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*16*サクラサク

 

 何も見えない。

 

 目を開けても。

 閉じていても。

 そこはどこまでも続く真っ暗な世界。

 深い。

 深い。

 闇の中。

 

 私は…なぜここにいるの?

 誰かいないの?

 

 助けて…

 助けてっ!

 

 誰か返事をして!

 

 当たりを見回しても、誰もいない。

 何もない。

 突然、体に寒気を感じて私は身を縮める。

「嫌……こないで…」

 やっとの思いででてきた声は情けないほど震えていてさらに恐怖が襲う。

 全身が震える。

 立っていられない。

 私はその場にへたり込んでしまった。


 怖い!


 何か嫌なものが近づいてくる!

 何かわからないけれど…

 すごく嫌なものがゆっくり迫ってくる!


「助けてっ!」


 私はその恐怖から逃げようと、何とか立ち上がって走り出す。

 前に進めているのかどうかわからない。

 でも走った。

 迫りくる恐怖からできるだけ遠くに、本能的に走った。


「いやーーーーっ!」


 助けて!

 こっちにこないで!

 捕まったらいけない。なぜかわからないけど、捕まったら私は私でいられない気がする。



 怖い!



 誰か!

 誰かっ!

 誰か助けてっ!



 ふと、目の前にぼんやりと淡い小さな光が見えた。

 迷わずその光に手を伸ばす。

 すると、触れた光が一瞬にして眩い閃光を放った。

 耐えられずに目を閉じる。

 目を閉じているのに、まぶたの裏が赤く見えた。



「ミオ!?」 

 

 不意に優しい声が耳に届いた。

 ゆっくりと目を開けると、そこには心配そうに覗き込む青年の顔があった。

 その青年の顔を見て一瞬にして私の体から力が抜けるのがわかった。

 へなへなと地面に座り込んでしまう。

 だって、もう大丈夫だから。

 なぜだか分からないけど、そう思った。

  

 そんな私の肩を、青年の大きな掌が少し強く揺さぶる。

「ミオっ!?どうしたんだっ!?」

 両肩から彼の掌のぬくもりを感じた。

 見上げると彼の肩越しに、満開…とまではいかないが、ピンクに染まる桜の木が目に入った。

「桜…咲いたね…」

 少し間をおいて、優しい彼の声が聞こえた。

「あぁ、綺麗だ…」


 本当に綺麗。

 私が青年が視線を戻すと、いつの間にかあふれた涙で彼の顔がにじんだ。

「新くん、会いたかったよ…」

 彼の手を自分の頬へと運んで。

 心を込めて。

「会いたかったよ…」

 ずっとあなたを私は待っていたのかもしれない。

 この桜の木の下で。

 

「ありがとう」

 

 ありったけの心を込めて伝えよう。

 今の私が持ってるのはこれしかないから。

 あなたを思う気持ち。

 あなたへの感謝の気持ち。


「新くんに出会えてよかった」

 

 あなたは私に色をくれた人。

 あなたの周りだけ、鮮やかな色がある。

 

 真っ黒な闇から、あなたは私にこんなにたくさんの色をくれた――――。

 

 彼は私の頬を流れる涙を拭いながら、何ともいえない表情で私を見つめ返した。

 言葉はいらなかった。

 

 このまま、抱きしめていて。

 今が永遠でないなら。

 できるだけ長く…。

 

 また、私があなたのところへ迷わずに帰って来れるように。

 

 今はこのまま……。

 


ここまでお読みいただきありがとうございます。

感想・叱咤激励・読んでます!の報告等お気軽にお願いします。

さあ、物語はあとは転と結です。ハッピーエンド目指して頑張ります!

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