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ラーメンから痴話喧嘩の巻

時空間研究クラブ前。俺はノックをせずがらがらと入っていった。


「すいません益川さんおりますか?」


「また誰かきたぞ。みーちゃん出て。」


「嫌よ。よしくんが出ればいいでしょ。」


みーちゃんによしくんの問答はどうでもいい。


はやく益川という人を出してほしかった。そして結局二人で出てきた。


「益川教授は留守ですよ。」


その顔に見覚えがあった。黒髪で肌に艶があるが間違いなく江頭教授だ。


「何見てんだよ。君どこの部かな。さっきの子も同じような顔してたな。」


「あら。いい男じゃない。でもよしくんには敵わないわ」


また二人でイチャイチャしだす。その光景は噂とはまるで反対のことだった。


「あなたは…宮里教授ですよね?」


「教授なんて言われてみたいけどまだまだよ」


そんなことではない。あの犬猿の仲で有名な江頭教授と宮里教授がそーいう仲だったとは。なぜそうなったのか。


だがそれよりも万事を急ぐことがある。


「色々驚いてますがそれより…」


自分の身におきた全てを説明した。


「それじゃ君は15年後の人間で僕らのタイムマシンは完成したんだね!」


二人は両手を重ねあって喜んでいた。


「僕ら…まあそうです。それで江頭教授の指示で益川さんに会えと。それだけ紙に書いて拉致されたんです。」


「なぜ拉致までして君を送ったのか。さっぱり見当もつかない。ちなみに益川教授は今研究で海外出張だよ。」


益川のことも念のため聞いておいた。


このクラブを創設した人で今一番タイムマシンに近い男らしい。口癖のように(ハンバーグが食べられるぞ)と言うが意味はわからないそうだ。


「そういえば…」二人口を揃えて紙の切れ端を渡してきた。


「北河という人が来たら渡してと言われたんだ。君がここにいることを知ってるということは彼女も15年後の人間かな。」


は?他にも誰か来ているのか?


おもむろに切れ端を開いた。


(教授からあんたに会えと言われて来たのにどこへ行ったの?もうわけわからない。とりあえず朝練後でお腹がへったので商店街へいきます。 南野みやこ)


どういうことだ?なぜ南野が?俺を訪ねて?教授って誰だ?ますますちんぷんかんぷんになっていく。この数式は本当に解けるのか。


「教授…いえ、江頭さん、宮里さんこの人はいつ頃ここへ?」 


「30分前くらいかな」









「あの男どこ行ったのかしら」


私は朝練コースの古畑商店街をうろうろと歩いていた。そこに見覚えのある人がいた。


「魚屋のおじさんじゃないですか。なんか若~い」


「ん?あんた誰だっけな?」


おっとっと。ここは15年前だということをつい忘れていた。


「…ちなみにギュウタンは?」


「ギュウタン?俺は食ったことねえけど。」


どうやらまだいないらしい。そのほかにも見覚えのある風景に少しばかり心が高鳴っていた。


「時間旅行も悪くないわね。もしかしたらジョニー様にも会えるかも!」 


「ジョニー様じゃねえよ。なんでここにいるんだ」


みやこの目の前にたつ京介。


「変態男!どこいってたのよ!」


ミヤコの凄みにこちらも乗っかってる場合ではない。聞かなければいけないことが山ほどある。


「飯食ってないなら行きつけのラーメン屋がある。

そこへいこう。とりあえずここに来るまでの過程を教えてくれ。」


渋々ながら京介に従うミヤコ。食欲には誰もかなわない。


しばらく歩くとラーメン屋の宮本が見えてくる。


その前を沢山のマスコット人形達が行進している。


福茶の商店街繁盛パレードのようだ。


だがそれよりも京介は今の現状の整理がしたかった。


宮本の扉を開けたとたんクラッカーの弾ける音がポップコーンのように鳴り響いた。


「おめでとうございます。お客様二人合わせて御来店者数百人目です。本日は何でも無料で食べてってください。」


ミヤコは「ホントにいいの!」と大学生にもなりながらジャンプして喜んでいた。


「記念写真を撮らせてくださ~い」

店員がポラロイドのカメラを取り出した。


その時京介の頭に一つの謎が残る。


この時代の俺はまだ4才ほど。19才の俺が写真に写ってもいいのか…


「ではハイチ~…」「ちょっと待って下さい!」


自分ではかわいく決めたつもりのポーズだったようでミヤコは不機嫌になった。


そんなことはお構い無しに京介はミヤコの手を引っ張り店外に出た。


「この時代にいない俺らの写真はまずい。よくわからないがズレのようなものが出る。」


「ズレ?わからないけどお腹減ったし今更撮らないって言われたら余計怪しいでしょ」


結局二人話し合いの結果…


「ちょっと借して下さい!」「あ…ちょっと」


スポッと恥ずかしそうな中年男が二人でてきた。

「ハイチーズ!」


撮られた写真にはうさぎとカメのマスクを被った二人が写っていた。


さっさとマスクを返し、中年男たちはパレードに戻っていった。






ズルズルと麺を啜りながらも一つ一つノートに書き込む。


「まず俺と南野は保健室にいた。そして俺は江頭教授に研究室に連れていかれた。そこでタイムマシンができたから乗れと言われ、断ったら誰かに殴られ気絶した。」


「私も同じよ。あんたが保健室から出てったすぐに宮里教授に連れてかれて、同じこと言われ断ったら誰かに殴られたの。」


お互いに受けた指示についても話した。 


「なぜ俺と接触を…俺は南野がこっちにきてることすら知らなかったのに。」


「…あとタイムリーがどうとか言ってたわ。」









「あんたたちやっぱり知り合いだったのか。」


教室には江頭一人でいた。なんか先程より元気がない。


「江頭さん時空間研究の言葉でタイムリーという言葉がありますか?」


「タイムリーね。それは…」


タイムリーとは全ての事柄の覆されぬ運命。


例えば大ヒット曲が出るとする。その曲が出る前に戻りその曲を発表してもヒットしない。それどころか曲自体が何らかの形で本来その曲が作られるときまで消される。


他にも交通事故で亡くなった人を過去に戻り救おうとも何らかの力でその人は交通事故に会う。


決められたものは動かないということだ。


「…わかったかね。つまり彼女が年上のブサイクな男と浮気をしていた過去。それは覆らないということ…」


京介もミヤコもなんの話をしているのかわからなかった。


その時クラブの一枚扉が強い音をたて宮里が入ってきた。


「さっきから聞いてれば!あんな男知らないわよ!大体あんたはなんなのよ!毎回何の約束しても30分遅れるし…」


「浮気者で方向音痴の君に言われたかないね!だいたいきみは…」  


京介と別れてから約2時間。いったい何があったというのか。


争い事に巻き込まれないようそそくさと教室を後にした京介とミヤコ。





「南野は何に乗って来たんだ?」


「椅子形のタイムマシンよ。屋上にあるわ。」


「宮里教授は屋上にきみを拉致したのか?」


「わからないけど屋上ではないわ。間違いなく室内だったもの。」


京介は一つの仮説が思い浮かんだ。もしかしたら…


「あんたなに考えてるの。」


「…いやちょっと考えごとが…それよりもう帰ろう」


ミヤコはふいに口を閉じもじもじしだした。


「ねえ…せっかく時間旅行してるんだから…もう少しゆっくりしていかない?」 


このお気楽野郎と言いたいところだが、それは俺の心にもあった。どうしても知りたい事がある。


「…いいよ。ただ俺は2000年にはもう用はない。」


「え、いつなの?」


「2005年、10年前だ。」


ミヤコは驚きの表情を隠せずにいた。


「…わたしも。2005年の8月9日…」


京介も上に同じ。


「…俺も。偶然か?」








校舎三階の使われていない教室と屋上は窓から除き混めば直線にして5メートル離れてなかった。


なお説明書を読んだところ時計にトランシーバーの機能がついていることと、お互いのいる時間を把握できることが判明した。


「南野。時間は午後15時だ。」


「わかったわ。」


京介は演劇部から借用してきたロープをどこかに硬く結ぶようミヤコに指示した。


「なにすんのこれ?」


「後で説明する。とりあえず結べ。」


ミヤコが椅子の足のところに結ぶと京介はタイヤのタイヤ本体に大巻に結びつけた。そしてお互いに合図を決める。


「GO!」


またあの大渦がくる。だが大分慣れてきた。ちゃんと意識を持っていればジェットコースターと変わりない。






ふとミヤコは目が覚める。そこは学校裏の山麓だろう。薄目で立ち入り禁止の文字が見える。昔叫ぶ女の霊がいたらしいが昔通った道場の高山師範代の方がよっぽど怖い。


「ちょっと北河くん起きて。」


京介が目を覚ますと目の前にミヤコとそのタイムマシンがある。ということは… 仮説通り。


「やっぱりな。」


ミヤコはなにがなんやらわからない。


「さっきの教授の喧嘩覚えてるか?30分遅れてくるだぁ、方向音痴だとか。」


ミヤコはうんうんと頷く。


「実は俺は午後14時30分にセットしたんだ。30分遅れて15時。そしてこのロープは…」


「方向音痴だからどこに飛ばされてもついていけるようにってことね。」


「さすが、空手バカってだけじゃないんだな。」


「数学バカに言われたくないわよ。要するにこのタイムマシンは教授自信ということか。そんなことってあるのね。」


そのあたりにおいてあったブルーシートを拝借しタイムマシンを隠しその場から離れた。


夏真っ盛りで暑い日差しが肌を焼く。かき氷を食べながらお互いの目的を話し合った。


「私は初恋の人に逢いたいの。すごくかっこよくてすごく強い人。名前は…」 


「ジョニー様でしょ。」


ミヤコはその後もジョニー様のことを延々と話始めた。全てが真実かは信憑性は薄い。


「であんたは?」


怨みつらみが戻ってきた。俺を陥れた野郎を一発殴ってやろうと心に決めていた。まさかそれが叶うとは。


「昔、警察に二時間拘束されたことがある。そいつは俺の名を語り、翌日に俺は学校で笑い者だった。そいつを取っ捕まえてやるのさ。」


二人は性格も目的もバラバラながらこの異国の時間で手を取り合った。



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