音楽館~運動場
啓介はアイドルがここにいるのには特に驚かなかった。
寧ろ、考えればすぐ答えが分かりそうな質問をした楓に驚いた。
案の定、彼の考えた通りの答えが返された。
「そう思って頂いて結構です」
「でしたら、生徒同士が戦っても構いませんね?」
「ええ、構いません」
そして、やはり啓介が考えていた展開になった。
◇ ◇ ◇
「なぁ、啓介。さっきのあれって、つまりどういう事だ?」
説明会が終わり運動場に移動していると、兵五郎が話し掛けてきた。もちろん、沙耶も一緒だ。
「あれって何だ?」
「たから!楓ちゃんの言っていたことだよ!」
「あぁ。そんな事か」
もっとヤバイ事かと思ったよ。
「そんな事って…」
沙耶までもか…
「まぁいい説明してやる」
説明する為に一度頭の中で整理しながら話す。
「彼女が言って事を真に受けるな」
『えっ?』
本当に気づいていなかったのか…
「つまりな。彼女の質問は考えればすぐ分かる様なもので、質問自体に意味はないんだよ。試験のルールで教師が言ってただろう、『生き残る為の手段は問は無い』って」
「つまり、徒党を組もうが、教師側に寝返ろうが何でも有りって事ですか?」
頭の回転が早い沙耶が驚いた顔で、僕が言いたい事を全部言ってくれる。
兵五郎に関しては驚き過ぎて上手く話す事も出来ていない。
「教師側に寝返るのは難しいと思う。教師側は狩る側だから。チームを組んだり、味方を罠に嵌める戦法は悪く無いだろうね」
何でも有りって言われたからなぁ~
「だから彼女はあえて、質問したんだよ。」
彼女の発言の後、館内は一気に騒がしくなった。隣に座っている者が、自分を襲って来るかも知れないのだ。誰であろうと不利益は蒙りたく無い。
「そこまで、予想もしませんでした。流石ですね、啓介君」
まぁ実際、彼女が話している時に思い付いただけであって、彼女が何を考えているかは分からないけど
どちらにせよ、楓がとんだ策士である事は事実だ。注意しておこうと決めた。
「ここで二人一組になってもらいます。人選は此方でしましたので、呼ばれたら来て下さい」
運動場に着いてすぐ、そう言われた。
兵五郎と沙耶は同じペアになった。
さて、僕は誰となるのやら。知らない人だらけだなぁ~。まぁ、彼女でなければいいや。
そう考えていると、僕の名前が呼ばれた。
まぁね。確率的にはあるだろうさ。だけど、当たりたくないと思った直後にこれだもの。自分の運のなさが嫌になる。
「宜しくお願いしますね、橋本君」
そう僕の相手は立花楓だった。
次の回でやっとバトルが出せそうです。