ハイテンション俳句部
僕は俳句好きですよ。
扉を開けたその先は……俳句部でした。
「おーし!おまえら。我が部の第一条を叫んでみろ」
艶のある黒髪ストレートの美髪に、くっきりとして自身に満ち溢れた瞳、そしてその上品な口。どこからどう見ても絶世の美少女。その可憐な唇から……ドスの聞いた、地獄の底からでも響いてきたような声で、目の前にいる後輩たちに指示が出される。
「辰夫先輩!!おっす!ハイテンション俳句部ぅぅぅうううーだーいいちじょうー!!!」
金髪リーゼントをセメントで固めた男。鉄のリーゼントの二つ名を持つこの男の本名はリーゼント。鉄の二つ名を持つ……がセメントだ。ちなみに彼はハーフなので金髪は地毛だ。ただ、セメントで固めてしまったので傍目からは灰色にみえる。ただのバカだ。
何はともあれ、いつものようにリーゼントが号令をかける。すると、横に並んでいた数名が大きく息を吸い込み、声をそろえて第一条を叫ぶ。
「あばばばばばば!!!ずごごごごご!!うらららら!!」
「うむ!!その通りだ諸君。今日はいつも以上に気合いの入った良い第一条だった。うらららもよく春を表していて、よい季語だ。ただし、字が余りすぎてるのはいただけんな。ここは俳句部。五・七・五の掟は守らねければならぬ。よって」
辰夫のまるでダイヤモンドのように輝く瞳が、リーゼントを捉える。
「よって、号令をかけたリーゼント。お前に罰を与える!!」
「えっ!痛く…‥痛くしな(ry」
「問答無用!!食らえー!!!」
唸る辰夫の右ストレート。その狙い澄まされた右腕は、吸い込まれるようにしてリーゼントのリーゼントの先端に空いた小さい空気穴へとつまようじを差し込んだ。
「ぐあぁぁぁー!熱気が、熱気がこもって頭がかゆいーー!!誰か、誰かハンマーを持ってきてくれぇぇぇ」
「説明しよう!!セメントで固められたリーゼントのリーゼントは、その熱を先端に開けられた空気穴によって放熱していたのだ。この空気穴を塞がれてしまったリーゼントの頭皮は、きっと熱がこもってしまって異様にかゆくなってしまったのだ!!血行がよくなったら何故かかゆくなるてきな、たぶんそんな感じだ!」
この部活で一番博識ぶっている、何かと付けて説明したがるタカシだ。母親からキャベツを買ってきてと頼まれてアスパラガスを買っていたので、きっとバカだ。
タカシが説明をしている間に、頭のかゆみが最高潮に達したのか、リーゼントは我慢できずに床にリーゼントを叩きつけて、その頭皮を開放しようとする。
「だめだリーゼント!!お前からリーゼントを取ったら、ただのハーフイケメンだぞ!!世界の半数がお前の敵に回るんだぞ!!!」
辰夫のその言葉に、リーゼントは一瞬頭を床にたたきつけることを躊躇するが、次の瞬間意を決したように、腹の底から声を上げる。
「うぉぉぉぉぉ!!俺からリーゼントを取ってしまったら、世界の半数を敵に回したハーフイケメンだとー!!!」
「そうだ!ただし、バカだがな!!」
「なにそれ!かっこいいじゃんんんんんんん!!!」
「あっ!こいつ裏切ッ…‥‥」
ドゴーン……部屋全体が揺れると同時に視界を遮るように埃が舞い上がる。……数秒。埃が収まり、みんなの目に映ったものは、コンクリートの床をまるで豆腐のように貫いた、リーゼントのリーゼントであった。
「…ごく。さすが鉄の二つ名を持つ男……だがバカだ!」
その後、地面に突き刺さったリーゼントを引き抜こうと部員総出で挑んだのだが、力及ばず結局根元からバリカンで刈ることになった。
ハイテンション俳句部の部室に突き刺さったリーゼントのリーゼントは、真の俳句王にのみ引き抜くことができるという風に言い伝えられ、後の世まで俳句部のご神体として崇められることになるのであった。
何でこうなったんでしょうか。思いつきとはいえ……初めは他の漫画のネタを俳句で使おうと思っていたのですが、オリジナルと呼べなくなりそうだったので止めました。連載のを書いてる途中の息抜きです。