2.気安く触るな
さっそく崩壊しています。
ヒロインイライラしています。
委員会で当番が回って来たので部活に遅れていくことをチームメイトに伝えて教室を出た。
私が所属しているのは、図書委員会。昔から運動ばかりの私が珍しい!とよく言われるけど人に押し付けられたわけではなく、ちゃんと自分から立候補した。誰にも言っていないけどそれくらい本が好きなんだ。
当番、というのは貸し出しや返却の本を受け取りバーコードで読み取る作業。人が居ないときは本がじっくり読めてよりどりみどりなのでこの当番が毎回楽しみだ。
「何の本読んでるの?」
そんな中私の頭の中で広げられている空想の世界を突然破いた奴が居た。
「え?あぁ・・・・はい、」
わざわざ返事をするのも面倒で、本の背表紙を一度向けただけでまたその世界に没頭する。
その人間は、隣のクラスの男子・・・4日くらい前からからもう一人の当番の女の子がインフルエンザにかかってしまって、何故かこの男子が「やってもいいですよ」と言ったらしい。
だけど私は前にこの男が「図書委員とか面倒だよねー、俺もジャンケンで負けてこんな委員会に当たっちゃったんだーw」とかニヤニヤ薄気味悪い笑みを向けられたのを確かに覚えている。・・・wって何だよ。
私は基本そこまで嫌いな人間はいないけれど、こいつだけのせいでその一瞬で私の中の人物分けファイルに『大嫌い』のフォルダが追加された。
大体「俺も」ってなんだ、私がいつそんなことを言った。同意でもして欲しいのか・・・
とりあえずその場は曖昧に受け流して、それからなるべくこちらからは話しかけないようにしていたのだけど・・・
「くそ退屈だよねww」
またきも・・・コホン・・・変な笑い顔で話しかけてくる。
「じゃあもう帰って良いよ、一人で出来るから」
というかさっさと帰れ!という意思をこめて感情を一切込めずに言った。
「いいよいいよ!女の子一人にできないしw
紀一ちゃんはエライネww他の女子もみならえばイイのに」
・・・何を勘違いしているんだろうコイツは・・・。しかも勝手に名前呼ぶなよ。
人にほめられて嬉しくない現象があることを初めて知った。
そんな時、ふといつも隣に居るある男子が思い浮かんだ。
幼馴染のせつ、あいつはあまり素直じゃないけど、こんな無神経なことは言わない。
そう思うと無性に彼に会いたくなった。
はやくこの時間がオワレ!と時計を見上げる。
そのとき丁度司書さんが準備室から出てきて、「もう終わっていいですよ」と言ってくれた。
よしさっさと部活いこう!と、とっくに準備していた鞄を半端に肩に引っ掛け立ち上がる、が
「待って待って!」と横の人物・・・先ほどから私の神経をやけに逆なでしてきた奴に腕を捕まれた。
触るな気持ち悪い!
「クラブハウスまで一緒にいこーよ、ほら俺サッカー部だしw」
・・・知るか、どうでもいい。
はぁ・・・と人に見られないようにため息をつく。
「出来るだけ早くしてくれると嬉しいな」
嫌味をこめた所でこの男には届かないことが分かったが、
「えーゆっくり行こうよwふたりでww」
という気持ち悪い発言とのろのろのろのろとした動きがさらにイライラゲージをアップさせる。
「部活大事だから、」あなたの数十倍も、
「もう行っていい?」二人で居たくないんです。
「ま・・・まって待って!もう終わったから」
・・・チッ
「あ、ねぇ、もう部活終わる時間じゃない?」
そいつがまたのろのろとその鞄を持ち上げながらわざとらしく腕時計を見た。
「あー・・・ホントだ」
誰のせいだろうね、誰の
コイツと居ると神経がいかれてしまいそうだ。
さっさと行ってれば15分は練習できたのに!
「じゃあ一緒に帰ろうよ、家東町の方でしょ?」
・・・・・・・なんで知っているんですか?
「・・・先輩たちに挨拶だけはしたいから、ごめんね?」
そんなことしなくてもいいけれど、とにかく離れたくて言い訳をつくった。
「えー、じゃー待ってるから、送るよw」
なにこの無神経超ムカつく。
これほど嫌な印象ばかり出てくる人間は初めて出会った。
「・・・何でそんなにしてくれるの?」余計なことを
「オンナノコ送るのなんて当たり前だろーw俺紳士だしww」
・・・あ、変な人なんだ変態なんだこの人!
と今更辿り着くと同時に『大嫌い』のファイル名が『変態』に書き変わる。
しかたない、一日だけ我慢しよう。明日は即逃げる。と心に決め、早足で歩き出した。
靴箱が置かれている違うので、一度分かれて一人で靴を履いているところで、先輩方を見かけて声をかけた。
「今日行けなくてすみません!委員会が意外と長引いてしまって・・・」
と本気で申し訳なく思いながら頭を下げる。
「いいよ!いつもちゃんと出てくれてるし、一週間頑張ってね。」
キャプテンさんが肩を叩きながら言ってくれた。
他の先輩たちも笑顔で挨拶してくれて、「明日は少しでも出れるようにするので!」と言って見送った。
いい先輩でよかったなぁ・・・と今までのイライラが一気に半分ぐらいに減った所で、「かーえーろっ」と再び悪夢が話しかけてきた。
心の奥底でとてつもなく深いため息をついて、歩き出そうとすると、
「ちょっと早いヨーw折角二人なんだからゆっくりかえろww」とか言ってくる。
ブチッと何かが切れる音がして
「い」い加減にしろ!と言いかけて背後から声がかかった。
「きいち・・・また何してんの?」
その人物は、私がずっと会いたかった幼馴染本人であった。
「せつ!」と近寄ったら、彼が再び口を開いた。
「気安く触るな」
・・・・せつに・・・・嫌われた?
あ、部活サボってこんな人間と一緒に居たからか。
「う・・・あ・・・・・ごめん」
誰の顔も見ずにその場を走り去った。
後ろで『変態』が何か叫んだ気がした。
ちょっとシリアス目に終わらせてみた((どこが?
つぎはせっつん視点です多分。
作者でさえいらない人物紹介
『変態』(へんたいうざいきもいしぬべき ばい ひろいん)
名無しさん。
軽いストーカー。勘違い野郎。気違い。
サッカーしてる人はカッコイイと思いこんでいる。
wばっか使う。(「わら」をわざわざ「ダブリュー」とか言ってるw)