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第14話 魔導爆弾——side 王都ギルマス・デーモ


 王都ギルマス・デーモは、フィーグへの暴行を依頼したパーティに連絡を取った。


 魔道具による遠距離通信。

 とても貴重な魔道具だ。



「状況はどうだ?」



 状況とはもちろん、フィーグの口封じに関してのこと。


 勇者アクファ同盟の代表、ギザが状況を説明した。

 もっとも、ギザが全てを報告するわけがない。

 適当にかいつまんで、都合が悪いところは隠して伝える。



「何? フィーグがイアーグのギルドに顔を出しているだと?

 なるほど冒険者登録か。

 イアーグの冒険者ギルドマスターの名はフレッドだったな……分かった。話をつけておく」



 ——良いタイミングだなぁ、おい。

 戦闘試験で適度にフィーグを痛めつければ良い。

 デーモはただでさえ歪んだ顔をさらに歪ませてニヤリとした。


 イアーグの街の冒険者ギルドは、あの面倒なフレッドとかいうヤツが管理している。

 だが、王都ギルドの権力は絶大だ。

 ちょっと脅せば、ギザたちが戦闘試験の試験官をすることを承諾するだろう。


 ギザたちはA級冒険者だ、負ける心配はない。

 フィーグを痛めつけ、腕の一本でも切り落としてしまえばいい。



「そうだな、痛めつけたらしばらくどこかに閉じ込めておけ。

 フィーグなど、しょせん【剣技】すら持たぬボンクラだ!」



 通信を終えたデーモは、大きな溜息をついた。

 あとは結果を待つだけだ。


 先日訪ねてきた貴族は公爵だった。

 怒らせたとあれば、かなり重い処罰があるかもしれない。


 さらに悪いことに、あの様子ではイアーグの街に使者が送られるかもしれない。

 デーモは最悪の状況を想定しつつ考える。


 ——追放したことを誤魔化さず、勇者がやったことだと言えば良かったか?

 いや、もう遅い。

 アクファ同盟の面々がうまくフィーグの身柄を拘束できればいいのだが……。



 イアーグの街の冒険者ギルドマスター、フレッドに連絡を取るデーモ。

 王都ギルド本部としての威圧で、「アクファ同盟」の言うことを聞くようにと命令し、もし従わなければ、クビにすると脅しも忘れない。


 これでいいはずだ。デーモは自分を落ち着かせるように頷く。

 しかしとてつもない不安がデーモを襲う。



「そもそも、フィーグの力を見誤っていた?

 ボンクラだという話だったが……。

 いや、いくらなんでもアクファ同盟が苦戦することはあるまい。やつらは仮にもA級ランクの冒険者だ」



 強がりながらも、ぶるっと震える王都ギルマス、デーモ。

 不安に負けじと酒をあおり、大丈夫だと自分に言い聞かせる。



「まあ、ランク決め戦闘試験で事故が起きて大けがをして口がきけなくなるかもしれない。

 もし失敗しても——ギザに渡した魔導爆弾で全てを消し去ってしまえば良い。


 下手すれば、イアーグの田舎町くらい、まるっと吹き飛ぶかも知れないなァ」



 言いつつも、デーモの額からこぼれ落ちる汗は止まることを知らなかった。

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