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*21*運命の糸(後編)


 それは期待していた通りの結末。

 探していた結末なのに、頭を鈍器で殴られたような感覚を覚えた。

 


 そうだよ。俺は何を期待していたんだ。

 最初から分かってたことじゃないか…。

 彼女が初めて会ったときに言っていたじゃないか。



 “私もしかして死んじゃってんのかなって思うのね”



 そう言ってたじゃないか。

 そして何よりも、その事実こそが武山優希がミオだと示しているようなものじゃないか。

 

 

 …それでも、どこかに期待してたんだ。

 生きてるかもしれないって…。


 

 だって、あんなに暖かな体温を持っていて。

 心臓だってちゃんと動いていて。

 俺となんら変わらない。

 何一つ変わらないように思えたんだ。


 あの桜の木の側にしかいられないことや、1時間しか存在できないことを除いて……。


 いや、分かっていたはずだ。

 “俺と何一つ変わらない”?

 1時間で消えてしまうことが?

 桜の木から動けないことが?




 俺は突きつけられた真実に胸をえぐられるほどの痛みを受けていた。


 この先の真実を聞くのが怖い。

 真実を知ってしまえば、いずれミオの存在を否定することになるのではないだろうか。




 知らない方が……知らないままでいれば…このままミオと何も考えずに一緒に居られる……?

 


 俺はその自分の考え方に苦笑した。

 また、逃げるのか。

 また、現実から目をそらすのか。

 また、同じことを繰り返すのか。


 いつまで同じところにいるつもりなんだ俺は──。


 もっと強くなろう。

 君を受け止めるために。

 君の“すべて”を、君と一緒に受け入れるために。

 

 君のために俺は強くなろう。 


「先輩……」

 やっと俺はそこで他の3人の3年生のすすり泣く声が耳に入ってきた。

「そうか…卒業してすぐに…」

「病気だったの?」

 大谷先生がそこで口を開いた。

 俺がさっき病気だったという話をしたからだろう、と彼女の思考経緯を推測する。

「いえ。確か交通事故だったはずです。でもすごく綺麗な顔で、眠ってるみたいだった…」

 俺の脳裏にミオの笑顔がよぎる。

「お通夜に行ったの?」

 半分以上頭が使い物にならない俺の代わりに大谷先生が質問してくれる。

「……はい」

 そう小さく答えると、また神崎さんはその時のことを思い出したのか、涙をこぼした。

「そっか……辛いことを思い出させてごめんな」

 俺は神崎さんの頭をそっと撫でた。

「もしかしたら、その子、俺の幼馴染かもしれなくてさ。もしそうだとしたら……俺も線香あげたいな……」

 

 2年の間に引っ越していなければ、と神崎さんは快く携帯に記録された武山さんの住所を教えてくれた。


 ミオ。

 本当に急激にこんなに君を近くに感じるんだ。

 もしかしたら君に手が届くかもしれない。


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