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6 何故か王城に連れていかれる魔王様

ヘルの視点に戻ります。

「あ〜、よく寝た。」


私は人間界で初めての朝を迎えた。とても清々しく、窓からの暖かい日の光が心地好い。


「リュー、おはよう……」


リューの方へと顔を向けると、彼はまだ寝息をたてながら、眠っていた。


「ヘ……ル?」


私の姿を見たリューはゆっくりと私の名前を呟いた。


「おはよう。」


私が言うと、


「おはよう。」


とリューも返してくれた。イケメンは寝起きでもイケメンだ。ずるいな。


「今日、どうする?」


私はリューに問いかけた。リューがこれからどんな旅をするのか私は知らないのだ。いきなり魔王討伐にいく、と言うのだったら、この場でねじふせようかと思ったが。


「うーんとね。これから王都に行かないといけないんだよ。だから、朝ご飯を食べたらすぐに出発していいかな?」


王都に行くのか。何で?王命とかがあるのかな?ま、いいや。権力とかの事情があるんだろう。


「うん。分かった。下に行こう。」


私は了承の返事をして、食事に行くように促した。


私達は部屋を出て、階段を下りていった。古い階段のようで、歩くたびにギシギシという音がする。


その後、普通に朝ご飯を食べ、荷物をまとめて、村を出ていった。


どうやらここの村は王都にかなり近い位置にあるらしく、何でこんな小さい村に色々な店や宿が揃っているんだろう、と思っていたけど、王都に行く人の休憩所としてよく使われているらしい。


王都に向かい始めて、少し経った頃、リューの腹の虫が騒ぎ始めた。


さっき、朝ご飯を食べたばかりなんだけど、と呆れつつ、私は魔物肉を異空間から出した。

そして、その肉を土魔法で作った串で突き刺し、火魔法で焼く。


魔法様様だ。


調理をし終わった肉をリューに渡そうとしたところ、別の場所から腹の鳴る音が聞こえた。


右側にいるリューからでもないし、私からでもない。音は左側からしたのだから。


私は左側を見た。


すると、そこには指をくわえて涎を流している少女がいた。


いつの間に!


彼女はただ黙って指をくわえて、肉をガン見している。そのままにしておくのお不憫なので、私は今焼いた肉を彼女に渡し、肉をもう一つ焼き、リューに渡した。


彼女は真っ白な服を着ていて、その服はいわゆる教会っぽいものだ。彼女は平民ではなさそうだ、というのはすぐに分かった。綺麗な格好をしているし、本人も見目麗しい。


光を反射して神々しい銀色の長い髪にスカイブルーの目。


儚げな美女なのに、肉を一心不乱に食べている。何だか残念である。彼女が一つ目の肉を食べ終わったため、また指をくわえながらこちらを見つめている。


可哀想だから、もう一つあげたいが、タダであげるわけにはいかないな。


私は即座に肉を焼き、彼女の目の当たりにちらつかせる。面白いぐらいに彼女の目が肉を追っているな。


「これが食べたかったら、自己紹介して。」


要するに、自分が何者か話せ、ってことだ。


「私はノエル!『職あり』の聖女。今日は勇者様が来るとかで、待ってたんだけど美味しそうな匂いがしたからここに来たよ。」


うおおぉぉおい!


『職あり』の聖女かよ。通りで綺麗なわけだ。ノエルは美しい色彩だけでなく、黄金比のダイナマイトボディを持っていらっしゃる。


憎らしいね。


まあ、それでも言われた通りに自己紹介してくれたので、私は肉を渡した。


あと、リューが王都に行かなきゃいけないのはパーティーメンバーと顔合わせをするからみたいだ。他には誰がいるかな。


「奇遇だね!僕が勇者のアンドリューだよ。」


名乗るんかい!あ、そうだった、リューはアンドリューだったな。ま、いいやこのままリューで。


ふぇー(へー)ふぃふぃ()ふゅうふゃなんら(勇者なんだ)。」


ノエルは食べながらそういった。ごめん、何語喋ってんの?


そのあと食べ終わったノエルが口を開いた。


「勇者様、じゃなくてアンドリューか。アンディ、って呼んでもいい?」


ノエルが首を傾げる。そういうポーズも、美少女がやると絵になるね。


「アンディか。いいね。」


リューが満足そうに微笑んだ。


「ところで、ノエルさんは王都に向かうの?」


リューがノエルに訊いた。


「さんはいらないよ。あ、私も王都に帰るよ。この辺を少し散歩してただけだし、他のパーティーメンバーも王都に集まっているはずだからね。」


散歩って。聖女様ってそんなに気軽に行動していいものか?


私達は止まっていた足を進めた。


「そこの君は?」


歩いている最中にノエルが私を指差していった。


そうか。他の2人は自己紹介したけど、私はしてないものね。


「俺はヘル。リューの保護者。」


私がそういうと、ノエルは肩を震わせ始め、リューは目を見開いた。


「ぎゃ、逆じゃない……?」


ノエルはまだ笑いながらそう言った。確かに見た目的にはそうかもしれないが、実質的には私が保護者だと思うのだが。


「ヘルが保護者なの?僕じゃないの?」


リューが涙目になった。イケメンの涙目は見ていて辛い。あ、でも昨日対等だって言ったばかりだっけ。


「分かった。俺達は保護者と被保護者の関係じゃなくて、友人だ。」


友人ということにしておけばいいだろう。


リューが目を輝かせる。その代わり私の左で爆笑しているノエルがいるが、放置しよう。


そんなことをしているうちに王都についたようだ。……というか王都かどうか、人間界の情報をあまり持っていない私には分からない。


大きな壁が聳え立っていて、中の様子が全く分からない。


透視の魔法を使えば、すぐに内部が分かるが、ここで使うのは野暮というものだろう。


小さな門があり、そこに何人かの兵士がいる。また、長い列が門に繋がっているので、わざわざ並んで待たなければいけないということが分かった。


私がうんざりしていると、ノエルが(こまね)きをしてきた。そのままリューと一緒にノエルについていくと、別の門があった。


さっきより少し大きく、金色の装飾がしてある。先程の小さな門との違いはもう一つあって、それは、誰も並んでいないのだ。


え、ここ、お偉い様用のとこじゃね?


私達がこんなところ来ていいはず……


「こーんにちはー。今日はお友達も一緒に入るね〜」


私の腕にしがみついたノエルはさらっと言って、門を通った。

私達3人を見た門番も、


「聖女様!お勤めご苦労様です!」


と敬礼して私達を通した。そういえばノエルは聖女様だったな。


「……警備ゆっる。」


私の小さな独り言を聞き取ったらしい、ノエルが私の腕にしがみついたまま笑顔で言った。


「ヘルがそう思うのも無理もないかもね。けど、不審者が1人や2人、入ってきても叩き潰せるほどの戦力は王都内にあるから問題ないよ。」


ふーん。まあ、この場合はただの不審者じゃなくて勇者と魔王なんだけど。


で、ノエルは何処に行こうとしてんの!


ノエルは私とリューを引き連れたまま、お城に向かっている。

お城って!リュー(勇者)ならいいかもしれないけど、私は『職あり』でもないのに!……いや、魔王だからある意味『職あり』なのかも。


ノエルに連れられるがまま、私とリューは王城内に入った。


魔王城も似たようなものなので私は緊張したりしないが、平民のリューはガッチガチに固まって側から見ても緊張しているのが一目で分かる。


コンコンコン


ノエルが扉を3回ノックすると、中から「どうぞ。」という声が聞こえたので、その部屋の中に入った。



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