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もう死ねないロボ転生  作者: 英摩
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零話「焼きそばパンと、ギャル、最後の青春」

一話の前の話です。次回から毎週金曜更新予定です。

 

 いつものように購買で買ってきた焼きそばパンを持って誰もいないはずの屋上に上がった俺は、そこに待っていた光景を目の当たりにして思わず手にしていた焼きそばパンを取り落とした。



 そこには女子が屋上のフェンスに股をかけていた。



「いや、お楽しみ中とは知らなかった。すみませんでした、失礼します」


「まてまてまてまて!! 野中、勘違いしてんじゃねーーー!」


 すぐに降りようとした俺に女子が慌てる。

 ふむ、てっきりそういう現場に出くわしたのかと思ったが。ん、ちょっとまてよ、


「なんで俺の名前知ってんだよ?」



  「同じクラスだろうが!! 覚えとけよ!!」


 ん、そう言われれば確か……。


 女子の格好は茶髪がかったロング、うちの学校のものとは思えないような制服。もうその役目を見失ったのかと思うほど短いスカート。そう、世間一般敵にはギャルとかいう人種であった。


「あ、お前、ビッチ澤か」

「道澤だ! わざと間違えてんだろ!」

 道澤が俺に怒鳴る。


「へー俺、お前に存在を認識されてたんだな」


 意外と視野が広いギャルに感心した。


「知ってるも何も……。あんた学年一のオタクじゃんか」

 む、俺はオタクじゃない。ただラノベ収集やアニメ視聴が大好きな一般人だ。それをオタクと言ったら本物に失礼だろうが。


「それよりも……じゃあお前そんなとこでナニしてんだ?」

「絶対まだ誤解してるだろ!! もう……」

 呆れたようにため息をつきながら彼女は切り出した。



「あたし……今から死ぬんだ」



 俺は食べようとしていた焼きそばパンを地面に取り落とした。

(あぁ……もう袋から出してたのに)

 食えなくなったパンを半泣きで回収している俺を横目に話し続ける道澤。


「元友達に隠してた趣味がバレちゃって……。正直結構引かれたよ、言いふらされてあんなあだ名まで付けられちゃってさ。知ってるだろ?あたしのあの酷いあだ名」


「ビッチ澤のことか?すまん、あれは悪かった

 よ」

「それはあんたがさっきつけたあだ名だろーが!! それにあたしは処女だ!」


 勢いですごいことを口走った道澤は自分の放った言葉に気づき赤面する。


「っぶフっ!」

 それが面白くてフいてしまった。


「なんだよ!人がせっかく話してんのに……死んでやる!!」

 そう叫んでもう片方の脚をフェンスから外した。そのままフェンスの向こうにある狭い足場に立つ。そこから先へ進めば5階分の高さからグラウンドに真っ逆さまでこの世とバイバイだ。


「道澤、お前そんなに転生したいのか? やめとけよ、あるかどうかもわかんないんだぜ」

  「は? 何言ってんの!?」


 ふむ、自殺をするならそれしかないと思っていたのだが……。違うのか?


「いじめだよ、いじめ。今、その元友達にいじめられてんの、あたし」


 そう叫びながらフェンスごしの彼女は目を伏せる。グラウンドに。


「結構酷くてさ。それ。あたし、もうボロボロなんだ~」

 やはり三次元。俺の期待を裏切らない安定のクソさだ。


「もう、疲れたんだ。あっちに行ったら、少しは楽になるかなって」

 そう言ったきり黙り込む。


「死ぬなよ」

 風の強い今日でも彼女に聞こえるようにはっきりと告げる。


「えっ?」


「知ってるか? 俺にはそもそもお前もみたいに元友達なんかもいないんだぜ。だから、教室で奴らが固まって食べてるなか、一人で食うのは気持ち悪いんだ。まるで自分がコミュ障で陰キャみたいでな。俺は孤独が好きなだけなのにな」


「……」

「ここでお前が死なれると、数日間ここの入口に例の黄色いテープが貼られることになる。その期間、俺はどこで大好きな焼きそばパンを食えばいいんだ! いや、下手すればこれからずっと屋上は危険だからとここの鍵は永久に開くことは無いかもしれん!! そうすれば、俺はあのパリピとリア充の巣であと一年強焼きそばパンを貪らなくてはならないんだッ」


「…………」

「そもそもこの屋上は整備のおっちゃんが入ったあと鍵をかけ忘れたのを俺が目撃し、ボッチ飯に使い始めたんだ。 俺だけの聖地だ!! 他に許可なく侵入は許さん!! ……だからッ」


「だから……っ!」


 俺は助走をつけてフェンスに掴みかかりガシャガシャ音をたてながらのぼる。


 道澤がそんな俺を不思議そうにみている。

 何してんだ俺。何してんだ俺。


 俺はやっとの事で道澤と同じフェンスの向こう側へと立った。


「ここで一緒に……メシを食おう」


 驚いたように俺の顔を見つめる道澤。


「……っぷふ!」

  「っんな!?」


 突然道澤は腹を抱えて笑い出した。


「あははははははは!!ふふふ、はは!! あんたそれ、口説いてんの?三次元に興味あったんだ、 ごめん、ははは、それともあんた孤独が好きとか言っといて、寂しかったの!? はは、あははは!! 顔真っ赤!!」


 こいつ!!!


「死んでやる!!」


「はは、ごめんって、あははは…馬鹿みたい……!」


 俺も転生には憧れているが、だからといって自分から死ぬのはもったいないと思う。せっかく与えられた命なのだ。有効活用してすり減らしていってほしい。


 そんな俺の気持ちを、この女は!

 恥ずかしいーーーっ!!消えてぇーーーー!!


「はぁ……いいよ、一緒に食べたげる」

「へ?」


 ようやく笑いの虫が収まった道澤が涙目で告げる。

「明日から一緒に食べたげるって言ったの! あんたのボッチ飯は終わりっ!」


「な……いいのか?」

「別に、付き合うってわけじゃないからね。あんたのこれからがあまりにも悲惨だったから、優しいあたしは同情しちゃった!」

「確かに悲惨だけども!!」


 道澤はもう一度クスクスと可笑しそうに笑った。


「じゃあ……よろしく」

「ん。よろしく」


 俺は道澤と少し照れながらも握手した。


 その時だった。今日ただでさえ強い風が屋上というのも相まって、さらに強くなって2人に吹きつけた。


「あっ……」

 それに風に煽られた道澤が足をふらつかせ、屋上のへりから足を外した!


「道澤ぁッ!!」

 俺は握っていた手で必死に引き戻そうとするが人一人持ち上げる力が万年帰宅部の俺にあるはずもなく。


「クッソオオオオオオオオオオオ!!!!」


 二人の身体は宙を舞った。


 落下。



「野中……ごめん」


 着血。




「知ってる?1組の道澤さん、屋上で飛び降り自殺したらしいよ!?」

「あー聞いた聞いた! なんか警察がいっぱい来てたよねー」

「っていうかあの屋上って行けたんだー! 今度どんなのか見てみよー」

「やめときなよー。幽霊がでるかもよぉ」

「怖ぁーー」

「そういばなんかもう一人一緒に死んでたんだってー」

「えー誰ー?」

「なんか、野ぐち? くんとかいう人ー」

「知らねー」

「あー、なんか存在感ない奴ー。趣味とかも聞いたことねー」

「ってお前1組だろうがー!なんか知っとけよ」

「知らねーよ! 道澤はなんかダチと最近ギスギスしてたけど」

「でも驚きだよねー!道澤さんその野ぐちくんと付き合ってたらしいよー」

「マジかよwwどこ情報?」


「なんかー落ちたとこのグラウンドで手繋いだまま死んでたんだってー」

「えーすげー! 心中ってやつ?」






 これが俺のくだらない死。


 これから始まるのは俺が駆動してから、



 死ぬまでの物語である。

次は二話書きます。

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