相変わらず舐め腐ったようなフレッドの溜息が聞こえる。



『はあ……』


「おい! 聞いているのか!?」


『聞こえていますよ。デーモさん。

 でも、あなたはもうギルドマスターではない。

 クビだよ、あんた。

 それだけじゃない。お前は犯罪者だ』


「な、何を言っている?」


『そこに向かってるぜ。

 こわーい捜査官が。


 もちろん、心当たりはあるだろう?

 オレへの圧力、おかしな武器や防具の転売』


「な、なんのこと……だ?」



 デーモは当然心当たりがあった。武器の転売は、全て勇者アクファと一緒にやってきたことだ。



『しかも転売された武器や防具はゴミだった。それを使ったために、肌が真っ赤に腫れ、手足や顔を包帯で隠さなきゃいけなかった冒険者の女の子がいる。

 その転売で、武器の商売がうまくいかない店もあった。売るのを拒否したため、苦境に立たされた店だってある』

 

 次々と指摘される武器転売などの悪事。

 フレッドは低い声で、怒りを抑えながらデーモを責める。


 だが、デーモ自身はそんなことどうでもいいと考えている。

 国民や冒険者が苦しもうと、大した問題ではないと。


 重要なのは、フレッドが生きていて、デーモが依頼した内容を知っていることだ。

 捜査官がやってくるとも言っている?


 焦るデーモに対し、フレッドは追い込むように続ける。


『さらにフィーグへの仕打ち。あんたもフィーグのことをボンクラと言っていたそうだな。

 エリゼ殿は、とてもご立腹のご様子だった』


「ま、待て……一体何を伝えた?

 きちんと説明するからお前からも話してくれ——」


『そうそう、魔導爆弾の出所についても、エリゼ殿がしっかり追求するそうだ。

 全員無事だぜ。あんたの送ったアクファ同盟も、巻き添えになりそうになった公爵や騎士エリゼ殿もだ』


「何? 魔導爆弾が爆発していないのか?」


『へえ、随分詳しいご様子で。俺は魔導爆弾の存在すら知らなかったぜ。詳しそうだなあんた。じゃあ、竜人(ドラゴニュート)の子が生まれる前に、たまごを爆弾にして殺そうとしていたのも……お前か?』



 フレッドの声は静かに震えていた。怒りを抑えながら話していることに、デーモは気付かない。



「ぐっ……い、いや、そんなことはない……噂で聞いたんだ。そ、そうかそうか……無事で何よりだが……ど、どうやって助かったのだ?」



 おかしい。魔導爆弾は起動したが最後、確実に爆発すると聞いていた。

 それをどうやって……?



『フィーグが全て解決してくれた』


「なっ……? フィ、フィーグだと?」


『ああ。すべて丸く収まったよ。後は、あんたが知っていることを騎士に話したら良い。もっとも、公爵や騎士を巻き添えにしようとした罪は重い。あんた、家族は?』


「い、いないがそれがどうした?」


『そうか。あんただけが処刑台に送られるのなら、暗い気持ちにならなくて済むな。楽しく酒を飲めそうだ』



 通信を切り、慌てて周囲を見渡すデーモ。

 もう全てが終わっている。


 フィーグの口封じの依頼。

 取り扱いが禁止されている魔導爆弾の使用。

 証拠隠滅のため偶然居合わせたとは言え、公爵や騎士、その他市民を巻き添えにしようとしたこと。

 武器転売による武器防具屋の苦境や、皮膚が腫れるなどの被害を冒険者に与えたこと。



「クソが……フィーグ……アイツが……アイツのせいで! いや、そもそも勇者アクファがアイツを追放したのがいけなかったのか?


 そういえば勇者アクファは……最近まったく顔を見せないが……まさか逃げたのか?」



 いくら他人を恨んだところで後の祭り。

 もうデーモにとって挽回のチャンスは無い。


 周囲に散らばる書類。

 特に捜査官などに見られたらマズい書類を鞄に詰め始めるデーモ。


 滝のように流れる汗は留まることを知らない。

 そこへ……。


 バン!


 突然部屋のドアが開き、ズカズカと数人の騎士と、捜査官、衛兵が入ってきた。

 そこには、騎士エリゼの姿もある。



「王都冒険者ギルドマスター、デーモ。貴様を逮捕する!

 貴様……よくも……よくも!!」



 ……騎士エリゼの瞳は憤怒に燃えていた。



「そんな……そんな……!」



 これから何が行われるのか?

 取り調べ……拷問?

 デーモはただただ、震えるだけだった——。



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