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9 囮捜査をやってみた。

私はこっそりパーティー会場を覗きにいった。


もうそろそろお開きになっているかと思いきや、まだパーティーは続いていた。よく体力が続くものだと感心していたが、じっくり見ると、ほとんどの人が泥酔していた。


まあ、終盤の方だと思っていいだろう。


私はパーティー会場の様子を確認した後、用意された自分の部屋に向かった。


実は部屋が用意されていたのだ。一応、客人扱いなので、寝室もバッチリついている。今日、出発するのは不可能なので、明日の朝あたりに出発するだろうから、今日のところは王宮で泊まらせてもらうのだ。


私は部屋の中に入り、着替えて、ベットに飛び込んだ。


さすが、王宮。宿とは段違いの寝心地だ。


そんなことを考えつつ、私は眠りについた。






だが、4時間後、すぐに起きることとなった。なんでかって?そりゃあ、侵入者が部屋にいるからだよ。


大方、王国を混乱させようとか、現国王の反対派とかであろう。


私の警備は重要人物である勇者や貴族のユネク、ノエル、騎士さんと違って、結構緩いから、それを狙われたのだろう。


敵の気配を察知した私はすぐさま目を開け、寝たふりをしながら、暗殺者を待った。


幸いにも、1人だけのようだ。その人の仕事が上手いのか、1人の方が侵入しやすいからなのか。


多分、前者かな、と思う。この人からはものすごい強者のオーラを感じるし、気配を消すのも上手い。


まあ、この私にかかれば、そんなもんなんの役にも立ちやしないけどね。


ナイフを振り下ろしてきたので、私は人差し指と中指の間にナイフを挟んで止めたあと、ナイフを部屋の隅に放り投げる。


一瞬、暗殺者の金色の目に動揺が走る。私はそれを見逃さず、その隙に逮捕術を使って彼を捕まえた。


逮捕術、というのは警察官用の格闘技である。前世でテレビでチラッと見たものを真似して使ってみたのだ。何事も知っておく方がいい、と今世で学んだよ。


バタバタと暗殺者がもがくので、私は彼を気絶させた。


まず、男なのは間違いない。見れば分かる。あと、美形である。


金色の目に闇に紛れやすく、()()()()焦げ茶の髪。


ふむ、この容姿からなんとなく彼の生い立ちを想像することができた。


彼は、()()()()焦げ茶の髪。黒髪というのは魔族だけが持っているものなので、彼の髪色は黒髪によく見間違えられ、迫害を受けたのだろう。そこから、世界を恨んで裏社会に……といったところだろうか。設定を追加するなら、実の親にも見捨てられた、もしくは、孤児とか。


私は彼を魔法で作った糸で拘束し、衛兵を呼びにいった。


衛兵は彼の姿をみて、大変驚いていた。なんでも裏社会では名の知れた暗殺者だったとか。


異名は『死を呼ぶ猫』。黒髪っぽい髪と金色の目が黒猫のようだから猫、死を呼ぶ、という部分についてはいうまでもないだろう。暗殺者だし。


私は彼が連行される様子を見届けてから、ベッドに潜り込んだ。


髪色が彼の悲しい生い立ちの原因となったのなら、それを緩和してあげればいいのではないかというアイデアが浮かんだ。魔族の王である私がケジメをつけていいだろう。


私は彼の残していったナイフから彼の魔力の残滓を探す。それを見つけたら、それを辿って行けば、彼の元へとついた。魔力の残滓を利用して、簡易的な魔脈を一時的に作って、魔法を発動した。


この魔法は、光魔法で私は光を操り、その光の反射によって、黒髪っぽさを軽減するというものだ。あくまで軽減するだけで元々の色は変わらないが、黒髪に間違えられることは減ると思う。


魔法をかけ終わったあとは、彼のナイフを異空間に放り込んだ。


「おやすみなさい。」


小さい声でそういってから、私は目を閉じた。





私は窓から差し込んでくる陽の光によって目覚めた。


暗殺者に起こされるよりはだいぶいいと思わない?


誰も部屋にくる様子がないので、リューが買ってくれた服を異空間から出して着替えた。あ、そういえば、リューに買ってもらうばかりだから、自分でお金を稼げるようになって、しっかり返済しないと。


借りっぱなしは良くないからね。


私は着替えたはいいものの、これから何処に行けばいいのか分からない。


そもそも何時頃に出発するのだっけな?確か、リューが1時ごろといっていたような気がする。うん、パーティーの前にちょこっといっていたな。


ドアを開けようと、ノブに手をかけた時に、ドアの下に差し込まれていた手紙に気が付いた。


宛名も書かれていない、真っ白な封筒で、中には「1時ごろに街の北門で待ち合わせをする。」という内容が書かれていた。


何処で待ち合わせをするのかも分かったので、私は出発する前に街を散策することにした。


王都がどんなものか見ておきたいからだ。平民服だし、自然に街に溶け込めると思う。私は気配を消しつつ、王城から抜け出した。


街には活気が溢れていて、いいところだった。私が今いるのはいわゆる、下町である。貴族街というところもあるのだけれど、そこを見ても何も面白くないので、スルーすることにした。


皆んな、汗水流して、必死に生きている。


これが、私の見たかった『人間』の姿だ。


苦痛を感じながらも、決して諦めず、生き続ける。


それはとても素晴らしいことだと、私は思うのだ。


フラフラと街を歩き回っていると、ガタイの良い3人組に捕まった。


「やあ、坊ちゃん!このあたりは初めてか?良ければ、案内するぜ!」


笑顔でそう言われたが、企みが見え透いている。大方、路地にでも連れ込んで、お金を奪うのだろうということが予想できた。


だが、残念!私は現在、無一文なんで、お金は持ってないんですね!


多分、魔界のお金なら少し異空間に入っているけど、人間界じゃ役に立たないし。


だけど、こういう悪の芽は摘んでおいた方が良いので、囮捜査できな気分でついていくことにした。




実は無一文。

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