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【さびついた剣】を試しに強化してみたら、とんでもない魔剣に化けました  作者: 万野みずき
第二章

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第四十話 「村の教え」

 

 神器探しの依頼をするに当たり、ジェムさんから聞いておかなければならないことは以下の三点だ。

 まず、七色森のどの辺で神器を奪われてしまったのか。

 そして、なぜ七色森にいたのか。

 ついでにジェムさんの授かった神器はどういう神器なのか。

 僕は一つ一つ確かめることにした。


「神器をとられてしまった時、七色森のどの辺りにいたんですか?」


「確か、森の真ん中らへんだったかな? そこで日向ぼっこしてる間に、小さい悪魔みたいな魔物に神器を持ってかれちゃったんだよね」


「……その話、本当だったんですね」


 ジェムさんからの返答を受け、僕は密かに驚愕する。

 チャームさんから聞いていた通りの内容だ。

 どうやら本当に、日向ぼっこをしている間に、スナッチシーフに神器を奪われてしまったらしい。

 もしかしたらチャームさんの冗談かもと半信半疑だったのだが、まさか事実だったとは。

 しかも危険域(エリア)のド真ん中って。いったいどういう神経してるんだろう……


「だって天気が良かったからさぁ、ついついお日様を浴びたくなっちゃったんだよ! すごく気持ち良かったよ、日向ぼっこ! 今度一緒にどう?」


「……エリアの中じゃなければ是非」


 僕は当たり障りのない受け答えをして、次いで二つ目の質問に移った。


「それで、どうしてジェムさんは七色森にいたんですか? 何か大切な用事でもあったんですか?」


 まさか日向ぼっこのためだけに七色森にいたわけではあるまい。

 きっと何かしらの事情があって森に入り、その合間に日向ぼっこをしたのだろう。

 と思って問いかけてみると、ジェムさんはニヤリとボーイッシュな笑みを浮かべて答えた。


「あの森で、“魔人が現れた”って話を聞いたからだよ」


「えっ……」


 ……魔人。

 思いがけないその言葉を耳にして、僕は自ずと声を失った。

 七色森に現れた魔人。

 僕の脳裏には、あの黒猫のような魔人の姿が思い浮かんでいる。

 他に七色森で魔人が出現したという情報は聞いていない。

 まさかあいつのことを言っているのだろうか?


「詳しくは知らないんだけどね、つい先週あの森で冒険者試験が行われたんだって。その時に、突然魔人が現れて、参加者が襲われたっていう噂を聞いたんだ。君たちはこの話聞いたことない?」


「え、えっと……どうでしょうね」


 密かにダイヤと顔を合わせて苦笑する。

 間違いない。僕たちが出会ったあの魔人のことを言っているのだ。

 冒険者試験が行われて、その最中に参加者を襲った魔人が、あいつ以外にいるとは考えられない。

 だからジェムさんの言っている魔人に心当たりはある。

 しかし僕は、どうしてか彼女の質問に対して、嘘を吐いてしまった。

 なんで僕、ジェムさんへの返事を誤魔化しちゃったんだろう? そのせいでダイヤも、僕に合わせて返答を渋ってしまった。


「結局その後はね、襲われた参加者が魔人を返り討ちにしたって話だけど、現役の冒険者が駆けつけたらしいから、本当はその人たちが魔人をやっつけたんじゃないかって、噂がちぐはぐになってるの。まだ魔人が生きてるかもしれないって言う人もいるくらいだし」


「……じゃあジェムさんは、その魔人を探すために七色森に入ったんですか?」


「そそ」


 何でもないように答えるジェムさんに、僕は無意識に疑いの眼差しを向けてしまった。

 なんであの魔人を探しているのだろう? 一般人が魔人を探す理由なんてまるで思いつかない。

 僕の深読みかもしれないけど、本当に探しているのはあの魔人ではないのではないか?

 本当は、あの魔人を倒した参加者、あるいは冒険者を探しているのではないか?

 例の事件は一応、おおやけには発表された。しかし目撃者や証拠がないこともあり、信じている人はほとんどいない。

 試験参加者が魔人を倒すなんてあり得ない。駆けつけた現役冒険者がいるならその人たちが倒したんじゃないか。

 そもそも魔人なんて本当に現れたのか? という疑いの下、たった一週間で噂は下火となった。

 だから事件の真相を知る者は数えるほどしかおらず、真相を探るために七色森に入る人間がいても不思議ではない。

 もしかしたらジェムさんは、魔人を倒した人間を探して、七色森に……

 という微かな可能性が脳裏をよぎり、僕は反射的に誤魔化してしまった。

 きっとこんな疑心が生まれるのは、あの黒猫の魔人のせいだ。


『地の果てまでお前を追いかけて、考えつく限りの苦しみをお前に与えてぶっ殺すに違いニャい』


 黒猫の魔人の台詞が脳内で蘇る。

 同時に僕は、密かにジェムさんの顔色を伺い、拳に脂汗を滲ませた。

 関係……ないよね?

 あの黒猫の魔人が言っていたように、まさか徒党(レギオン)のリーダーから指示が出て、僕たちのことを探し回っている奴らがいるんじゃないのか?

 ジェムさんがその徒党(レギオン)と関係があって、魔人を討伐した人間を密かに探しているんじゃないのか?

 あまりに突拍子もない憶測だけど、まったくの無関係と断言できる証拠もありはしない。

 だから僕の心には、爪の先ほどの僅かな疑いが生まれていた。


「……」


 …………いやいや。

 冒険者を頼ってくれた依頼人を疑うなんて、どう考えても失礼すぎる。

 それに普通の人間が魔人と繋がりがあるなんて、それこそ考えられない話だ。

 人間と魔人は絶対に相容れない関係だから。

 何より僕たちとジェムさんを繋いでくれたのは、捜索依頼を紹介してくれたあのチャームさんだ。

 依頼人のジェムさんを疑うということは、依頼紹介人のチャームさんを疑うに等しい。 

 今日までどれだけあの人にサポートしてもらったと思ってるんだ。それにジェムさんが悪い人ではないと、少し話しただけで充分にわかったではないか。

 僕は内心で猛省し、心中でジェムさんに謝罪の言葉を述べた。

 同時に、単刀直入に聞いてみる。


「どうしてジェムさんは、魔人を探しているんですか? 興味半分……とかですかね?」


 すると彼女は、正解と言わんばかりに指で丸を作り、こくこくと頷いた。


「もちろんそれもあるよ。魔人にはまだ会ったことがないし、どんなものなのか見てみたい気持ちはあるかな。でもね、ボクが魔人を探しているのは、もっと別の理由だよ」


「別の理由? それってどんな……」


「実はボク、今は“大切な旅”をしてる途中なんだよね。その旅を終わらせるために、魔人を探さなきゃいけないんだ」


 大切な旅?

 魔人を探さなきゃいけない旅って、いったいどんな旅なのだろう?

 ていうか旅の途中ということは、もしかしてジェムさんは“旅人さん”ということになるのだろうか?

 てっきり僕は、退屈な村が嫌になって町に遊びにきた、ただの“観光客”だと思ってたんだけど。

 実際はそうじゃないのかな? そもそも“大切な旅”って何? 

 と内心で首を傾げていると、ジェムさんは再び爽やかな笑みを浮かべて答えてくれた。


「さっきさ、『グレイ村にはなんにもない』って言ったじゃん」


「あっ、はい……」


「でもね、なんにもないグレイ村にも、たった一つだけ変な“教え”があるんだよ。その教えに従って、今ボクは大切な旅をしてるんだ」


 ……教え?

 グレイ村にある“言い伝え”みたいなものだろうか?

 確か、古くからある村には、他の村や町にはないような特有の“教え”があったりするらしい。

 ご飯は一日二食までが正しいとか、朝は必ず六時に起きるのが適切とか。

 まあ言ってしまえばただの“習わし”だ。

 でもそのような村の“教え”は“古代の風習”とされていて、最近ではほとんどがなくなっていると聞く。

 グレイ村にはまだそのような“教え”が現存しているのだろうか? 

 辺境の地にある村のようだし、古代の風習が残っていても不思議ではないけど。

 ていうかそれって……


「グレイ村に伝わっている教えは、いったいどんな教えなんですか?」


 大切な旅に関係している教えが、いったいどんなものなのか、僕は個人的に気になった。

 その教えに従って旅をしているということは、ジェムさんの信念に他ならないということでもある。

 この自由奔放なジェムさんを突き動かすほどの村の教えとは、いったいどれほど大層なものなのだろうか?

 そう不思議に思って尋ねてみると、ジェムさんは思いのほかつまらなそうに答えた。


「『強き神器を授かりし者、英雄となる』っていう、なんか古臭い教えだよ」


「……英雄」


 僕はそのフレーズに、密かに心が湧き立った。

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― 新着の感想 ―
[一言] グレイ村の教えがまったく深くなかった笑
[気になる点] 危険域のド真ん中、森の深部に、日向ぼっこに行くってどういう事なの? 言ってる方も言われてる方もおかしいと思わないのか…?
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