運動場にて
今回急ぎ過ぎたかもしれません
よりにもよって彼女か…
僕が自分の運のなさに嘆いていると、彼女に笑われてしまった。
「ふふ、駄目よ」
「?何がです?」
「まだ子どもとはいえ女性の前で溜息をつくなんて」
「いや、まぁ…そうなんですけど緊張しちゃって」
「あら、同年代なのだから敬語は無しにしましょ?」
「そう…だね。こっちの方が話しやすい。立花さんが相手で良かったよ」
「ふふ、私もよ」
はたからみれば仲の良い二人の会話に聞こえるが、実際は相手の隙を探す戦いが始まっていた。
この人、隙を隠すのが上手いな。と啓介
この子の隙、凄く読みにくい。と楓
どちらも対戦相手が自分にとってやり辛い相手だと理解した。
「それではこの区画をいまから30分だけ異世界とつなげます。自分の能力の再認識をお願いします。それでは始め」
途端に色んな所で戦闘が始まった。自分の能力で相手を潰そうとする者、言われた通りに確かめるだけにした者。様々だ。
「ねぇ、橋本君?」
「?」
「能力について詳しい?」
突然何だ?
始まって突然質問された事で動揺してしまった。
確かに能力についてはこれまで習って来たので知っている。
能力とは先天的なものと、後天的なものの二つがある。
先天的なものは、その人の願望を元にしていて、一人につき一つ。二つ以上は原則として持っていない。
対して、後天的なものは魔術や魔法と呼ばれ、身体に刻み込むことで使える様になる。刻むと言っても体を傷付ける訳ではなく、ただただ繰り返し使い、身体に術式を憶えさせるのだ。よって、幾つでも覚えられる。
そして、どちらも魔素という物質で起こる現象だ。
先天的な能力は体内の魔素を、後天的な能力は体外の魔素を体内の魔素に繋げて使う。
「そう…詳しいのね」
僕の答えに満足したのか、楓は頷く
「つまり、もとから自分で持っている魔素の量で勝負は決まるってことよ」
「…それは、もう私が勝っている。と言いたいの?」
「さぁ?どうかしら?」
可愛らしく首を傾げながら彼女はゆっくり近づいて来る。先程の質問は身体に魔素を行き渡らせるための時間稼ぎか…
彼女の策にまた驚かされる。
「それじゃ、行くよ」
「うん、どうぞ」
楓は魔素を解放した。
僕も急いで術式を組み上げる。
「よし!組みあ「遅いよ!」ぐへっ」
結局、間に合わなかった…。立花さん速いなぁ…。
そんな事を感じながら啓介は意識を失った。
気付くと目の前が灰色だ。
いや違う。これは雲だ。空の色など見せないと言わんばかりに、分厚い雲が空を覆っていた。体を起こすと乾いた荒地が目にはいる。何処まであるのだろうか。終わりの見えない荒地がそこに広がっていた。
僕はこの場所を知っている。そう直感した。そして、自分がやるべき事もすぐに理解した。
「やっと来てくれたのね」
うん、またせてごめん
「うん、許してあげる。来てくれたから」
それじゃ、行こうか
「うん!」
僕は手を伸ばす。彼女を助ける為に。
そして門は開かれた
やっとバトルと思いきや、すぐ終わらせてすみません。
今回で彼女を出そうと思っていたので、こんな形になってしまいました。
バトルはクラス分け試験本番までお預けになりそうです。