3.勘違いするなよ
せっつん目線。
本人はデレてるつもり。
「う・・・あ・・・・・ごめん」
そう言ってあいつは走り去ってしまった。
部活中に隣の女子が使っているコートを何度も盗み見た。
けれど探している人物は見つからない。
そいつは・・・・幼馴染で俺が・・・す、すきな・・・・でも、ある北條 紀一、だ。
まだ告白はしてない。・・・いつかは、と考えているけど中々勇気が出ずに、自分でも良くそう思う『天邪鬼』な性格が邪魔して・・・・とそんなことはどうだっていい!
「そういえば、今週委員会があるつってたな」
他の女子にそう伝えていたことを思い出した。
5分でもやるから!と部活好きの彼女は友人の手をつかんで必死で言っていたが女子の方はすでに解散し、男子も片付けをしている時間だった。
「お前委員会だったの?」
独り言として呟いた声は近くに居た友人に聞こえていたらしい。
「いや、俺じゃない」
「じゃ、誰が・・・・って、彼女か!!!」
「な・・・・いねぇよ彼女なんて!」そうであったらいいけど・・・
「このモテ男がッ!よりどりみどりの癖して!!」
とそいつが騒ぎ出して。
他の部員が集まってくる。
「なんの話ー?え、せっつんが彼女?!」
「だから居ないって!!」
「あ!俺昨日こいつがあの山本ちゃんに告られてんの見たぜ!」
「なっおまマドンナと付き合ってんのか!」
「だからちが・・・」
「それなら俺も見た!でもそのあと速攻振ってた!!」
「なんだと!!!この罰当たり」
「しかもな、その振り方が『t「あーもう、うっせぇえぇぇぇ!」
叫んで黙らせると「なんだよー」とか「今のはお前の方がうるさかったろ」とか色々聞こえてきたが全て無視した。
「いらんこと言ってないで片付けろよ!」 あいつが帰っちまうだろう、
えー、とかあー、とかちーび、とか文句言いながらも集めたボールを部室に持っていき、部長の言葉で解散した。・・・最後の言った奴後で締める。
とにかく急いで着替え、誰よりも先に部室を出たら、ずっと探していた人物の横顔が見えた。
女子の方の部長と他の2年の先輩たちに頭を下げていた。
あいつのことだから律儀に部活に出れなかったことを詫びているんだろう。
先輩らに別れを告げた紀一が一人になったところで声を掛けようとした、
「き「きいちちゃーん」
だがその声は、他のクラスの靴箱の方から出てきた奴に遮られてしまった。
そいつは知らない奴だったが馴れ馴れしく紀一に話しかけていって、そいつを見た瞬間紀一が嫌がったのも良く分かった。
「なにしてんの?」
自然を装って紀一に話しかけると、
「せつ!」
紀一の顔色も見て分かるほど明るくなってこっちに来ようとしたが、
横に居たそいつが紀一の腕を掴んで止めようとしたから
「気安くさわんな」
ソレは紀一に向けていったわけじゃなかった。
「ごめん」
そう残して行った紀一の顔は今にも泣きそうだった。
「あぁーあ、きいちちゃんかわいそーw」
そいつがキモい笑い顔を向けてこっちに寄って来た。
勝手にあいつの名前を呼ぶな・・・
「お前誰だよ」
「えw俺のことしらねーの?サッカー部次期エースこと「そんなこと訊いてねぇよ」
要らない事を言おうとしたその声を遮る
「は?」
「お前あいつのなんだよ?」
「あいつ?あ、きいちちゃんのことかww
未来の彼氏でー、ってまだ告って無いけどぉ、まぁ、すぐOKされるからもう確定かな?w
今まではちょっと後ろから付いて行くだけだったけどw、今日いーっぱい話したし、俺のこともわかってくれたみたいだからww・・・」
紀一が嫌がった理由が良く分かった
「黙れ『変態』」
まだ続けようとしたそいつが一瞬黙り一気に顔が赤くなって、もともと醜かった顔がさらに歪んでいった。
「なっ、へんたい?お前こそ何なんだよ、いつも思ってたんだけどさ、きいちチャンが帰るときとか勝手に付きまとったりさ、家が隣だからってなんなのw迷惑がってんジャンwww」
どこまでつけてんだコイツ・・・
「は?どっちが迷惑がられてんだよ、てかキモい黙れストーカー」
「ストーカー?何それww僕はただ彼女を見守ってあげてるだけだよw」
「勘違―プルルルル―」
すんな!と続けようとした所で携帯の呼び出し音が鳴って一気に目が覚めた。
そいつを睨み付けながら通話ボタンを押す。
「はい?」
≪もしもし、せつ君?≫
その声は紀一の母の声だった。
「そうです、どうしたんですか?」
少しあわてていたようなので落ち着くようにゆっくりと訊くと
≪きぃちゃんが帰ってこないの!いつもはまっすぐ帰ってくるし遅くなるときは連絡が来るのに・・・過保護かとも思ったけど心配で・・・・≫
それを聴いて頭が真っ白になった
「・・・・俺のせいだ」
≪せつ君?どこにいるか・・・≫
気付いたら電話を切って走り出していた
「なっ逃げるのかよ」
まだ勘違い野郎の『変態』が何か言っていたが、もうどうでもよかった。
紀一が居たのは家の近くの公園だった。
時間も遅いくて彼女が良く行く図書館は空いていないし、無駄遣いしないように財布は学校に持ち込まないから他に行く当てが無かったのだろう。
まぁ俺もそれを予想してここに一番に来たのだが。
彼女は穴が開いた小さなドームの中で丸くなっていた。
「・・・・きいち」
声をかけるとその背中がビクッと震えた。
「きいち」
もう一度言うと紀一が顔を上げた。
その目は真っ赤に腫れ、涙のあとが残っていた。
「・・・う・・・」
後ろの壁に背中を貼り付けて俺から離れようとしたから、その肩をつかんだ。
「ごめん、俺が悪かった」
「・・・・ぇ・・・なんでせつが謝るの?・・・」
震えた声をきいて、自分が言ったことを思い出す。
「あれは、お前に言ったんじゃない」
「え・・・・」
「あの『変態』に言ったんだ」
「あ・・・・・」
意味が分かったようで、紀一の目に光がともった。
「だから、変な言い方してごめん」
「よ・・・かったぁ・・・・・・せつに嫌われたかと思って・・・・」
「な、きらっ・・・!?・・・・むしろ・・・」
「・・ろ?」
言葉を詰まらせた俺に目元を袖で拭っていた紀一が首をかしげた。
「す・・・・・」
「す?」
紀一にまっすぐ見つめられ、
「・・・・・・・・なななななんでもないっ!・・・帰る!」
言いかけた言葉も結局言えず顔を背けて立ち上がった。
あと少し、だったけど・・・・
「待って!」
紀一が手を掴んできた。
「一緒に帰ろう」
まだ、大丈夫。
もうあんな
「勘違いするなよ。」
まだ、近くに居るから。
終わりません!どこまでも!
忙しいですねせっつん。
変態をもっときもくしたかった。
もっとオタク用語使わせようとしたけどどんどん方向が分からなくなってやめました。
次回に乞うご期待((無理
ついでに単語解説
天邪鬼(ウィキペディア参照)
「人の心を見計らって悪戯をしかける子鬼」とされることから転じて、現代では「他者(多数派)の思想・言動を確認したうえで、あえてこれに逆らうような言動をする"ひねくれ者"、"つむじ曲がり"」「本心に素直になれず、周囲と反発する人」またはそのような言動を指して、「あまのじゃく(な人)」と称されるようになった。
元は神話から来たんですよー