―枕―
どうも皆様、ご無沙汰しております。てやん亭 今竹松、いまだ未熟な駆け出者の噺家でございます。そんでもって、一見様には、初めまして。どうぞこれを機に、よろしくご贔屓にして下さいませ。
それにしても、こちらに上がらせていただくのも随分と久しぶりな気がいたします。こうやって、いざ皆さんにお目見え、ってなことになると照れ臭いやら嬉しいやら、お客さん達のありがたーいお顔が神々し過ぎて、ろくすっぽ目も合わせられません。ああ、勿論、皆様はあたしのこのチャーミングでダンディで苦み走った男っぷりを、遠慮なく堪能してくださいね……え? 苦々しい顔? 誰の事でしょ?
いえ、そりゃ勿論、人間、見目が全てじゃあありませんとも。薄っぺらな面の皮より、中身の美醜の方がよっぽど重みがあるってもんです。とはいえ、見た目が悪いよりゃ良いに越したこたあないのもまた事実でしょう。例えほんの半歩の違いでも、スタート位置が先にある方がレースじゃ有利ですからね。
整った見てくれが持て囃されるのは視力に頼った生き物の宿命ですから、それを全否定するのも、やっぱりどっか歪んでんじゃないかと思っちまうんですよ。認めたうえで、上手く付き合う。本能と理性は、そうやって折り合いをつけるのがいい塩梅じゃないか、ってね。
とは言え、人様の好みなんてのはそもそもが千差万別、なんだかんだで美男美女ばっかりが持て囃されるわけでもないのも面白いところです。ええ、決して負け惜しみなんかじゃあありませんよ?
見た目は大事、でもそれが全てでもない。人と人を結ぶ縁ってのは、見た目だけで決めるにゃああまりに複雑です。どんなに好みだからって、顔にばっか目を遣ってたら、とんでもないことに巻き込まれちまうかもしれません。
本日は、そんな噺を一つ。




