ギフトとギフテッド
この作品は、薄目で読めば女子の深い友情ものとしても読むことができないわけではないかもしれないのですが、作者はしっかり百合と思いながら執筆いたしましたので、万が一タグなどにも気づかずに来てしまった百合が苦手な方がいらっしゃいましたら、この前書きを読んで回れ右をしていただきたく存じます、と、念のためここに書いておきます。
※なお、この作品は「なろうラジオ大賞7」に応募しています。
雑貨屋の前で、私はため息をついた。
きっと、私が何を買うか、あの子は分かってるんだろうな。
アリスは俗に言うギフテッドだ。知能が恐ろしく高くて、しかも、美人。
ただし、性格は最悪だ。口を開けば我儘ばかり。いつも、つん、とすましているし。
去年の誕生日だって最悪だった。私があげたプレゼントは「あなたならこれをくれると思ってたわ」と一蹴されてしまったのだ。こっちは一生懸命選んでるのに。
でも、そんな彼女のことが、私は好きなんだよな。
だから、今年は、絶対彼女が予想できないようなプレゼントを用意してやる。
「誕生日おめでとう、アリス」
扉を開けると、極端に物が少ない彼女の部屋が目に入る。インテリアと呼べるのは、風でわずかに揺れている簡素な白いカーテンくらい。彼女はその揺れを見つめるばかりで、こちらを向いてはくれない。
だから、彼女が、否が応でも振り向くようなプレゼントを。
「今年はね、アリスでも思いつかないようなものを持ってきたの」
彼女の目線は相変わらず窓のまま。
「あのね」
私はシャツのボタンを外しぐいと胸を晒す。
「私の心臓を、あげる」
アリスが、こちらを向く。
「ねえ、アリス」
私の心臓を移植して。
それは、だめだよ。
アリスは微笑んでいた。まるで、小さな子供を見ているような優しげな眼差しに、私はいたたまれなくなる。
「知ってるよ、知ってるもん」
唇が、勝手に言葉を紡ぐ。
「でも、これくらいしないと、アリスは驚かないでしょう?」
これくらいしないと、あなたは、私を見てくれないでしょう?
ふ、
と、手が、頬に触れた。アリスの細くて白い手が。
「違うの」
そう、アリスは言った。
私、ただ、あなたのことなら何でもわかってるわ、って、言いたかっただけなのよ。
「それに、心臓は自分の細胞からつくったものを、もうすぐ移植できるんですって」
だから、心配いらないわ、と言った彼女は元通りのすまし顔で。
「それで、私は今年は何をもらえるのかしら」
私がちゃんとプレゼントを用意していたことは、彼女には筒抜けだったらしい。私は鞄からミモザの香りのハンドクリームを取り出す。
「やっぱり、あなたならこれをくれると思ってたわ」
そう言われても、今年はもう悪い気はしない。
思ったよりも強い力で引き寄せられて、私も彼女が寝ているベッドに倒れ込む。
見ると、アリスのいつものように大胆不敵に笑った顔が、すぐ近くにあって。
白いカーテンが大きく揺れて、病室に光が差し込んだ。
お読みいただきありがとうございました!
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