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旅をするケモノ  作者: つくるんです
3/59

その2

と、言う事は……。


居た!扉代わりの毛皮の隙間からこっちを見てる男の子がいる。

きっとあれがオーザ君だな……。


恐らく入るタイミングを伺っているのだと思うが、彼にとっては自分の家な訳だから原因は俺か……。

あまり注視しすぎて、さらに入りにくくなったりするのもアレかと思ったので出来るだけ気にしてない風を装う。


ミヤさんの入れてくれた緑茶っぽいものを飲みながら、ルナちゃんとミヤさんの会話やオルバさんとの会話をしていると、入口の方から足音が聞こえて来た。


「オーザ!んなトコで何やってるんだ?」

そんな男性の声が聞こえてくる。

問われた本人はと言うと、

「いや、あの………。ちょっと…………。」どんどん声が小さくなっていく。

「ほれ!さっさと入れ!」

結局オーザ君は自分のタイミングで入ることは叶わず、首の付近の服をつまみ上げられて失意の入室となったようだ。


「やぁ。さっきぶりだね。オーザ君。」俺がそうやって声を掛けると、耳をへにょんとさせてコクリと頷く。

そう、耳だ。

耳が生えてる。

いや、俺にも生えているんだが普通の耳だ。

ミヤさんに飛びついたルナちゃんを見ても気付いたのだが、人間の耳の他に頭の上の方にも獣の耳が付いているのだ!


ちなみに尻尾もある。そしてルナちゃんの耳と尻尾はピンと張ってブンブンと振られている。

オーザくんの耳はへにょんと垂れて、耳もだらーん、だ。

本当に対照的な2人だな。

これがいわゆる『けもみみ』か!と、あまり失礼にならない程度に観察してしまう。

いや、しょうがないよね。うん、しょうがない。これは自然の摂理だ。

だって、そこにモフモフがあるんだもの。

モフらせてくれないかな……。仲良くなったらさせてくれるかな……?


そんな事を考えていると、オルバさんが入ってきた男性に声を掛ける。

「呼び戻してすまんな。ザンジよ。」

「あぁ。ちょうど上手い事獲物が取れたところだったからな。問題ない。」

そうか、この人がザンジさんか。

俺が身長170Cm程だから、ザンジさんは180くらいはあるのかな?

ミヤさんは150程だから、なかなかの身長差夫婦だな。


「…………森王の…………この子が………ふむ………。」

「恐…く、落ち…じゃろ…て…、」

オルバさんもザンジさんも普通に話しているんだが、正直あまり聞き取れない。

それもこれも、俺の隣に座るルナちゃんに質問攻めにあっているからだ。

天真爛漫と言う言葉がぴったりと言うか、本能の赴くままにしゃべり続けている。

最初の質問に答える頃には、もうすでに次の質問が飛んでくる。

そしてそのさらに横の椅子に座り、ルナちゃんの陰から俺を観察する、オーザ君。

その2人をニコニコと微笑みながら、見守るミヤさん。


オルバさんとザンジさんの会話は一段落したのか、オルバさんが俺に話しかけてくる。

「まぁ色々と聞きたい事や、これからの事などあるじゃろうが、そろそろ夕餉の時間じゃの。」

外を見てみると、空がうっすらと赤く染まり始めている。

時間を意識したからか、俺の腹の虫が自己主張を始める。

「ぐぅ~~。」

そういえば、目覚めてから何も食べてないしな。

羞恥に顔を染めるよりも早く、ルナちゃんが

「あははははは。あたしもお腹ぺこぺこー!」

オーザ君もうんうん、と頷いている。素直な良い子達だな。


「あらあら。それじゃあ食事にしましょうか。ルナ、オーザ2人とも手伝って。」

と、2人を連れて奥に向かって行く。

俺まで食事にお呼ばれしてもいいのだろうか?どうすれば……?と周りを見回すと、ザンジさんは頷き、オルバさんが

「同じ加護を持つ者同士、家族同然じゃ。」

と、言ってくれた。


ザンジさんも、

「子供が遠慮なんかするんじゃねぇ!」と言ってくれた。

ありがたいことだ。家族同然だと言ってくれるとは………。

でもさすがに子供扱いはちょっとなぁ……、と思い

「もう28になりますし……」

ザンジさんとそう変わらないのでは?と、口にすると2人とも驚いた顔をしている。


「いや、どう見てもお主28には見えんぞ……。どう見ても15~6と言ったところじゃろう………。」

いやいや、さすがに日本人が若く見えがちだとは言ってもさすがにそれは……と、言うと

オルバさんが、

「もしや………。」と言った後に考え込んでしまった。


どうしよう、この空気……。

「あのぉ……」俺が声を発すると、オルバさんが再起動した。

「自分で見るのが一番早いかもしれんのぅ」

そう言うや否や、両手を合わせゆっくりと横に広げていく。

何が何だかわからないままに、見ているうちに段々とオルバさんの両手の間の空気が揺らぎ始める。揺らぎはどんどんと大きくなり、目に見えて空気が圧縮されていくように見える。


俺が目を白黒させているうちに完成したのか、オルバさんの両手の間には輪郭部分はぼやけているが、しっかりと反射をする『鏡』のようなものが浮かんでいた。

「ほれ。見てみるがいい。」


覗き込んでみるとしっかりとした鏡だ。

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!すげぇ!魔法みたいだ!いや、魔法だ!すげぇ!」

俺が大興奮して、叫んでいるとオルバさんが苦笑しながら

「そっちは後で説明してやるわぃ。今は確認が先じゃ。」


おっと……興奮しすぎた……。いや、普通興奮するだろ!

魔法だぜ!俺だって15年ほど前にはしっかりと、中二病を発病しファンタジーに憧れた事だってある。男の子なら当然だろ!…………当然……だよな?

まぁ何にせよ、まずは確認か。あとで魔法については説明してくれるらしいし、何をどう確認するのかはわからんが、覗き込んでみよう。


うん、普通だ。作られた手段さえ無視してしまえば至って普通の鏡だ。

その証拠に、俺が映っている。高校生くらいかな?

この頃は良かったなぁ……。体力もあったし……。今じゃ軽いぽっちゃりってトコだもんなぁ………。

部活で柔道をしながら、街の空手道場に通ってた頃だな。

まぁ、イケメンとまではいかないがそれなりに見れないわけでもないよな。

と、角度を変えて見たりしてみた。うんうん。若い!この一言に尽きるな。


「いやぁ、若いですねぇー。」こういう過去を見れる魔法ってのもすげぇよなぁ。

俺も使えるようになったりするのかなぁ?出来るようになったらいいなぁ。

感心している俺に、さらに燃料が投下される。

「それは現在の姿じゃよ。」

ん?

「ははは。またまたぁー。」

オルバさんとザンジさんが揃って首を横に振る。

「え?……マジで?」

今度は2人揃って首を縦に振る。

「は?え?あ?はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


俺の大声に驚いたオーザ君が食器を落とし、興奮したルナちゃんが俺にタックルをかましてきたことは大した問題じゃないと思う。



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