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3-14 父と母の醜い本音

「ま、待って下さいっ!そ、それでは・・・契約書は・・・エンブロイ侯爵との契約は一体どうなってしまうのですか?!」


父は顔面蒼白になりながら、情けないくらいにブルブル震えている。全く・・・男の癖になんと情けない男なのだろう?母はこんな男の愛を欲しかったのだろうか?我が父ながら、私だったら例えお金を積まれて、愛を囁かれても嫌悪感しか感じないというのに。


「モンタナ伯爵・・・・この契約書にはモンタナ伯爵家の娘をエンブロイ侯爵の元へメイド兼愛人とし迎え入れるというもので、ライザの名前は記載されておりません。ここで仮にライザを除籍すれば・・残る娘はカサンドラという事になりますよね?彼女をエンブロイ侯爵の元へ送れば良いではありませんか?」


ジュリアン侯爵の提案に母は手を叩いた。


「素晴らしいっ!それは良い提案ですわっ!そうだ、カサンドラなら金貨を後2000枚上乗せしても、きっとエンブロイ侯爵は受け入れてくれますわっ!」


あくまで金貨5000枚にこだわる母。しかし・・・それにしてもこの母も人間的に見てどうかと思う。はっきり口に出しているわけでは無いが、今の言い方だと、私の相場は金貨3000枚でも、カサンドラであれば金貨5000枚の価値があると言っているようなものでは無いか。確かに・・自分の魅力がカサンドラよりもずっと劣っている自覚はある。だが・・決して言い訳をするつもりではないが、私の魅力が不足しているのは子供の頃からの栄養失調が原因・・・だと思いたい。


「ほう・・モンタナ伯爵夫人。それでは貴女のお考えでは、お腹を痛めて産んだ娘が除籍されてしまっても構わないとおっしゃるのですね?」


ジュリアン侯爵は母を冷淡な目で見ると言った。


「そ、そういうわけではありませんが・・ただ、邪魔なカサンドラを追い払えるのであれば、私はどんな手段をとっても構わないと思っているだけです。ついでにお金が転がり込んでくれば、儲けものですわ。」


すると父が顔を真っ赤にして母を怒鳴りつけた。


「うるさいっ!関係ないお前は黙っていろっ!良いか?カサンドラは私にとって、この世で一番大事な娘だっ!絶っ対に!エンブロイの所へはやらぬっ!」


ついに父は自分より爵位が上の・・借金を肩代わりしてくれているエンブロイ侯爵を呼び捨てにしてしまった。

 

「ま、まあ・・!あ、貴方・・とうとう本音を吐きましたね?!私よりもカサンドラが大事だというのですねっ?!」


母は愛人を何人も囲っているくせに、言ったいどのお口でモノ申しているのだろう?


「黙れっ!私はなあ・・・今まで一度たりとも、お前に愛情を抱いた事などないのだよっ!当然娘のライザだって同じ事だっ!」


「な・・・何ですってっ?!」


ますます火花を散らす父と母。もう・・・これ以上2人のクズ発言を聞いているのもいい加減疲れてしまった。そこで私はジュリアン侯爵に言った。


「ジュリアン様・・・もう結構です。彼らの事は放っておいて役所へまいりましょう。」


「ええ、そうですね。ライザ。除籍後は私の屋敷に住むとよいです。必要な荷物があれば後日取りに戻ればよいのですから。」


ジュリアン侯爵はなかなかノリの良い人物の様だ。そして私たちは席を立った時・・。


「お・・・お願いでございますっ!どんな言うことでも聞きますので、どうか・・どうかそれだけはお許しください!そして・・・この家を助けて下さいっ!ジュリアン侯爵様が・・本当に娘のライザをご所望でしたら・・親である我らを見捨てる事はさすがに非人道的だとは思いませんか?」


「!」


父の言葉に今度という今度は、私は切れそうになった。思わず睨みつけると、父は不敵な笑みを浮かべて私を見る。こ、この男は・・・っ!思わず拳を握りしめて文句を言ってやろうとしたその時、ジュリアン侯爵が私に素早く耳打ちしてきた。


「どうですか?ライザ。もっともっと・・・彼らを苦しめたいですか?それとも・・この辺で勘弁してあげますか?」


もちろん私の答えは決まっている。私は笑みを浮かべて自分の希望をジュリアン侯爵に伝えると、侯爵も満足そうに微笑んだ―。

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[一言] 母親は屑の父親に染まった結果なのか 類友で寄ってきただけなのか
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